暗黒星雲

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2018年 07月 19日

「塔」七月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」七月号 栗木京子選歌欄 十首選


江ノ電に手を振る息子に振り返す匿名希望のたくさんのひと  竹田伊波礼


オリーブと葡萄、サフランどこまでもどこまでもアンダルシアは平ら  みぎて左手


せつなくて歩く銀座の路地裏に手の平サイズのゆうれいがいる  森永理恵


るるるって電話が鳴ってさみしいと岬の丘の伯母から電話  安倍光恵


どしゃぶりに色を消されてゆうるりと高原をゆく北しなの線  星野綾香


老いし姉ユメの町とうバス停の間近に一人杖つきてあり  宮内笑子


大きめのブレザーの袖にのぞく指きつちり揃ふ新中学生  八木由美子


しおり紐はさまれていたページには「も」の字の形のへこみがありぬ  松浦わか子


『三くだり半からはじめる古文書入門』振り向けばハナミズキ  川並二三子


亡骸を横たへしとふさながらに血のいろ滲む大理石板  高橋道子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-07-19 10:36 | 十首選 | Comments(0)
2018年 07月 18日

「塔」七月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」七月号 花山多佳子選歌欄 十首選


ああ母よあのふくふくとした腕で我を抱きしめたることありや  谷口富美子


ごみ置き場に男三人立ち話帰りがおそいと窓より見れば  相本絢子


一本だけ煙草吸ひたし窓際の夕光(ゆふかげ)を透く煙を見たし  石松 佳


庭先のリラの萌黄と同色のカバーの掛かるランドセル通る  金田和子


朝の夢に亡くなりたる人やつて来てセロリをよき音立てて食みをり  河村壽仁


幸せの形をなぞる「おかあさん」「なあに」と歌う「あ」につく#(シャープ)  佐伯青香


息子等は母さんのことしか言わないと遺されし男(ひと)ポツリと呟く  榊 直子


春来れば普段使わぬ道曲がる木香薔薇の茂る家へと  津田純江


歌手が言う「君」を私に置き換える根拠などなく涙はつたう  濱本 凜


子どもらを背負いし頃を思い出す背中のザックは泣かないけれど  大森千里



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-07-18 14:27 | 十首選 | Comments(0)
2018年 07月 12日

「塔」七月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」七月号 池本一郎選歌欄 十首選


オオカミの石の前脚あたたかしここからすべて見てゐたのだな  白石瑞紀


横笛を吹く子を見に来たといふ人と逢初(あいぞめ)橋から駅まで歩く  尾崎知子


花曇りのドライブにゆこうモクレンとコブシの区別つかぬ父と娘  穂積みづほ


罪びとのごとく女は顔覆ひ優先席に居眠りをせり  新谷休呆


施設から施設を廻るその人は長生きは辛いととくに夕暮れ  石井久美子


ゆずる気のなきわが前にベビー抱く人が立つなりレジ袋さげ  小島美智子


目の前に不安ばかりがぶら下がり枝垂れ桜は風に揺れゐる  澤井潤子


夫の背に追儺の豆の二つ三つ打ちて昨日の言(こと)ゆるすとす  仙田篤子


寂しさに北限ありやと問うてみる栗木さんの短歌に 一人居続けば  新田由美子


飛び込みの入水角度を褒められてプールの帰り見上げる桜  山西直子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-07-12 22:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 07月 03日

「塔」六月号 月集 十首選

「塔」六月号 月集 十首選


おほかたはのろひのことばみみもとでほめそやすこゑはことさらにして  真中朋久


時計屋のあまたの時計その中にいきなり反転する針なきや  三井 修


しょうがない行かんならんし行きますわと言う筈の言葉われらに残し  藤井マサミ


還り来ぬ人と思えど残しおく外出用の君の黒靴  青井せつ子


山かげに小さなお墓 巡礼の兄と同行妹とあり  稲垣保子 


ひとつずつ積み荷をおろしてゆくようなあなたの長い告白を聞く  岡本幸緒


その下に活断層ある山脈に春雲沸けり ま近くに住む  林 芳子


むかしをみな出家とふ身の処し方のありしを羨む足もと冷えて  万造寺ようこ


傍らに立てるナースは明らかに医師より固き表情をせる  村上和子


信貴山上ホテルにありし剥製の虎のまなこを思うことあり  山下 泉



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-07-03 22:57 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 29日

