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2009年 07月 06日

完走報告 (新井蜜)

完走しました。ありがとうございました。

好敵手だつたお前をもう一度月夜に探してみるかくれんばう
繰り返し波の戻つてゆくところ足下の砂を引きさらひつつ
雲のわく南の島に帰れない電気クラゲに刺された朝も
断崖をのぞきこんでる梅雨の朝すつぱいものが込み上げてきて
寝過ごせばマイナスだから飛び上がる腹の大きな春日野の鹿
あらかじめ書かれてあった卓上の今日の日記をなぞる一日
彼方から夕暮れの野を越えてきて見下ろしている目のようなもの
鼻すじの通った人は嫌いだと負け惜しみ言いお前は泣いた
夕焼けになるであろうか灼熱の熔岩のように燃える夕焼け
走りつつ路面を嗅いで冬の犬が俺の妹探しに行った

町長の長谷川さんは古物商長谷川商事の社長でもある
癇癪を起こすだろうか閾値を探るテストをそっとしてみる
編み上げの茶色の靴を探してるあなたに会った風吹く五月
この次の土曜は歌会で出掛けると気分の晴れ間に急いで告げる
音符ではなくってあれは鹿たちが寝そべってるの若草山に
腕力もお金もなくてクリスマスイヴに負けないための方法
ボルガ河のような大河に身を投げて流されてゆく浮身しながら
憂鬱になりたいのではないけれど憂鬱になるひとりの朝は
音源を探して歩く浮沼を田んぼのなかを田螺のように
早とちりしてばっかりのきみだから雨傘をさすつばめを見たら

白壁に我が影うつす午後二時のあの日とおなじ太陽の位置
花みずき白く咲く朝たしかめる恥骨の固さ鼻梁を当てて
アンコール聴かずに帰るパトカーが近づいてきて去っていく道
剪定の屑に埋まりし我が家かなゴミ回収の網目潜れず
住所録めくってみたがアの欄もミの欄もまた空白である
金魚鉢に金魚のいない理髪店おまけにくれた十円硬貨
干してある白いジーンズ肩組んで歩いたときの君が穿いてた
満員の電車に乗れば春の朝マスクで隠す昨夜(よべ)の爪痕
瀬戸内に生まれたきみは田螺など食ったことない専ら浅蜊
連休の谷間の朝を痩身の水兵さんと腕組み歩く

卒業の年に流行った歌を買うCDショップで火をつけられて
消え失せたはずの思いがあふれでる部屋隅の屑かごのふちから
冷凍の秋刀魚を選ぶ春の日のお昼に食べる一品として
左手のリズムがずれてフルートの穴を数えるまた初めから
煙草屋の角を曲がって三軒目お茶屋の二階に一人で暮らす
カバン下げ雷鳥に乗り「塔」を読む選挙が近い春の一日に
宇都宮餃子の店にきみと行く五月雨の日の午後の約束
そよ風にゆらりふうわり誘われて春のおすすめ手長えび食う
奈良坂で出会った鹿は振り向いて俺の背中をじっと見ていた
ブラウスの白に隠れてひそやかに息づいている恋するピンク

怪しげな夢見て過ごす引退を目前にしたこのゆるい日々
春の宵熱おびひかるきみの名に丸く小さな済の印捺す
耐えられず世界を消したくなったなら魔法の砂をふりかけなさい
かんからにろうそくをつけ転がせば縁側に蝋のにおいこもるも
年収に満足できず足してみるアドレス帳に書かれた数字
忘れたと言い張る姉が夢にみる首を掻かれた父親の顔
夕顔はひそやかに咲き待っている妊娠線を越えたあたりで
若鹿の造反有理年ふればこの縄張の内に囲われ
感情の干満或いは満ち欠けに言い訳をせず受け入れるのみ

冷静に話し合えない人がいて災いとまでは言わないけれど
選ばれた者たちの朝 兄さんはソムリエだった蜂起の前は
梅がまだ満開でない三月の最初の休みまた鹿に逢う
帰国まえもう一度だけ会いに行く夜警のきみを忘れられずに
校庭の日照りの夏の蛇口から常識だけがこぼれ落ちくる
網棚に置き忘れられ食べ掛けの幕の内弁当は干からぶ
春雨にぬれて闇夜をおちていくわさび色したあなたの下着
明け方にひろいあつめたほしくずを給食係が僕らにくばる
物置の穴から響くクリックとトムチットトットの高笑い声
呼び出され駆け出していく線路越え君だったんだ僕ではなくて

