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2011年 01月 31日

2011年1月

あなたからいつかもらつた鏡からいつも聞かれる死とは何かと
かけがねが外され赤いマントきて飛び出してくるきみの心音
くくるくる若草山に降り立ちて故郷の星を偲び鳴くのは
コンドルがあなたの庭にやつてきて青イ砂粒ホシイと鳴いた
しんしんと冷えて列車の通路には雪が降り積む居眠りの間に
ストーブをつければひとり 赤黒のイヤーパッドを左と右に
ぬかるみを歩くわたしの足を取り地底に引きずり込む白い手
ふるさとの苺がとどく西空の月を仰いで帰つたゆふべ
ホルン吹きあなたは鹿を呼び寄せて世界の果てをみんなに告げる
ゆきぞらを蔽ふ爆音南から北へと飛び去つてゆく鴉

わたつみを越えゆくきみの白き羽はばたけばいま陽にひかりをり
闇を行く列車は鯖江駅を過ぎ雪の降りくる空に飛び立つ
雲間よりひかる襷が降りてきて首胸胴に巻きつき燃える
横断歩道をわたる四人にさらわれて港で胡椒を売る少女たち
外されたかけがね赤いマントきて飛び出してくるきみの心音
柿の木にひよどりがきて柿の実を食べてもいいかと聞かずに食つた
寒風の中を草芽の伸びる音ニーソックスの腿ひからせる
鏡、さう僕らの生の痕跡を保存しておくための装置さ
九条ねぎラーメンにのせ駅前の広場で食べる陽射しを浴びて
枯れ枝でベンチをたたきため息をついてもいいかと打診するきみ
三面鏡ひらいたままに抱きよせる庭にしんしん雪ふりつもり
傘を捨て髪がぐつしより濡れたつて構わないんだ 檜のやうに
常盤木の枝に結ばれ雪かむり風にゆれてるわが運命は
信号が青に変わつて春の雨さがしに行つた一月の犬
寝入りばな黒い大きな鳥が来て壁に張りつき俺を見てゐる
生姜湯を飲んであなたは鳥になる大きなおおきな鳥籠のなか
先生の白いセーター汚そうとおしつこしてもでない放課後
大寒を過ぎて黄の薔薇つぼみもち小雪ふるなかひらきはじめる
大空をひばりは上がるうらうらときみを探して春野をゆけば
朝な朝な十九の春の痕跡がわれをいざなふ鏡の奥に
朝焼けのえごのき橋の真ん中にわたしを待つて蛇が寝てゐる
朝夕に鏡に映し本を読むねじれた心直さうとして
鳥たちがあなたのあさの窓に寄りあなたは鳥だとくりかへし呼ぶ
電車待つホームの寒い人たちは左をむいて白い息はく
投げ出されあなたの脚は桃色のもやにつつまれとけだしてくる
湯がたぎる油がはねる中華鍋 小樽航路に雪降りつのる
緋に染まる鏡をふせる 夕焼けの向かうに行きたくならないやうに
兵卒 であるわたしはごみ溜めに群がる蝿の王などでない
閉じこもるわたしの部屋のドアノブは乳の実の父の手垢まみれだ
本棚の百科事典にはさまれてうちはとなつて鳴く極楽鳥
夢の殻つついて割つて生まれでたあなたは高くたかく羽ばたく
木蓮の葉つぱが庭を蔽つてる踏み潰し踏みつぶしゆくブーツ
夕空に沈む帆船あかあかと初めて海を見るセーラー服
掬ぶ手のあはひをこぼれ青空の底ひに落ちてゆく時の砂
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by trentonrowley | 2011-01-31 21:51
2011年 01月 30日

俺の・好きな・塔の歌 2010年11月号

かすかにも性欲動くを寂しめり薔薇に明るく陽のさすあたり (田附昭二)
夏休みの旅うれしくて窓閉ざす列車に過ぎき軍用港を (酒井万奈)
母の言う下ほど馬鹿な可愛い子 私のことかと妹は聞く (川本千栄)
みずからを励ますごとく鳴く鳥とおもえば間もなく雨のあがらむ (なみの亜子)
また花の名前わすれる初夏にさく涼しげな花かぜにゆれおり (二貝芳)
缶珈琲を飲み干さむとし仰向けば白き一片飛行機がゆく (舩曳弘子)
梔子の花びらの数かぞえたる指のレジにてまだ匂いたり (福井綾子)
兜虫「上げる」とわが手に載せゆきし子を追う夢覚め掌見つむ (福井綾子)
いらいらと叱れば遠い眼差しに夕日見てをり助手席に母は (数又みはる)
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by trentonrowley | 2011-01-30 11:35 |
2011年 01月 25日

『葦舟』を読む その16

はきはきとはいと言ふなり誰にももう会ひたくない日の電話口では (河野裕子)

