暗黒星雲

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2017年 08月 16日

「塔」八月号 山下洋選歌欄 十首選



汽車の着くころねと男傘たづさへ母は駅へと小走りに行く  竹内真実子

乳のみ子の帰りし部屋に初夏の風あまき匂いを消してゆきたり  宮内ちさと

悪党ほど善人面して馬鹿にするも姫さまだつて<馬鹿>ではないのだ  河村壽仁

指鉄砲で五月の緑を撃ちぬいて未必の故意を教えてあげた  佐藤涼子

あたしだけ鬼に見つけてもらえずにさくらが過ぎてみずき咲いてた  西村美智子

半島の真下にあるぞわが住まひ とりあへず買ふ白ヘルメット  長谷川愛子

待ち暮らすバスは過去よりあらはれぬ右目に傷ののこるはつなつ  東 勝臣

一人では来たことのない部屋だから呼び鈴そういや押したことない  田宮智美

紅旗は平氏なるかな アカシアの雨にあらねど雨のメーデー  中村英俊

生まれたらさびしさがもうついてくる両手震わせ赤ちゃんが泣く  矢澤麻子



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-16 22:33 | 十首選 | Comments(0)
2017年 08月 15日

おほいぬのふぐりの青い空の色あぜ道に咲くほほゑみのいろ

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おほいぬのふぐりの青い空の色あぜ道に咲くほほゑみのいろ





(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-15 22:51 | Comments(0)
2017年 08月 15日

「塔」八月号 三井修選歌欄 十首選

不自由はないかと君に電話する「ないよ」の返事いつもかわらぬ  松竹洋子

ぼんやりと桜を見ていただけなのに大丈夫かと手をにぎられる  西之原正明

墓の谷に続くをぐらき小径には野いちごの花さみどりに映ゆ  竹尾由美子

生け垣のレッドロビンが朱くなりランドセルのあを坂のぼりゆく  澤﨑光子

着歴を押して亡母に掛けてみる「デンパノトドカナイトコロニアリマス」  石川えりか

自由猫と名付けて三軒で飼ひならすトラ子は幸せを運びて巡る  仁科美保

リュック背に抱っこ紐にて子を抱(いだ)き大きなバッグで娘(こ)は帰りゆく  藤田 咲

ほんとうに渇いているのは喉(のみど)ではないと知りつつ水汲みにゆく  中田明子

きなくさきニュース流れてながれくる黄砂をけふの善きものとせむ  千村久仁子

運勢を占うごとくおごそかにその皮を剥く朝(あした)のバナナ  福西直美


(新井蜜)

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# by trentonrowley | 2017-08-15 22:29 | 十首選 | Comments(0)
2017年 08月 14日

緑内障のこの目が未だ見えるうち五月の森に井戸を掘りたい

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緑内障のこの目が未だ見えるうち五月の森に井戸を掘りたい




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-14 23:20 | Comments(0)
2017年 08月 14日

「塔」八月号 池本一郎選歌欄 十首選

腑に落ちて心決まりぬ都バスから商店街を見てゐるときに  髙野 岬


渋滞に巻き込まれずに行き帰る記紀の世と今の犬上の地を  穂積みづほ


決心はたやすくゆるび見てゐるは水槽の金魚の鰭のひらひら  高橋ひろ子


もう会わぬ人なのだから好きなだけ嫌われたってさみしくないさ  海老茶ちよ子


四世代揃ひて囲む食卓に鯛も鰹も刺身になりて  水越和恵


「おはよう」の響ける園舎の一角にFAX累々着弾時の指示  荒木みのり


三分前の悲しい吾が三分後の悲しい吾にラーメン作る  太田愛葉


じわじわと炊飯器噴き、原子力発電所にも日は暮れゆかむ  千葉優作


まっすぐに工場の煙のぼりゆく春となりゆく空のうつり目  三上糸志


スカートを軽くつかみて一回転ひと去りしのちのバルコニーにて  水野直美



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-08-14 21:35 | 十首選 | Comments(0)
2017年 08月 14日

マリアにはなれないきみは声を上ぐ懐胎の朝の歓喜夢みて

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マリアにはなれないきみは声を上ぐ懐胎の朝の歓喜夢みて




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-14 10:29 | Comments(0)
2017年 08月 13日

