暗黒星雲

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2018年 01月 17日

「塔」一月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」一月号 真中朋久選歌欄 十首選


雨音に耳そがるる夜半読みつげり秋草のごときふるき恋歌  永田聖子


散骨をのぞむと言えばどの海にするかと夫が地図を広ぐる  中澤百合子


放したのか放されたのか母の手の遠くなりたり風草の道  数又みはる


元海岸線に従い伸びる小路には質屋一軒営まれおり  北辻千展


越し来たる人を知らねど通るたび庭先を見る花梨成る庭  嶋寺洋子


アスファルトに雨の王冠あまた生(あ)れ嬉しさうなり長靴の子は  田中律子


発車するドア越しの児と目が合いて秘密のように手をふりあえり  村瀬美代子


明日よりは施設に入らむ母のため足のおゆびの爪を切りたり  吉田健一


一列に連なりゆけり保線区のひとら被れる黄のヘルメット  川田伸子


まッしろのしを言ふときの舌先をほのあたたかき息は越えつつ  佐藤陽介




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-17 22:16 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 17日

「塔」一月号若葉集 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」一月号若葉集 江戸雪選歌欄 十首選


暗やみでポップコーンを湿らせる舌先熱き金曜の夜  うにがわえりも


日ごと夜ごと容易に不穏になる胸の森に一羽の飛ばぬ小鳥を  中森 舞


「そっか」の「か」と「ですよね」の「ね」が隠すもの すり切り一杯分の悲しみ  荒井貴彦


遠足の弁当は無事持たせたが「行ってらっしゃい」言ってなかった  伊地知樹里


屋台には赤・黄・橙(だいだい)並んでて「夏が終わるね」と少女が言った  大島綸子


名人が歩を打つように横にあるティッシュをつまみ一滴をふく  中西寒天


一本の大根とねぎ新聞に花束のごとく包みてだきぬ  坂東茂子


眼差しに呼ばれたような気がしてさプールサイドに枯れた紫陽花  深山 静


歯科医院のナース弁当を手に下げて秋の風吹く信号を渡る  森川たみ子


かなしみの皮膜に包まれ片頬をつねってみても赤くなるだけ  椛沢知世



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-17 09:58 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 16日

「塔」一月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」一月号 前田康子選歌欄 十首選


チェロの音が流れ始めた家をすぎ雨のはじめのしづくに触れる  加茂直樹


わがままも言はずなりたる母の顔ひとつぶ涙つんつん椿  祐德美惠子


本当はねあと一年だつてランチ終へ古風な笑みに友は告げたり  阿蘇礼子


堤防によじ登っているカップルの男は登り女登れず  内海誠二


バスを待つ間に夕日やまに入る 実家で柿をいくつも食べた  川井典子


秋の野の光の中に居し人を最寄りの駅にたたずんで待つ  木村陽子


古切手入れる小さなはこだけを残してひとは春を去りたり  高橋武司


熱帯夜明けて降る雨はつ雪を受くるがごとくひらく手のひら  多田眞理子


人の子を抱くように米を抱いている女を見たり日曜の午後  田宮智美


モンローのまろき体を思ひをりいちじく白くやはくありせば  遠田有里子




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-16 19:42 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 15日

「塔」一月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」一月号 山下洋選歌欄 十首選


十月はリハビリを待つ風呂を待つ夕食を待つただひとり待つ  三谷弘子


狂女にもなりえぬわれはさびしくて一人ぼつちの身をかくし住む  佐竹永衣


海馬より深いところの夕焼けに立てかけられている一輪車  逢坂みずき


ははそはのその母の呼ぶこゑは珠ひつぎの娘をよびて珠なり  千村久仁子


砂を吐くみたいな暮らしは止めにする浅蜊の酒蒸し作り終へたら  大江美典


包丁をぬるりと拭いて店頭に肉屋の男顔を向けたり  小圷光風


「珈琲のおいしい季節となりました」遠くの誰かに手紙書きたし  杉原諒美


山に向き声をかければ鼓の音が返りくるとうつづみ橋行く  竹内多美子


お堀通りの紅葉(もみ)ずる並木をくぐるとき木琴のラが聞こえる如し  堀口 岬


泥沼の左の端より亀のきて右からの鯉にぶつからずゆく  柳田主於美



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-15 14:54 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 14日