「誰にももう会ひたくない日」というのが裕子さんにもあるのだろうか。
体調が悪いということだろうか。

「はきはきとはいと言ふなり」は早く決着をつけてしまいたいということのよ
うに思える。

「はきはきとはい」の「は」の音の連なりが目立つ。「言ふなり」は文語だが
その他の部分は口語と言っていいのだろう。全体に自然な感じで、文語と口語
の混合の不自然さは感じられない。

「もう」は私は旧かなでは「まう」と表記していたが、「もう」と「まう」とどちらでもいいらしい。
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by trentonrowley | 2011-01-25 17:00 | 葦舟
2011年 01月 21日

サンダーバード32号

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by trentonrowley | 2011-01-21 15:38
2011年 01月 21日

朝の小松市

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by trentonrowley | 2011-01-21 09:23
2011年 01月 19日

『葦舟』を読む その15

山寺に崩えゆく墓の縁には虫取りなでしこ浮くがに咲けり (河野裕子)
   *ルビ 崩えゆく=くえゆく、縁=へつり

14番目の歌に続いて故郷のお墓の歌だと思う。

「虫取りなでしこ」はネットで調べると
 www.hana300.com/musito.html
次のような記載があった。
・ヨーロッパ原産。
・ピンク色のきれいな5弁花。
・食虫植物ではないが、
葉っぱが出ている節の下あたりで、
粘着性の分泌物を出すため虫がよくつく。
ここから”虫取り”の名がついた。
消化、吸収はしない。

お墓の縁に虫取りなでしこが咲いているという穏やかな牧歌的な情景だが
「浮くがに」はどういうことだろう?「浮くように」ということだと思うが、
「浮くように咲く」とはどういう状態だろうか。長い茎の先に花がつくので
こういう表現をしたのかも知れない。

「先祖の魂が花の形となって浮いているように見える」という読みはあまりに
深読み過ぎるだろうか?
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by trentonrowley | 2011-01-19 14:42 | 葦舟
2011年 01月 17日

塔2011年1月掲載 <真中朋久選>

べつたりと付いた指紋を拭き取つて昨夜のことは無いことにする
むらさきの木槿が好きなひとだつた福建省で育つたといふ
決められず一月が過ぎ虫の音のなかで荷物の整理始める
嫌ひではないのだけれど曖昧なままであるならわたしは降りる
待つてゐる白い便器が薄暗い廊下の奥の狭い部屋には
利用者のゐないホテルの三階のトイレに響くユライヤ・ヒープ
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by trentonrowley | 2011-01-17 21:56 |
2011年 01月 17日

ユライヤ・ヒープ Uriah Heep

利用者のゐないホテルの三階のトイレに響くユライヤ・ヒープ (新井蜜)

『塔』1月号に真中さんの選で載せて頂いた歌です。真中さんにコメントして
頂いたとおり、ユライヤ・ヒープはイギリスのロックバンドです。1971年に真
中さんの書かれていたLook at Yourselfが入っている"LOOK AT
YOURSELF"というアルバムを出しています。サード・アルバムらしい。
当時CDはまだ無くてLPレコードを買いました。アルバムのジャケットに銀紙
が貼ってあった(あるいは一部が銀色だった)ような気がします。たぶん鏡の
つもりだったのでしょう。(Look at Yourselfですから。)

実は、このレコードを買う前にユライヤ・ヒープという名前に出会っています。
それはディケンズDickensの『デヴィッド・コパフィールドDavid Copperfield』
という小説にユライヤ・ヒープという人物が出てくるのです。手は冷たく湿っ
ていて爬虫類のような男。性格も爬虫類と呼んでいいような男だった記憶があ
ります。『デヴィッド・コパフィールド』を読んで間もないときだったので、
このロックバンドに親しみを覚えました。

インターネットで検索してみたら『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた
地で…』の登場人物にもユーライア・ヒープという男がいるようです。

なお、私はユライヤ・ヒープと記憶していましたが、ユーライア・ヒープとの
表記が一般的なのかも知れません。ネットの検索結果では、ユライヤ、
ユーライヤ、ユライア、ユーライアなどがヒットしました。

Uriahという名前は聖書にも出てきてウリヤと表記されるようです。
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by trentonrowley | 2011-01-17 14:31
2011年 01月 15日

伏見稲荷

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by trentonrowley | 2011-01-15 17:13
2011年 01月 13日

『葦舟』を読む その14

古くなりひびの入りたる墓たちが針金で縛られひと固まりに (河野裕子)

久しぶりに訪れた故郷の墓の様子だろうか。

「墓たちが針金で縛られひと固まりに」ということであるから、墓がまともに
立っている状態ではなく、いくつかの墓が一箇所に集められ針金で縛られてい
る状態、つまり捨てられている状態(場所は墓地の中なのであろうが)だとい
うことと思われる。

「針金で縛られ」がいかにも無残な感じだ。墓のお守りをする人もいなくなっ
て、見捨てられた墓なのであろう。<私>(=作者と思われるが)の祖先の墓
のように思われ、歌には情景しか述べられていないが、<私>も見捨てた者の
一員であり慙愧の念に駆られているように感じられる。
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by trentonrowley | 2011-01-13 15:58 | 葦舟