「塔」八月号 永田和宏選歌欄 十首選

本当と嘘のあいだの嘘よりの言葉を重ねてこの春も過ぐ  柴野 春


空っぽのお腹で眠る病室のカーテンの薄きピンクを眺む  黒沢 優


いちどだけ掬はれしみづ さまよへるあなたをうるほす河でよかつた  小田桐 夕


雨に濡れかがやくさくら見てをりき傘かたむけて二十歳の吾は  祐德美惠子


もし空が割れたら何処に行けばいい 輝く四月の濃き影のした  岩尾美加子


あなたもお一ついかがと白き手がマシュマロのやうな不安をつまむ  加茂直樹


泣いてばかりいても仕方ない春雲とわたがしならばどちらが軽い  北野中子


分類は私の仕事なのになぜ名前のつかない感情がある  中井スピカ


戦争がどこか遠くでおきている野ばらはきっと今年も咲くらん  久長幸次郎


鼻がかゆいと言えば君が掻いてくれる くすぐったくて可笑しい春だ 茂出木智子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2017-08-13 23:58 | 十首選 | Comments(0)
2017年 08月 13日

生きるものの抱へる欠除みたすもの求めて歩く青空のもと

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生きるものの抱へる欠除みたすもの求めて歩く青空のもと




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-13 22:17 | Comments(0)
2017年 08月 09日

33 しめやかに毛のはえかはるヨロコビにからだを燃やし身を沈めたり

33 しめやかに毛のはえかはるヨロコビにからだを燃やし身を沈めたり

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-09 21:48 | Comments(0)
2017年 08月 08日

32 閉ぢられた闇のなかから放たれた風景画には額は要らない

32 閉ぢられた闇のなかから放たれた風景画には額は要らない


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-08 21:13 | Comments(0)
2017年 08月 07日

31 山科は愛媛のみかんあのときのものを思へば蛇いちごの実

31 山科は愛媛のみかんあのときのものを思へば蛇いちごの実

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-07 22:07 | Comments(0)
2017年 08月 06日

30 栄光とキャットフードの色合ひのわれの想ひの容器もあつた

30 栄光とキャットフードの色合ひのわれの想ひの容器もあつた


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-06 22:25 | Comments(0)
2017年 08月 05日

29 食べながら捺印をするパトモスと呼ばれる島で時が迫つて

29 食べながら捺印をするパトモスと呼ばれる島で時が迫つて

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-05 21:09 | Comments(0)
2017年 08月 04日

28 カナシミとヨロコビを知る夏の宵あなたはアルファわたしはオメガ

28 カナシミとヨロコビを知る夏の宵あなたはアルファわたしはオメガ


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-04 21:33 | Comments(0)
2017年 08月 03日

25 - 27 老ゆるまで避け続けたり少年は重いコンダラ軽い昏倒

25 老ゆるまで避け続けたり少年は重いコンダラ軽い昏倒

26 その苦難、支配、忍耐みをむすび夜としなれば底で泣く虫

27 胎教で朗読する人異質なるおほぞらつくりわかちたまへり


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-03 22:28 | Comments(0)
2017年 08月 02日

22-24 地に動くところのものを食べむとし涎が滴れる神の舌から

22 地に動くところのものを食べむとし涎が滴れる神の舌から

23 何年も草茫茫の地を照らす小さきひかり死者の中から

24 夢に見たあの風景に会ひたくて黄色と黒の翼が欲しい


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-02 21:49 | Comments(0)
2017年 08月 02日

19-21 真夜中に大き蛾のきて天井の蛍光灯にぶつかり飛べり

19 真夜中に大き蛾のきて天井の蛍光灯にぶつかり飛べり

20 熊蝉は鳴きつかれたか夕立の来さうな庭に勢ひのなし

21 銭湯におほぞらありて昼と夜地上の獣をわかちたまへり


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-08-02 10:24 | Comments(0)
2017年 08月 01日

16-18 沈黙に沈んで行かうぬくもりはふるさと発ちて地上もくらい

16-18 沈黙に沈んで行かうぬくもりはふるさと発ちて地上もくらい

灯台は潮に鞣され地を照らす光となるべきはじめの日なり

滑らせて倒れたものに触れさせむとかたちむなしくつくりたまへり


(新井蜜)

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# by trentonrowley | 2017-08-01 15:46 | Comments(0)
2017年 07月 31日

13-15 凝視して引き揚げられた石蹴りのつづく足あとみどりの夜は

13-15 凝視して引き揚げられた石蹴りのつづく足あとみどりの夜は

密閉しあはせた部分以前より繊細になる伸し掛かるとき

煮崩れる粘土人形体臭は悪夢にさへも後ろを押され



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-31 16:06 | Comments(0)
2017年 07月 30日

10-12 泣き声が肩に触れたら海沿ひのホテルの庭で嘲笑ふのね

10-12 泣き声が肩に触れたら海沿ひのホテルの庭で嘲笑ふのね

推測がもし続けられ嘆くこと思ひ浮かべば漂流します

蒸し暑き東山からすずかけが危機に瀕して採取したもの



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-30 17:20 | Comments(0)
2017年 07月 29日