「塔」六月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」六月号 栗木京子選歌欄 十首選


使ひこし体の部品とり出して洗へぬものか冬の青空  青木朋子


擦れ違へばお先に通す営業の身の熟(こな)しいまだ夫は持ちて  鵜原咲子


慣性の法則証明するようにストーンは滑る零下の面を  杜野 泉


三月の日差し受けつつ縁側に手熨斗でたたむ紺の作業着  大城和子


桃の花ひらききりたり雛飾りかたづけられたる六畳の間に  天野和子


雪雲は阿武隈の上に生るるものと思ひてをりしが海にも生るる  大塚洋子


昼下がり老人あまた目に付くが皆われよりも足早にゆく  山崎一幸


とび色の栞ひものはし擦れぬようくるりと納める図書館の人  吉田淳美


若き母が春の小川に洗いおり田よりあがりしその泥の足  数又みはる


岩槻で父母に選ばれそのままにひいなは海を渡りて来たり  ダンバー悦子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-29 20:29 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 28日

「塔」六月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」六月号 真中朋久選歌欄 十首選


座蒲団に眠るみどり子卓の上にみかんと並び置かれてありぬ  久次来俊子


雪の夜の一歩一歩を辿りゆく長手のかなた姉の待ちおり  土肥朋子


東横線の座席に化粧するひとの紅筆はなかなか着地定まらず  井上政枝


木の陰のベンチに姉と妹が青き棗の実のやうに座す  清水良郎


如月に身罷り給えば君知らず弥生の空を花の香りを  中山悦子


明日こわす風呂の湯垢を流しおり仕舞湯の窓に雪らしきもの  邑岡多満恵


手袋にいがをいつぱいくつつけて牛蒡の種の黒きを採りぬ  山口泰子


神棚にまるき鏡は暮れてゐて夫は熊野の地に住まふなり  𠮷澤ゆう子


ささやかな秘密を知ったその夜は首に寝汗をかいて目覚める  片山楓子


死ののちを死者は生者のものとなり平手打ちした夜も明かさる  山下裕美



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-28 21:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 26日

「塔」六月号 松村正直選歌欄 十首選

「塔」六月号 松村正直選歌欄 十首選


春の雲気ままに流れおとめ座のスピカと今日も会えずに帰る  上杉憲一


思いきり窓を開いて仏壇の位牌にかがせる庭の沈丁花  大江いくの


順々に人形並べる父に聞くマトリョウシカを買いし日の母  隈元三枝子


どの墓も西を向きおり安達太良を丘の上から皆と眺むる  作田善宏


教えない。けれど聞かれたこともないスリーサイズと遠い約束  中井スピカ


隠れたが見つけにこない鬼をまつもうしちじゅうになった日の暮れ  中山大三


引出しにたまる小さなマッチ箱あの頃どこにもわくわくのありき  藤田幸子


電車待つホームに黒き輪ゴム落ち髪を束(つか)ねし妹の背おもう  村﨑 京


おかあさんの好きな高安と夫が言ふおかあさんであるわれを差し置き  森永絹子


三姉妹はその母呼ぶとき何(いづ)れの子も夢見るやうに「おかあさん」と言ふ  髙野 岬




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-26 20:29 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 22日

「塔」六月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」六月号 池本一郎選歌欄 十首選


橙の二両電車が海猫の声押し開き来る八戸線は  星野綾香


道路覆う煙抜ければややおいて車内に漂う野焼きのにおい  佐々木美由喜


あの角の木蓮咲いたら春本番わたしを連れだす口実にして  赤嶺こころ


駅前の自販機下のすき間からさらさらとあふれるさくらばな  うにがわえりも


春告げる菜の花色の声をした少女の群れとすれ違いたり  かがみゆみ


をんをんとまつ直ぐ天へ嗚咽するをさなご羨(とも)し雑踏の駅  水越和恵


眼鏡って外さなければぶつかるのね 知らなかったわ大人なのにね  山岸類子


春先の女のからだの気だるさを騙しだまして靴買ひに行く  祐德美惠子


瀬田川のいろ春めけり 墓所の風いまだ冷めたき裳の裾あふる  長谷仁子


をれまがる釘も覗けりトラックの荷の廃材にきさらぎの雨  篠野 京



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-22 20:23 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 22日