「塔」一月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」一月号 三井修選歌欄 十首選


玄関のチャイムの音の鳴り止まぬ夢を見たりき会議の朝に  永久保英敏


生臭き指に抓みたる抹香を音なく擦りて香炉に落とす  近藤真啓


好きなもの増やさないよう生きている我慢すること増やさないよう  かがみゆみ


ぐすんぐすんと擬音語出せばそんなにも泣きたいことではないと気づきぬ  中井スピカ


浜辺から狙撃の噂。東京士官は五メートル置きに夜も立ちをり  河村壽仁


告げ口が得意だつたらよかつたね 胡瓜の花のしぼむゆふぐれ  千葉優作


くまモンの鉛筆で書きくまモンの消しゴムで歌の消しかすできた  水本玲子


ひとなぬか薄(うす)ら氷(ひ)からのかへしにも母よあなたの視線を想ふ  村上 明


玄関の鉢のバジルにかるく触れ初老の男帰りてゆけり  相本絢子


初恋の少年夢にあらわれて会釈をすれどわれは黙せり  吉田 典




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-14 15:46 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 13日

「塔」一月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」一月号 小林幸子選歌欄 十首選


少年は櫂に和舟を操つて四つの内湖を渡りしむかしに  穂積みづほ


上品なしかめっつらがあることをあなたで知ったことがはじまり  小松 岬


あの鳥が空の奥へと点になるまでを見ている 自転車とめて  山川仁帆


燃えてゐると言へば終りのヒガンバナ秋高空へ漕ぎ出して行け  高橋ひろ子


わらべにて夾竹桃咲く道歩き振り向けば碧き六甲ありき  西村美智子


夏服でまだいけそうな日もありてバターのごとく晴れて光は  廣野翔一


吹きすさぶ西駒颪の通り道赤いポストが口開けてゐた  朝井一恵


けんめいに探しゐたるは何ならむ夢より覚めてなほ不安なる  岩本文子


玄関のバジルの葉っぱを摘み終えて雨を見ていた夕暮れの雨を  北山順子


ウォーキングの径に拾いし栗の実の小さき汚れを手に拭いたり  相馬好子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-13 20:11 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 12日

「塔」一月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」一月号 池本一郎選歌欄 十首選


新暦の子規忌の単衣の肌じゅばん蒸れて根岸の子規をおもえり  萩尾マリ子


なまよみの甲斐性なしの吾が書きし無心の葉書仏壇より出づ  内藤幸雄


「夕焼小焼」午後五時に鳴る向かう岸五時半に鳴るわれの住むまち  川田果弧


「青春を過ぎたさみしい野菜です」茄子にふみ添へ玄関にあり  赤岩邦子


その身ほど大きな荷物の少女らの声の明るい海辺の電車  徳田浩実


ひざ小僧美しくのぞきたり子を抱きて駆けよる嫁のブルージーンズ  森永絹子


つぐひとの去りゆきしのちしばらくをテーブルに水影は揺れいる  中田明子


マムシ柄のシャツの男が前をゆき労働意欲がしぼむ朝なり  一宮雅子


バルコニーの手すりを鳩がそろりゆく平均台の少女のやうに  堺 礼子


三本の樅の木のみのグランドを見つつバス待つ初めての町  中西よ於こ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-12 20:36 | 十首選 | Comments(0)
2018年 01月 11日

