2017年 03月 14日
『塔』誌2016年8月号の池本一郎選歌欄に選歌掲載して頂いた6首のうち次の3首は塚本邦雄の歌の本歌取りである。 (1)夷狄てふ言葉ぞありし涼やかなハートのジャックの眼はうすみどり/新井蜜 (2)二月の驟雨硝子打つとき流れ去ると思つたのだがきみへの疑念/新井蜜 (3)縞蛇の縞目みだれて野菊咲く原発サイトを匍【は】ひもとほろふ/新井蜜 塚本の本歌はそれぞれ次の通り。 (1)夷狄てふ言葉ぞありし辣韮【らつきよう】に重石【おもし】せむ刹那にひらめけり/塚本邦雄 (2)二月の驟雨硝子打つとき靑年の浴後やさしき煙色【けむいろ】のひげ /塚本邦雄 (3)縞蛇の縞目みだれてわたくしとわれのあひだの音信杜絶/塚本邦雄 上の本歌取りの歌のうち、 (1)夷狄てふ言葉ぞありし涼やかなハートのジャックの眼はうすみどり/新井蜜 については『塔』誌2016年10月号の「八月号 池本一郎選歌欄評」で吉岡みれいさんに取り上げて頂いたが、吉岡さんの評では本歌取りのことは触れられていない。塚本邦雄という大歌人の歌ではあるがこの本歌はあまり知られていなくて、加藤治郎が『短歌のドア 現代短歌入門』で書いている「周知の秀歌」に該当しないのかも知れない。 そのように思うと、「本歌取り その1」で書いたように、私が密かに塚本邦雄の表現を流用しているというような後ろめたい気持ちになってくる。そこで、遅まきながらこれらの歌は本歌取りの歌だと表明して置きたい。
by TrentonRowley
| 2017-03-14 16:43
| 塔
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