「塔」六月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」六月号 永田淳選歌欄 十首選


嫁にゆく子に持たせんと作られし藁の雪ぐつ目のそろいおり  松浦わか子


乳を欲る小さき舌のかたちして凍て土を割るチューリップの芽  多田眞理子


水のないところに水の音がしてクリスマスローズしずかに芽吹く  福西直美


母の背に負われ覗きし洗濯の盥の水が記憶のはじめ  坂下俊郎


墓石屋の勧誘電話はさはやかに「ご準備はもうお済みですか」と  加藤傳治


ひとさじの味噌に練り込む柚子の汁ほのかに香り分葱を和へる  進藤サダ子


命あるものらアイスを珈琲を口にし待てり姑(はは)焼かれゐる  竹尾由美子


雪渓の辺に咲くミヤマウスユキソウの風ともなひて厨辺に立つ  山尾春美


六十年立ち続けたる裸婦像の幼き顔に豊かなししむら  堺 礼子


目と目あう以前に戻り黒牛はにれがみわれはやや屈み行く  川口秀晴



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-22 14:33 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 21日

「塔」六月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選

「塔」六月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選


買いたての詩集を逆から読むようなうしろめたさを持ち会いに行く  真栄城玄太


恋みくじの大吉に頬緩ませて娘はバックにそつと仕舞ひぬ  河上久子


お迎へを待つ保育所の児のやうだ父は一張羅の帽子かぶりて  栗栖優子


この冬は二度とこないと思うとき青空にめじろきゅるきゅると鳴く  森川たみ子


スカートの裾を握って真夜中に両足で立つ人魚みたいに  中森 舞


もしパパが死んで線香上げるならこのピストルのライター使へ  本田 葵


未勝利馬いつまでも勝ちを知らぬまま走りを終へてゆくも美し  宮本背水


大丈夫?ではなく摘んだ花の名を父に聞くのが見舞いの言葉  若月カコ


庭に咲く紅き花蘇芳(はなずおう)一枝を墓に供える母の日の夕  髙鳥ふさ子


痛みにはハグが効くらしてきめんの寝る前五分をためしてもらふ  山縣みさを



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-21 10:50 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 20日

「塔」六月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」六月号 山下洋選歌欄 十首選


空を蹴り空を殴っている吾子を妻と眺めて夕餉始まる  岡本 潤


雨宿りしている男の午後9時の水中眼鏡みたいな眼鏡  吉岡昌俊


泣いているふりをしてたらほんとうに悲しくなった丸ノ内線  増田美恵子


家なくば路地といふものおのづから姿を消して風が吹くのみ  浅野美紗子


ぼくを待ち続けているきみしかいない信用金庫前のドトール 多田なの


冷え冷えと二階の障子に影射して無人の家の弥生夕暮れ  児嶋きよみ


母様のくしげの色のゆふぐれぞ湖にむかひてあしの笛ふく  竹内真実子


「うっとりと見惚れてしまうと彼言うの」ますます見事な臨月の腹  宮本 華


ぬひ針の「金耳三ノ三」これひとつ使ひ続けてこと足りて来し  西内絹枝


黒ネクタイを引き抜き厨の明るみに甘めのコーヒー両手で包む  永久保英敏



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-20 15:44 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 18日

「塔」六月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」六月号 三井修選歌欄 十首選


まどかなる春の訪れ太腿に小さきほくろをひとつ見つける  魚谷真梨子


いつかしら魔法の力を失って自分にかけた呪いがとけぬ  王生令子


春の夜に遊行するねこ移ろいて唱和する声遠離りゆく  岡崎五郎


川沿いをずっと行くバス帰ったら何もしないと決めて家へと  川上まなみ


物語がちょうど佳境というときになんでお腹がグーと鳴るのか  北山順子


峪の湯はもつたいなくも我ひとりゆらりゆらりと手足がのびる  河野純子


隣合う畑に人の影あれば言葉はなくも力となれり  古栗絹江


三月のゴミ集積所に捨てられていし束ねたる入試参考書  中村美優


ルーティンは崩さぬと言ひ入院の前の晩にもピアノをさらふ  安永 明


「さくら餅が待つてゐます」のメールみて急ぎて向かふ循環バスで  唐木よし子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-18 20:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 06月 18日