「塔」一月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」一月号 永田和宏選歌欄 十首選


「金銭のことで口論となり」まではうちと一緒だ ニュースは続く  垣野俊一郎


きばう持てばつひにはつらくなることを知りながらなほ 草のつゆ踏む  山尾春美


あれはどこへ行くのだったかポケットに百円玉を固く握りて  中本久美子


桃色のコスモス置けばほんのりと気配もゆれる裾縢(かが)る夜  泉 みわ


花束の花を選んでゆくようで感謝のことばを言うのが好きだ  加瀬はる


住んだことない町そこに親がいて見知らぬ町を故郷と思う  久保まり子


フェニキアの大航海を想ひをりレバノン杉を根方に仰ぎ  前田 豊


バス停にそこの家から持ち出したみたいな椅子があるので座る  𠮷田恭大


もうまつくらよ、誰か言ひをり切れはしの雲が行き場を失つてゐる  松原あけみ


亡き父に会ったと言いし母の背に夢のことかと念押しきわれは  神山倶生



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-01-11 20:23 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 25日

「塔」十二月号 月集 十首選

「塔」十二月号 月集 十首選


釣れたよと鮎をもらいぬ家族ぶん家族(うち)は二匹と言いてもらいぬ  池本一郎


目陰(まかげ)して白橿の木を見あぐれば山鳩の雛のかほふたつ見ゆ  小林幸子


照明のもとにきらめくひざがしらばかり見ていた君の目は見ず  山下 洋


男ひとり重たい水になりながら坂のぼりくるひとを待ちいる  江戸 雪


みずからの死を知ることのないままに死にたる蟬か脚をちぢめて  松村正直


茜さす夕風に搖るるすすきの穂恋しき人のかくるる気配  青井せつ子


オレはお前の使用人ではないといふあなたの言葉はそのまま返す  岩野伸子


うかららの在りたるときを故もなく思はす夏の大夕焼に会ふ  尾形 貢


「願わくば桜の下で」とは書かず「最后はどこで」の項に記入す  酒井万奈


音たてて出てゆくやすぐドア開けて君の指図はうけないと言う  本間温子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-25 22:56 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 24日

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選


友人と撃ち合うようにお互いの写真を撮りて旅を終えたり  北辻千展


入江口とうバス停前の診療所むかしは貨車も裏に停まりぬ  橋本恵美


トイレットに薄皮まんじゆう忘れ来て財布に残る柏屋のレシート  立川目陽子


サーズデイ軽い感じで言ってみる木曜きみが町を出てゆく  芦田美香


はつなつの光うせゆく野に立ちてゆふがたねとをさなは言へり  河﨑香南子


ほほゑみがほほゑみのままに拒絶なり夜勤明けの男微笑む  久保茂樹


死に方を調べたことがありますか。産業医が問ふ死にたしとふに  白石瑞紀


黄ばみたるお札の記憶 ちろちろと竃の火影うつせる壁に  竹下文子


もう誰も喜ばさない一品と思えどリンゴをうさぎ型に切る  永田聖子


先生、大好きと言つてくれたから私は姑の先生になる  広瀬明子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-24 21:58 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 23日

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選


燃え落つる城を思ひて泣くこともあらず城下町けふは晴れをり  小林真代


亡き人の望みしといふ曲ながれ月の砂漠をラクダはすすむ  田口朝子


遅番の夜の暗さは好きでなく自転車に反射板をつけゆく  山内頌子


いかがですかドクター達が覗き込む博物標本みてゐるやうに  國森久美子


月のひかり白く扉に射してゐる魚のかたちの木目閉ぢ込め  清水弘子


桃のような頰した女医の初々し同性なれど手触れてみたし  新田由美子


砂浜で強がり言う子はしっかりと吾の手を握り波際に立つ  ほうり真子


おひめさまお姉さまと呼び合いて三歳と古希のままごと続く  新谷洋子


泣きながらハンドルを切る助手席に黙したままのカボチャをのせて  澄田広枝


おとひとへ脱脂粉乳持ち帰り飲ませし日からずうつと弟  上大迫チエ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-23 20:39 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 21日

