2014年 03月 30日
やつて来て去つてゆく夜 幻のボートに乗つてきみは微笑む 頭上から誰なのだらう声がしたまた春がきてわたしは笑ふ 鳥だつて雨が降つても現れたああこんなよるあつたのでした 夜のほどろ初音を聞きて目覚めたる十九のわれに春はなかりき 直前のことがあやふややつたのかやらなかつたかまた確かめる ただむきのきよき少女よわがまへをゆくなわが身を制御できない 青空を頸かたむけてみてゐたり星の流るる気配のありて ぼくはまだ持つてはゐないのであるが愛人を持つ夢を今朝見た 学校のチャイムかあれは降りやまぬ三月の朝とほく聞こえる 眼鏡かけうつむくひとよ三月の光のなかを吾(あ)を迷はすな 根毛にくすぐられてる樹の下に埋められてゐたさびしいゆめが 三月のあなたとぼくの間にはゆきが降つてるためらひのごと 冬型の気圧配置のせゐだらうあなたから吹く風が冷たい 時のなかわたしが闇に生きている熱気の中で百合も腐れば 春が来たと叫ぶ声がす春でなくやつて来たのは戦争だつた たとふればしろき蒸気を加湿器がふきだすまへでくふ雛あられ 風花のなかをあなたは振りむかず朱き鳥居をくぐりてゆきぬ 樹の幹が陽を浴びてゐた僕たちの夢は木の葉の遠いそよぎに 梅林のポスターあふぐ三月の寒の戻りにふるへながらも 風景は洩れでる声に揺れながら誘惑されてきしむ鶏小屋 感情が抱かれた海を疾駆してでもその果てのどこにもゐない 白屋に住みし記憶がよみがへる麦を覆へる雪の残りて うらうらと雲雀が揚がるいにしへの奈良のみやこの趾を訪ねぬ あを白い海山越えて死滅することのない者北めざし行く あまりにも青かつたのだ春なのに霞みもせずに 誰でも良かつた もしぼくの見てゐるものがあなたならこんなに青く広かつたんだ 森のなか潜らうとして大胆な帆をはらませたぼくのまぶたに うつとりと沼のほとりで愛したいさびしい崖はまうさよならだ 生駒抜け河内を近鉄電車ゆく南東風ふく暖かき日に 耳鳴りの向かうに春の波の音 南の空を不明機が飛ぶ 葡萄の実みつけることがイヌワシのミッションなのだ!オリーブ山へ 袖口にのぞく真白き手の甲にうす青く透く静脈の見ゆ 顔をあげ生き直さうとたましひを支へる屋根に生命ふきこむ 冷蔵庫のモーター音が聞こえくる明日は朝寝をしてゐられない 飾られたままの女雛は切れ長の目をみひらいて夜を見てゐる ぼくたちに植ゑつけられた音のないあなたの言葉捨てねばならぬ ごぼごぼと潜つては浮き生きてゆく雨のあがつた春の暁 はるのあめ音なく降りて庭先のクリスマスローズ白く咲きたり 終末に異教徒たちがみちあふれ暗い階段群れ登りくる 暖かく着色された青空の下を歩けば花の香がする この場所で飼つてゐる牛それぞれが詩篇のなかに閉ぢこめられた ぬくもりをじぶんにゆるす日のひかり湿原台地で存分に浴び 人びとに言つてゐることうす暗い真実であるゆるされずとも おもねつて偽りを言ふこのわたしあるとき父になつたのである
by trentonrowley
| 2014-03-30 22:21
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