「塔」六月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」六月号 小林幸子選歌欄 十首選


諍いのあとにも朝はやってきて壁に伝言ボードの空白  紫野 春


今、菊に囲まれ眠っている人はわたしの母さんだったかもしれず  逢坂みずき


冷えた脚そろへてけふも並ぶらむ家族の数のふるさとの椅子  岡部かずみ


手びねりで作りし花卉にたつぷりと赤きひとへの椿を活ける  千葉なおみ


墓石に弥生の水をすべらせるまだ寒いかとつぶやきながら  高原さやか


集会の椅子を選びて座りをれば見えぬ序列のできあがりゐつ  庄野美千代


耳元に幼き秘密囁いた糸電話です姉も九十歳  松浦 哲


風邪癒えてやつと朝餉にありつけば梅浮かびたる粥のくれなゐ  藤原明朗


木蓮と辛夷の違い聞いているオープンテラスはまだまだ寒い  小澤京子


「見ますか」とビニール袋を差し出せり手術室より出で来て医師は  栗山洋子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-06-18 10:17 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 30日

「塔」五月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」五月号 花山多佳子選歌欄 十首選


バスが来ない生活に慣れ下ばかりむいて歩くことにも慣れてしまひき  西村玲美


カーテンの縦の裂け目を隠さむと洗濯挟みで二か所留め置く  柳田主於美


桟橋より見る雨の乗馬クラブには帽子のごとくしずかなる馬  白水ま衣


夜のバスに座る人らの右頬を照らして赤色灯は過ぎゆく  伊東 文


どうぞという声が聞こえて渡りゆくひんやりとした土間の向こうへ  宇梶晶子


斜め前の女の妙に長き首なおも伸ばして高座に見入る  金田光世


わたしには残しておきたいものはない帽子も傘も青いコートも  國森久美子


このビルで誰が正規か非正規か女子会ランチで自ずと知れり  小山美保子


父母の手を恋ふる日あるを知らざりき走り書きさへ手元になくて  竹下文子


また同じ夢に迷えり朝の灯とも夕べの灯ともみえる家路に  数又みはる



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-30 20:32 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 28日

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選


珍しく足のゆびゆびの間から地球が見える ほんとはいつでも  小西白今日


光る石埋めたあたりか新緑の校庭すみに野あざみの咲く  宮脇 泉


まだ君を抱きしめている感覚に抱きしめられていて眠れない  拝田啓佑


幾何かほてり残してそろそろと幾何学模様のスカートを穿く  中森 舞


今日うまく眉を描けしことなどをあなたは小枝を拾ひつつ聞く  大堀 茜


雪降つてパンが消えたるパンの棚三月うさぎ走らせておけ  森尾みづな


骨だけの傘が河原に捨てられて春まだ寒き堰に白鷺  三木紀幸


限界を超えよ超えよと口角が上がり続けて口裂け女  とわさき芽ぐみ


ここからは徒歩でゆくべし左手の杖をかざして男は言ひつ  山縣みさを


島ひとつ違うのみにて一日を話す機会のつかめぬ火曜  吉原 真



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-28 21:03 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 26日

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選


ひかえめな夕焼けのようにはにかんで笑うあなたの母になりたい  高松紗都子


おとなしい少年でありきわたくしはアリジゴクに蟻おとすことありき  宗形 光


和箪笥をのけると壁にカシニョール展のポスター貼られありたり  松浦わか子


恋猫がアオアオと鳴き今だけはアオちやんと呼ばれ遠ざかりゆく  浅野美紗子


スカアトをひろげ椿のくれなゐの花拾いゆく布たゆむまで  新井啓子


おのおののハンドクリームの香り満つ午後の仕事が始まる前の  和田かな子


我の名を呼ばれた気がして立ち止まる芙蓉の花咲く墓地は青空  小林千代


観るに見る視るに診る看るわたくしが母をみるのはいずれにあらむ  坂下俊郎


人と会うことの疲れがしたたりて重力に引かれるように眠りぬ  山川仁帆


まだ眠たい水曜の朝勝手に寝坊してよい日と決めてあと五分寝る  春澄ちえ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-26 15:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 24日