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選


数日の留守のあひだに積もりたる時間のやうな埃のやうな  岡部かずみ


もしノラが迷っていたら『人形の家』出ようよと歌会に誘う  真間梅子


透きとほる繭だつたのにジュニア用ブラジャーの線背中に見ゆる  山下好美


ついてくる月とおんなじ原理でしょうわたしが泣くと海鳴りがする  白水裕子


桜島見下ろす丘のマンションでシチュー煮るわれはあまみのおんな  伊地知樹里


つぶやきシローが出ているから1チャンネルを見よという母こっちは4だよ  加瀬はる


スリッパとスプレーのあひだ掻い潜り甲冑のごきぶり闇夜を走る  庄野美千代


人生はうどんの上のかまぼこのようだと君は唐突に言う  谷 活恵


くるくると日傘を回し行く友のブルーのスカート角より消ゆる  佐々木美由喜


胸中に封印された剣があるもも色をして脈打っている  石川泊子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-21 17:03 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 20日

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選


「約束ね」看護師に向かい笑む母も二十年前は看護婦でした  北山順子


口の中いろんな形のめんどくさいをもごもごさせた結果の「りょうかい」  内海誠二


王様の耳はロバの耳みたいに歌を詠んだらどこに埋めよう  鞠古 綾


死にたるを知らず目瞑りいる君よ「二時二分です」声がして去る  みぎて左手


透ける傘ひらきて母に渡したし送り火の日の雨の夕暮れ  久川康子


ズボンともスラックスとも言えなくてパンツ売り場がどことも聞けず  田巻幸生


私にも月がきれいと言ふ人が居ります今宵は半月なれど  向井ゆき子


あまやかな水をたたえて胸しずかふたつの梨が食卓にあり  福西直美


わだかまる思いをながくひきずりぬ粗粗と切る茄子のむらさき  三上糸志


鞄屋の革のかおりをふとすぎていちょうの坂の先までくだる  横田竜巳



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-20 20:22 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 19日

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選


心臓に穴見つかりし友達が「どうりでいつもさびしい」と言う  逢坂みずき


ひとしづく真白き乳の零れたり朝餉の皿に無花果割れば  西山千鶴子


バカンスに旅立ったきり帰らない肉屋のおじいさんとおばあさん  鈴木晴香


むつごとに満たぬなにかを交わす夜 ねむりも恋も落ちるものだわ  海老茶ちよ子


たいおんが私にはある 脱ぎをへてシャツを木製の肩にかへしぬ  小田桐 夕


ハイヒールのモデルの様(さま)に戛(かつ)々とカラスが早朝屋根歩きをり  金田和子


還りたい みずが流れてかぜが湧くりんごつばきの実の落ちる岸  山尾春美


わだかまり抱えたるまま何足も靴を洗えり夏の終わりに  杉原諒美


電卓はなんだか怪しとそろばんをそそと弾いて釣銭くれる  竹内真実子


夏の陽に焼き忘れたる足裏を晒して寝ころぶ常夏の浜に  白波瀬弘子




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-19 19:37 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 19日

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選


君のゐぬ家にも夏は過ぎてゆきツクツクボウシ裏庭に鳴く  竹尾由美子


思ふより風はとほくへ吹き抜けて川には川の性別がある  石松 佳


夏だけの目印のように木槿咲き路地をまがれば海へと続く  黒木浩子


夏蜜柑ふたつを下げてやってきたあなたの髪の明るさが好き  多田なの


子どもらの「ミサイルハッシャ」遊ぶ声もうすぐ夏の終わりの頃に  川並二三子


秋の夜のふうりんのおと鳴りやまず白き帆影を追うゆめをみる  田村龍平


ストレスがたまると口にいれる飴の砕かれる音がオフィスに響く  双板 葉


故郷尾張へ帰りたがりし父なれど大東市と記す除籍謄本  内藤幸雄


りんごより梨が好きだなざらざらとほおばるときに気持ちがよくて  安田 茜


横抱きに運びこまれしマネキンが女になりぬファーを巻かれて  森永絹子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-19 10:35 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 17日