7-9 硝子戸を突き破るとき溶けるときみんな孤独で遅すぎたのだ

硝子戸を突き破るとき溶けるときみんな孤独で遅すぎたのだ

屋根のないひろがる夜を鳴り渡るサン・セバスチャン聖堂の鐘

星空を仰向きてみる小止みなくサハラ砂漠に降つてゐる砂


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-29 22:17 | Comments(0)
2017年 07月 29日

大空に浮かぶ真白き背中からしたたりおちるつぶつぶの汗

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大空に浮かぶ真白き背中からしたたりおちるつぶつぶの汗



(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-29 21:38 | Comments(0)
2017年 07月 29日

4-6 琴線に触れる写し絵耳元の鳴く亀の顔立ち乱れゆく

4-6 琴線に触れる写し絵耳元の鳴く亀の顔立ち乱れゆく

夕庭の牛の匂ひも累積し救済だつた夏の終りに

うちあけた歪みたくない飛んだのはあつくなつても生きざまだから

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-29 10:27 | Comments(0)
2017年 07月 28日

薄青き顔を隠さむ黒南風が誘ひわたしを拉致せむとする  3/1000

薄青き顔を隠さむ黒南風が誘ひわたしを拉致せむとする

形態と名辞の真の降臨の第六感を元にもどして

首をふるもちろん横にそのまへに失はれてしまつた貞節

(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-28 19:14 | Comments(0)
2017年 07月 27日

あつたことあなたの父は受け入れて預言者たちに別れを告げる

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あつたことあなたの父は受け入れて預言者たちに別れを告げる




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-27 23:05 | Comments(0)
2017年 07月 26日

困惑の景色は飛んでかさぶたのごとく過失が剥がれ落ちくる

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困惑の景色は飛んでかさぶたのごとく過失が剥がれ落ちくる




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-26 20:42 | Comments(0)
2017年 07月 22日

蛾の群れが炎のやうに羽ばたいて世界地図から飛び立つていく

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蛾の群れが炎のやうに羽ばたいて世界地図から飛び立つていく




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-22 20:31 | Comments(0)
2017年 07月 21日

水飲み場に前足をかけ噴水の水飲む犬が俺の顔見る

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水飲み場に前足をかけ噴水の水飲む犬が俺の顔見る




(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-21 16:11 | Comments(0)
2017年 07月 20日

「塔」七月号 月集 十首選

剝がしたき思ひに見つむ垂直に幹をのぼれる繊きほそき蔓  花山多佳子

人住まぬ家の仏間に赤錆びの脇差はあり抜き身のままに  三井 修

菜の花とじゃこのパスタを食べながらあなたは語る気圧の変化  松村政直

手の甲をわれに抓ませ富士山と言わせてくれた祖母遠きかな  藤井マサミ

信じるもの匿さねば生きられぬ世キリシタン禁制の時代のみには非ず  黒住嘉輝

真昼間の日ざしの中を歩むとき先だつ杖に濃き影のあり  小石 薫

一歳の子らのなかから抱き上げる吾子を作物収穫のごと  澤村斉美

拗ねる子が私のようでもう面倒くさい奴(やっちゃ)なと抱き上げ帰る  永田 紅

しげ丸という犬友だちと会えなくてとぼとぼ帰るれんげを見つつ  なみの亜子

駅ナカのカフェの壁ぎは高椅子に座れば脛より街にさらさる  万造寺ようこ


(新井蜜)
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# by trentonrowley | 2017-07-20 16:14 | 十首選 | Comments(0)
2017年 07月 19日

「塔」七月号 池本一郎選歌欄 十首選

紛失をしたと決めいしわが帽子いく日か過ぎ駅に受け取る  山崎一幸

白椿好きと告げたる母なりき鈍空にはなほつりほつりと  河原篤子

春雷は火崎の燈台浮き立たせ魚釣る船の右舷照らせり  郡山紀男

寝返りを何回打ちしか朝刊が届いてしまえりあぁもう三時  髙畑かづ子

労基署に同行せよといふ指令待ちて終はりぬ寒きさんぐわつ  田中律子

おいくつと訊けば白ばら幼稚園に行くのと答う間をおかず  永田聖子

一人居のほのかな明かりも消え失せて牛乳、新聞もう来ない家  西本照代

子は少しつまらなさうなり生きてゐてくれればよいと望みを言へば  広瀬明子

妊婦らしき先生もゐる公園に幼き児らの高き声する  青木朋子

待ち合はせの駅で娘は喪服着たうさぎの顔してやや頷きぬ  北神照美


(新井蜜)

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# by trentonrowley | 2017-07-19 16:23 | 十首選 | Comments(0)