会いたくて天気雨ふる畦道のすみれの花をつまんでたべる
海べりの小さな家の寝室で広島弁の睦言をいう
プライドはもう棄てました 狙い打つ→矢に刺されても死なない自信
いさぎよく白状しますきみにきた斎藤さんの手紙みました
春風に溶けだしていく野や森の意図したことも意図せぬことも
少しだけ丈の短い棺に寝るロンドン塔で首をはねられ
手をふって足をふりあげ僕たちは秩序を保ち草刈りに行く
アルバムにきれいに整理して残す草冠の漢字をあつめ
蛾の群れが炎のように羽ばたいて世界地図から飛び立っていく
うしろから脚立にのぼり見下ろすとてっぺんのとこ白くなってる

黒白のまだら模様の機嫌です牛より狭い背中だけれど
押し入れの古着を探す休日のくしゃくしゃの髪にすむひばりの子
橋を越え探しに行った冬のあさ透明なもの食べたくなって
戸棚には漬物ばかり母さんは既にいないとわかっていたが
「怒るより笑っちゃうね」と聞いた日の朝コンビニで出会った僕ら
腰痛のジュリエットから招かれる氷が張った遊びに来てと
空襲があるかも知れぬ晴れた日に天ぷら鍋を頭にかぶる
夏までは黙っていよう水色のシャツがとっても似合っているから
ハロー朝ハロー冬空ハロー雪、職安に行く今日の計画
石段をかけ上がり来て我に説く青きくちばし閉じることなく

年齢の数だけの豆ついばんで貧しいことを忘れるカラス
教会の前に落ちてた濡れている赤いノートの読めない絵文字
球根を買って並べたヒヤシンス格差だなんて 紅い花房
戦争を知らない僕ら火にくべる解法のない試験問題
立春を過ぎた光に導かれUターンせよ生まれた時へ
木瓜の花くれない色の鉢を買う 型にはまった問答ばかり
まだ寒い水辺に並ぶもの達は煮ても食えない山からのもの
月曜のビルの谷間を降ってくるカタカナだけで書かれた手紙
蘇りもう寝られないジュリエット達と遊んだ運河の記憶
寝室の鏡の裏をのぞいたら嫉妬している俺が見ていた

つけてくるもののいぬこと確かめて凍った街の花屋を探す
何も見ていないかのよう地下街をふわふわふわと素足のままで
マネキンを抱えて逃げる破綻した服飾雑貨扱う店の
終末の知らせだろうか鳴り続くランチの時間過ぎたあとにも
少しだけ震える声がかわいくて「水玉模様」の玉のところで
パンくずを目印にした森のみち調べたあとでパン買いに行く
ゆっくりと涙をぬぐう密林のひだまりに棲む蜥蜴のように
「わからないことばかりなの私では助けられない理由教えて」
波の数かぞえて冬の砂浜の一日が過ぐ 卵を探す
夕暮れの雑踏のなか探しあて逢った老女は笑顔を見せぬ
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by trentonrowley | 2009-07-06 10:53 | 題詠blog2009
2009年 07月 06日

100:好 (新井蜜)

好敵手だつたお前をもう一度月夜に探してみるかくれんばう
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by trentonrowley | 2009-07-06 09:55 | 題詠blog2009
2009年 07月 03日

099:戻 (新井蜜)

繰り返し波の戻つてゆくところ足下の砂を引きさらひつつ
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by trentonrowley | 2009-07-03 09:46 | 題詠blog2009
2009年 07月 02日

098:電気 (新井蜜)

雲のわく南の島に帰れない電気クラゲに刺された朝も
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by trentonrowley | 2009-07-02 09:04 | 題詠blog2009
2009年 07月 01日

097:断 (新井蜜)

断崖をのぞきこんでる梅雨の朝すつぱいものが込み上げてきて
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by trentonrowley | 2009-07-01 09:53 | 題詠blog2009
2009年 06月 30日

096:マイナス (新井蜜)

寝過ごせばマイナスだから飛び上がる腹の大きな春日野の鹿
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by trentonrowley | 2009-06-30 12:39 | 題詠blog2009
2009年 06月 29日

095:卓 (新井蜜)

あらかじめ書かれてあった卓上の今日の日記をなぞる一日
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by trentonrowley | 2009-06-29 15:02 | 題詠blog2009
2009年 06月 26日

094:彼方 (新井蜜)

彼方から夕暮れの野を越えてきて見下ろしている目のようなもの
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by trentonrowley | 2009-06-26 15:56 | 題詠blog2009
2009年 06月 25日

093:鼻 (新井蜜)

鼻すじの通った人は嫌いだと負け惜しみ言いお前は泣いた
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by trentonrowley | 2009-06-25 08:57 | 題詠blog2009
2009年 06月 24日

092:夕焼け (新井蜜)

夕焼けになるであろうか灼熱の熔岩のように燃える夕焼け
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by trentonrowley | 2009-06-24 15:59 | 題詠blog2009