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選


生きて帰ると言いし叔母 鼻に管をつけ小さな小さな歩幅で戻り来  鈴木 緑


さみしいか すこうし淋みしい海の町いつも鷗は逆さまに飛ぶ  中山大三


ダ・ビンチとミケランジェロの素描展数ある裸体は若者ばかり  廣瀬美穂


脚立の上に子が向日葵を覗きいし今年の夏の終わりゆくなり  矢澤麻子


ああこんなに遠くまで来たふりむかず生きて行かんと決めたのだけど  大田眞澄


荒れし庭みるたび寂しつき合ひの淡き隣家でありしといへど  櫻井ふさ


嫁入りの荷の一つなりし洗濯板割れたるを燃す炎小さし  清水千登世


不意に来る葛の匂いが引寄せる清算できぬ過去の不始末を  田中美樹


「塔」といふは曹洞宗かと問はれをり大会終へて巡るツアーに  丸山順司


父は児の児は父の浮子見つめをり向かう岸より稲の香の来る  加藤 宙




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-12-17 16:21 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 16日

「塔」十二月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」十二月号 真中朋久選歌欄 十首選

少しだけ後ろを振り返りたくなる笑ってる人とすれちがうとき  川上まなみ

タロイモのタルト、ヤムイモの飲茶 三時過ぎても来ない小包  有櫛由之

二十三時間五十五分の出来事を語れば五分お茶をひとくち  三谷弘子

曜日にも人格のあれば水曜か木曜あたりと気が合うだろう  魚谷真梨子

<恥>を知らぬ<あの人>の前で麦わら帽のわれはトマトを投げつけてゐたり  河村壽仁

コーヒーは正しく置かれ夏の朝背筋を伸ばし黒き面を見る  深井克彦

ひざの上に深々とリュック抱きしめて少女は朝の電車に眠る  垣野俊一郎

佳き月といく度も見上げおりたるに雨が降り出す音立て夜半を  高木節子

紐引きてひとりの部屋を灯したりカップの麺に湯をそそぐ音  永久保英敏

たぶん意味わかってないけどうなづいている頬を何度か撫でる髪  北虎叡人


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-12-16 20:30 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 15日

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選

受話器とれど回す番号あてもなく東京の月は白々と冴ゆ  加茂直樹

海賊がでてくるような集落に嫁いできたと思いし日あり  小谷栄子

むつかしき話あるらし道の辺に向き合う日傘離れては寄る  相本絢子

昔から雨の降る日が好きだった赦されているようでとあなたは  大出孝子

あのひとの失くした部分にちょうどいいオシロイバナのたねをください  小川ちとせ

そのほかはあとにまわして大根の種をまく日を赤丸でかこむ  高原さやか

この港を出でて帰らぬ父なりきずっと待ちおり七十二年を  西田美智子

白くおほき彫像がそらにうかんでてその下らへんが私のゆくさき  穂積みづほ

変はらぬはさびしきものか変れるはなほなほさびし母在りし町  丸山真理子

子に添ひて畳に伏せばその額はなだらかに丘なしてをりたり  益田克行


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-12-15 20:36 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 13日

京都タワーから

京都タワーから
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# by trentonrowley | 2017-12-13 10:25 | Comments(0)
2017年 12月 06日

奈良市の北の端より

奈良市の北の端より
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# by trentonrowley | 2017-12-06 12:28 | Comments(0)
2017年 12月 04日

この写真もインターネットで見つけたもの

この写真もインターネットから。どこからの写真かは分からない。
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# by trentonrowley | 2017-12-04 20:31 | Comments(0)
2017年 12月 04日

この写真はインターネットで見つけた

インターネットで見つけた写真。
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# by trentonrowley | 2017-12-04 20:29 | Comments(0)
2017年 11月 30日

この山ではないだろうか?

