暗黒星雲

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カテゴリ:十首選( 74 )


2017年 11月 19日

「塔」十一月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」十一月号 池本一郎選歌欄 十首選

冷えきりしからだを岩にはりつけるぬわつと温いとかげとなるまで  山尾春美

友の言うきーひん、けーへん、こーへんの関西活用形は楽しも  寺田裕子

津波あと裏の竹やぶふくらみぬ月あかり冴えふくろう鳴きぬ  及川綾子

リモコンを吾に向けつつボタン押す夫よ消したきものは何なる  岡村圭子

あんなにも大きかつたのか白鷺の青田にゆつたり羽を広げぬ  小畑志津子

五月闇籠る木下の山梔子に花白じらと匂ひゐるなり  内藤久仁茂

カープ愛する胸の奥処に燃ゆる火は八月六日の残り火と知れ  西村美智子

仕事して生き越し妹「社会性のない姉さん」と時には言いて  村井玲子

ノーマンズランドを渡る昼の月 引っ越しは長い旅のつづきだ  小川ちとせ

水飲みに来てゐる蜘蛛か何もないシンクに一つ身構へてをり  向井ゆき子

(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-11-19 22:27 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 16日

「塔」十月号 月集 十首選

「塔」十月号 月集 十首選

次々と口より釘をたぐり出す大工を怖れき幼き日には  三井 修

濁流にながされてのち横たわる冷蔵庫あり半ば埋もれて  松村正直

湯を吐くをやめて久しき獅子の口湯槽の奥に白く乾けり  黒住嘉輝

離合待つ口羽の駅におりたちて水張田みたす夕映えに遇う  上條節子

わづか残るページを閉ぢて制服の少女はひらりと降りてゆきたり  上杉和子

「ダイジョウブ」とはかまふなのこと十七歳白い帽子を目深く被り  酒井久美子

髪分けてうさぎの耳にくくる子は跳ねて半日野に遊びおり  土屋千鶴

口が勝手に暴言を吐き遅れ遅れに脳は吐かれた言葉におどろく  なみの亜子

鶏のこえの聞こえていたる夢われは屋久島にいるごとく覚む  藤江嘉子

テラスまで蔦の繁りし喫茶店閉ぢたるままに夏はめぐれり  万造寺ようこ


(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-16 22:06 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 15日

「塔」十月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」十月号 花山多佳子選歌欄 十首選


わが町のガソリンスタンド閉鎖して日の暮れ際になれば淋しき  竹之内重信


いちまいのむきだしの空あらわれぬ山けずられし風景のなかに  永田聖子


せがまれて孫のルージュを探したるピンク淡きを発つ前に買ふ  金井一夫


一室に体を残してどこへ行かうふはふはふはと眠たくなりぬ  國森久美子


磨かれた鏡のむかう逆しまな時を刻めり髪切りてゆく  黒瀬圭子


いつの日も蝙蝠傘差ししやぼん玉吹く子のをりぬ宇治駅の辺に  杉本潤子


あの夏のいくつもありてあの夏と言ふのみにして母と話せり  𠮷澤ゆう子


美しき容姿の家裁事務官に書面の隅の不備をつつかる  吉田健一


高速道路の下くぐるとき聞こえたりどこかで赤子の生まれた声が  北神照美


ほうたるをつけたる狼いざなはばついていきたし裸足になつて  竹下文子



(新井蜜)



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by trentonrowley | 2017-10-15 14:43 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 13日

「塔」十月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」十月号 栗木京子選歌欄 十首選


アドバイスひとつも実行せぬ友の悩みにほんのりうなずいている  山下裕美


ヲノゴロ島イザナギイザナミヒルコなどと渦はふつふつ呟いてをり  金治幸子


広びろと空の構図のカレンダー澄みたる空気に満たされている  小島美智子


これの世に生れきて十年いつよりか祈りを知りて掌を合はせゐる  首藤よしえ


雨過ぎてあなたのもどりてゆく場所にまた雨が降りわたしはゐない  澄田広枝


西山の上にくっきり浮く寝釈迦その彩雲に向きて立ちおり  西垣田鶴子


豆源のおとぼけ豆をかじりつつ国会中継テレビに観おり  濵﨑藍子


鋪道には春落ち葉夏落ち葉して時間の溜りゆくを見ており  三浦こうこ


家内が世界のすべてといふやうにインドア生活きはめてをりぬ  西村玲美


見えぬものは見えないままにそのひとの海の暗さを告げられている  大森静佳



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2017-10-13 21:52 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 12日

「塔」十月号 若葉集 三井修選歌欄 十首選

「塔」十月号 若葉集 三井修選歌欄 十首選

十人の射手のなかには女性をり矢を番ふとき目見は鋭し  三好くに子

これはオムライスの肌と知りたればざっくりといく深々といく  神山俱生

そゆとこはアクティブだねと苦言されてるのにわたし嬉しい、近さが  希屋の浦

片恋は実らぬさだめの花なれば うつくしく散れ涙雨のごと  大塚祐未

まるでわたしのせいってみたいに玄関でひっくり返って死んでいるセミ  加瀬はる

水口の板挙げられて平らされし田にさやさやと水の入りくる  佐々木美由喜

閉ざされし記憶の門を開くのは通りすがりのたれかのにおい  中澤あけみ

昨日までサーブを打ってた君の書く小文字のgが傾いている  平野 杏

玉ねぎを宇宙船だと言う君に丸ごとスープ作ってあげる  真間梅子

職業を世間話として聞かれマニキュア剥がしておけばよかった  椛沢知世



(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-12 22:34 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 12日

