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暗黒星雲

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2009年 08月 31日

2009年8月

一斉に振り向く真夜のコンビニの立ち読み客は皆おなじ顔
夕立が激しく降るとメール届き帰つて見れば既に上がりぬ
地下道の左側から右側へ流れるみづを飛び越えられぬ
暗闇をえらんで歩く目の眩む白い光に追いかけられて
みづのない川底あるく赤んぼの頭のやうな石がごろごろ
千匹の蚊が鳴くやうなエアコンの夏の終りの夕暮れの音
さあああと近づいてきてさあああと遠ざかってく夏の自動車
お風呂場の網戸の向かうに張りついて俺の裸を視てゐるヤモリ
またどこへ行つたのだらう妻と子はかなかなのまだ鳴かぬ夕暮れ
離反する心を残し旅に出る 餌付けするのはやめてください
蒸す宵に冷夏の予報 土地というよつてたつもの売つてしまへり
少年の日々と一緒に捨ててきた熟れてゆくあの桃やスイカを
夜明け前のどが渇いて目が覚めるイメルダの靴並べた部屋で
読みかけの画面を閉じて書棚から心のかけら探して食べる
持つていくものなどはない赤土は融け出したまま流されていく
店先にひまわりが咲く 花の種置いている様見えないけれど
窓際に立たないでくれぐんにゃりと溶けだす月を見てるんだから
縁側で産湯をつかひとうさんの笑顔のむかうに満月を見き
母さんを迎へに行かう 月の照る夜道歩けば蛙鳴き止む
倉庫街見回る俺を月のない夜の地霊が振り向き笑ふ
妻が子がガーゼを濡らし拭きくれる目蓋に浮かぶ冬の三日月
凭れあひ鞄だきしめ目をつむる夢から醒めたくない戦士たち

by trentonrowley | 2009-08-31 22:39


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