建物に隠れて見にくいですが京大病院(京都市左京区聖護院川原町)の前から見えたこの山ではないだろうか?

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# by TrentonRowley | 2017-11-30 17:05 | Comments(0)
2017年 11月 28日

「塔」十一月号 月集 十首選

「塔」十一月号 月集 十首選

盈つるとふさびしさのなか昇り来し月まどかなり海の上の月  永田和宏

軽きかろき銀貨のあまた集ふごとマロニエの葉は雨に震へぬ  栗木京子

今年また妻と来たりぬ山の湯に河鹿の笛を聴きてゐるなり  上田善朗

「いえあれは山ぼふし」と正されてよりきはやかに見ゆるその白  岡部 史

そのむかし湖底にありし村の上(へ)にわれら浮かびぬ夏の盛りを  梶原さい子

こんがりと祖母の焼きしを食はされき父が野良にて捕りしマムシを  後藤悦良

白き紙舞い散らばうごと羽根かさね古墳をおおうひと群れの鳥  酒井万奈

気づかれぬように閉じいるまなぶたの茗荷の花よ触れにゆきたし  なみの亜子

抱へられ前を過ぎゆく骨壺にこゑかけむとしこゑを呑みこむ  藤原勇次

月明かりの庭に出でゆけ青金蚉あまからむ今宵の草の葉の露は  村上和子


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-28 20:22 | 十首選 | Comments(0)
2017年 11月 27日

「塔」十一月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」十一月号 真中朋久選歌欄 十首選

陽炎のなかに平和案内人いて半ズボンの子に囲まれており  北辻千展

帽子のように遠いひとだとおもうとき脱いではならぬ帽子だ、これは  白水ま衣

にせものの私になって仕事する最近多いよにせものの時間  乙部真実

長雨のゆふ暗がりに一度だけ電話のベルが鳴りて途切れぬ  久次米俊子

とりあへず西瓜を冷やし待ちてをり日盛りのなかたづねくるるを  澄田広枝

ほんの少し寂しい午後に遠き世の見知らぬ人に出会ってしまう  中出佐和子

車椅子が浮き上がるほどの声あげて北北西に叫び始める  浜崎純江

富山湾に海市となりて揺らぎいる我かも 熱波のビル街をゆく  三浦こうこ

あいちゃんもこどもだからと信じいるふたりはわたしを誘ってくれる  永田 愛

かく赤くダリアの花は咲きいしかアステカの王縊られし朝  関野裕之


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-27 22:41 | 十首選 | Comments(0)
2017年 11月 26日

「塔」十一月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」十一月号 永田和宏選歌欄 十首選

両腕をあげて病む子は眠りをり赤子のときの姿勢のままに  野島光世

まぶしさの消えて熟柿のごとき陽がずぶずぶと海へ沈んでゆけり  石井夢津子

はじめからひらかれていたまずきみが見つけてぼくが入っていった  荻原 伸

れんこんの穴のぞくようなさみしさで出かける家族を見送っている  片山楓子

水滴が街を逆さに映しをりそのつめたきにふたり暮せり  久保茂樹

思ひ出はぼんやりがいい スイッチバックの駅の別れにゆれてゐたコスモス  坂 楓

このひとにも家族がゐるとふ現実を井戸のそこひに沈めてしまへ  西村玲美

滑り止めに刻まれし溝踏みながら坂をのぼれり 鈴を鳴らしに  山口泰子

バスの外アンダルシアのひまわりは黒焦げとなり地平線まで  渡辺美穂子

イメージにほど遠き身を映しつつ「ロコモーション」の振りを確かむ  青木朋子



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-26 15:52 | 十首選 | Comments(0)
2017年 11月 24日