「塔」十月号 小林幸子 選歌欄 十首選

「塔」十月号 小林幸子選歌欄 十首選

かもめーる売らむと立てる局員に強い日射しの降り注ぎをり  寺田慧子

人に会ふ一駅まへに本を閉づ夏至のひかりが眩しすぎたり  松原あけみ

水瓶を覗き込みたる君が背のリュックのくまは傾きてをり  永山凌平

雨の日のほうが世界になじみやすい気がしてグラスの水を飲み干す  紫野 春

春の海荒れるでもなく押しだまり夫は浜へと降りて行きたり  新井さの

真夏日の鰻屋の前を通るとき傘差して父が其処に立つてゐた  河村壽仁

家につき堅い音たて鍵置いた明日かならず持って出てゆく  徳田浩実

夜の底ひた走るバスに沈んでく遠きブルーはローソンの青  中井スピカ

時又の駅の右にも踏切はあるのだやぶの道のなかばに  高原さやか

コートからはみだす足がこいでいる春のつめたい風をまわして  吉岡昌俊


(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-12 16:59 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 11日

「塔」十月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」十月号 永田淳選歌欄 十首選

木はたねを飛ばして旅をするといふ わたしは夏の切手を貼ろう  山尾春美

紫陽花が目に触れるとき廃屋のビルから飛びたっていく鳥たち  川上まなみ

ラメ入りのオーガンジーや寒天やクラゲに内包されて死にたい  海老茶ちよ子

たそがれの青きあぢさゐの毬に似て幼く逝きし姉を思ひき  繁田達子

本当に切りたいものは爪でなく未練のような夏の浮雲  田巻幸生

初夏の日傘の先より小さき蜘蛛浅葱色してゆうらり揺れる  福田理恵子

ああ困るさそう人には夫は居ず吾には風のごとき人居る  もろずみありさ

いまここにいるわたくしが悲しみの ポテトサラダだじゃがいも潰せ  小川ちとせ

愛すると憎むはおなじ女らは雨降らずともあかき傘さす  高橋武司

夏至の過ぎ半夏生過ぎいつかいつか会へる気のする笹が匂へり  澤井潤子


(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-11 16:10 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 10日

「塔」十月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」十月号 江戸雪選歌欄 十首選

まず頰にふれくるぬるき雨なればしばらく傘をささずにゆけり  中田明子

白くうすく日に焼けし肌剥けはじむ海辺の町の記憶もともに  加茂直樹

膝を折りあじさいの陰に泣く母を映画を見るように見ていき  相馬好子

かげふかき鎮守の森に遊んでた子どもはみんな歌を歌つた  穂積みづほ

保証期間終ふるころ生きてゐぬだらう言へば笑へり若き売り子は  大谷睦雄

タトゥー彫る女がチラッと見える窓 渋谷神山町夕ぐれの路地  古賀公子

背をかがめひたひた歩くひとの在りわれともおもひあとを従きゆく  児嶋きよみ

ダークマターの吐息のごとしうすやみに耳を拡ぐる聴音検査  東 勝臣

をばさんの猫車いつぱいの豌豆は腐るだらうねと通夜の帰りに  河野純子

落としどころじゃないか、という声 聞こえないふりしてナイフで甘夏を剥く  佐藤涼子



(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-10 17:11 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 09日

「塔」十月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」十月号 前田康子選歌欄 十首選


もう何も話すことなくて窓のそと空っぽのままの観覧車まわる  黒木浩子


生きたいのか死にたいのかさへ分からない躰をつつむ熱きタオルで  赤嶺こころ


雨雲の出やすき地なり老ノ坂峠を通りて母を訪ねる  朝日みさ


薄色の桔梗咲きたるほどのこと手紙は投函できなくてもいい  石松 佳


ポリバケツに毛虫の落ちてぐるぐるとバケツの底をひたすら進む  川本智香子


早や送りの巻き戻しのごと糸をとく今日一日の段が消えたり  津野多代


川沿いで意思を落とした者ですが誰か届けてないか尋ねる  濱本 凛


白桃のならぶ画面は知らざりし町の警報解除を映す  吉田 典


最終と思ひのぼれば次の階あらはれきたりまたのぼりゆく  澤﨑光子


モノクロのはずはないのに西瓜だけ赤かつたりして昭和の夏は  谷口富美子



(新井蜜)



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by trentonrowley | 2017-10-09 20:47 | 十首選 | Comments(0)
2017年 10月 08日

「塔」十月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」十月号 永田和宏選歌欄 十首選

真心を運べと書かれたマニュアルの真心の文字角張っている  北山順子

「何が欲しい?」問へど答へず片翼を無くした鳥のやうな眼をせり  大江美典

燃えながら飛ぶ蝶たちの光跡を父のいのちと重ねてしまう  大橋春人

夕暮の蒼を浴びいる揺り椅子にひとの影来てまた揺れており  津田雅子

女とはきれに執着しやすしと言ひたる男の声を思へり  遠田有里子

前かがみの背中がならぶカウンターサイフォンだけがゴボと咳して  森永絹子

わたくしがいつか自由になる時にあなたのことなど思い出さない  山梨寿子

痛いほど気付かぬ振りをしていると互いに気付きそのまま別る  小島順一

立ちあふひ咲き登りゆく梅雨空の彼方に待ちてくるる人あり  大田眞澄

耳鳴りへ風のノイズを被せたり他人(ひと)の不運のほのかな甘み  一宮雅子


(新井蜜)
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by trentonrowley | 2017-10-08 21:15 | 十首選 | Comments(0)