「塔」十一月号 若葉集 山下洋選歌欄 十首選

「塔」十一月号 若葉集 山下洋選歌欄 十首選

枕辺に羽をたためぬ小さき鶴また須磨浦の月が見たいね  三木紀幸

あれが夏だったスカートのうしろを跳ねて座ればあかい腿裏  白水裕子

夕つ方洗濯物を取り込むに隣家の青年目をそらしたり  鎌田一郎

昨日よりきみの背中が灼けていて唇もたぶん熱いな、と思う  頬  骨

ベランダにラベンダのプランタならべたベッラ・ドンナの夫のベントレ  渋谷めぐみ

「ほっといてこれでも都会の真ん中で生き抜いてるの」と猫が鳴くから  中森 舞

どうやって忘れたらいいサイダーと団扇を持つ手の爪の形を  平野 杏

画用紙に見知らぬ都市を描きにけり その片隅に僕は寝てをり  宮本背水

森山町中堀鉄砲火薬店用なきゆゑにいまだ入れず  山下好美

あの人も気づいただろう 肉売り場の前でカートをくるりとかえした  佐々木美由喜

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-24 21:30 | 十首選 | Comments(0)
2017年 11月 23日

「塔」十一月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」十一月号 三井修選歌欄 十首選

ベランダの先の闇へと振り捨てし蛾がひらひらと昇りてゆけり  髙野 岬

できない事はできないのだと思ひ直し夕の厨にチキンカツ揚ぐ  相澤豊子

人形はドールハウスに火を放つアンタナンカノスキニサセナイ  王生令子

ホチキスの針は切れたり日常がふいに失せたるあの夜のごと  垣野俊一郎

否定するつもりじゃなくて嫌なことを嫌だと言った それだけのこと  木島良子

せいぎってなんなんやろね伊万里からはみ出す秋刀魚は左を向きぬ  田村龍平

へび座の横にへびつかひ座もあり夏の夜は電気を消してそらを見ませう  松原あけみ

湖水地方旅する日もまたいつか来む今は子をまず風呂に入れよう  矢澤麻子

このひとも嵐のあとの海岸に打ち上げられたかたちで眠る  𠮷田恭大

名もしらぬおばさんであるわたくしをこの子は時に友だちとする  高原さやか



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-23 22:17 | 十首選 | Comments(0)
2017年 11月 22日

ゆく と くる  (その2)

ゆく と くる  (その2)

ゆく

  また一つ鍵をかへしてこの国に浅く下ろした根を抜いてゆく/加茂直樹
(「塔」2017年11月号)

この歌の場合は、「抜いてゆく」の主語は自分であるが違和感を感じない。空間移動の「ゆく」の意味は感じられず、広辞苑の定義の次の(11)の用法であると私にも思える。

(11)他の動詞に付いて「物事が次第に進行する」「引き続いて進行する」意を表す。


新井蜜
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# by trentonrowley | 2017-11-22 22:39 | Comments(0)
2017年 11月 22日

「塔」十一月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」十一月号 小林幸子選歌欄 十首選

土中より出で来る蟬を待ち受けてカラス食らうと理髪師の言う  松浦わか子

ラクロスの主将で一〇〇人束ねてた子の妻だから大丈夫です  藤田 咲

また一つ鍵をかへしてこの国に浅く下ろした根を抜いてゆく  加茂直樹

アイヴォリーの傘に葉洩れ陽すべらせて女人はあゆむ冷泉通  篠野 京

父母とみづやうかんを分け合ひて窓に広ごる花火を観たり  近藤真啓

青色の鳥の刺繍ができるまであなたは布を何度も返す  川上まなみ

花の咲く向こう岸より戻れると母は語りぬ肺炎癒えて  小澤京子

諍いの身に及ばぬを測りつつ心配顔が遠巻きにいる  みぎて左手

さわぎだす胸をどうにもできなくてアレグロの曲歌いごまかす  山上秋恵

髪を切る うさぎのやうな耳を立て胸の奥処の声聞きたくて  今井早苗


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-11-22 22:23 | 十首選 | Comments(0)