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選


ばんざいの形のままに受けとりてをのこの臍が丸見えとなる  竹内真実子


テヘランを去る日路上に痩せこけし子猫のおりぬ真白き子猫  秋野道子


機織(はたお)りの音しか聞こえぬ道を抜け間人(たいざ)の浜に文を燃やせり  岡部由紀子


後輩は丸いほっぺを光らせて産休という木立に消える  中井スピカ


びわのような人だと思い見つめおりうぶ毛のよろいは傷つきやすし  中山惠子


三日月の凍えて空に貼り付きぬ朝刊はすでに配達されおり  ひじり純子


助手席の人と話は弾まざり送ると言ひし口が乾きぬ  益田克行


賑わいを縫いて小路にさしかかりそっと触れたる手袋の指  森 雪子


結び方を知らないからねネクタイをほどく指に責任はない  山岸類子


すっぴんにメガネをかけてマスクして最近ほしいものは印泥  山名聡美



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-24 16:37 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 22日

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選


他動詞のぬらすといふことゆびさきは椿の雪をそうつとはらふ  千村久仁子


よく眠れる枕売らるるその横で紙コップのココア飲み干す  朝日みさ


ヒヤシンスの匂いのせいだ 言い訳を重ねてしまう夜半(よわ)のリビング  石橋泰奈


あの蟹を食べられなかったと今日もまた繰り言をいう楽しみがある  岡崎五郎


鹿のつのに触れてゐたのはそれぞれに隠しごとをもちよつたひとたち  小田桐 夕


偶数でも奇数でもないゼロのようにあなたは敵でも味方でもない  北山順子


「もしもし」といふだけで切れしがその声は生前の友ありありとして  河野純子


手品(マジック)が趣味だと云うてゐし旧友のとある日ねずみ講に誘ひ来(く)  篠野 京


モロゾフのショコラ一箱君に買う君が生きてる振りをして買う  ジャッシーいく子


むらさきのトレッキングシューズ置かれたる玄関に差す日暮れのひかり  松原あけみ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-22 20:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 20日

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選


鷗らが空に漂ふ次々と身を疾風に放つた者たち  髙野 岬


いまもなほ家族の数の椅子を置きその空席に時をり掛ける  西山千鶴子


他人にはどうでもいいことなれど明日われは散髪をしに行く予定  丸山順司


宅配の箱を開ければ山菜のわきに蝋梅ひと枝香る  佐藤涼子


出征を見送る汽車の窓に寄りおみやげ頼みし三才の吾  梅下芙美惠


突然のはしり雨受けビルの壁に張りつきてわれ静物画となる  古屋冴子


金沢の雪のにおいの付箋です手紙に貼りてあなたのもとへ  堀口 岬


水底に白いターバンの女ゐて忘れないでとあれは誰だらう  祐德美惠子


あけがたの夢に目覚めぬ逢ふことのもうない人のふらりあらはれし  竹尾由美子


「誰とでも話せるようになりたいです」その絵馬の前を去り難くおり  垣野俊一郎



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-20 22:18 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 18日

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選


弊社には様式あらずグーグルに「退職届 書き方」と聞く  逢坂みずき


いきなりに両の指にて輪をつくる何事をかを教へむがため  村上 明


勝利者にはなし聞くとき「放送席、放送席」となぜ二回呼ぶ  田村龍平


歩道へと足のさきより降りてきて鳥はみずからの影にいたれり  中田明子


オリオンもシリウスもいつもどおりなり月のみ赤く欠けいるこの夜  山下美和子


すべり落つる刹那にとまる技をみせ緑葉の先にしずくの光る  市居よね子


さびしいかいつて聞くから淋しくなる夕べ父と並びてあふぐ夕焼け  臼井 均


黒皮の手袋はいつも右ばかりなくして残るを箪笥にしまう  高橋あや子


約束はときにだれかを傷つける私はわたしの森へと歩く  増田美恵子


煮る沸かす洗つて回す他動詞を使ひすぎたかヒューズが飛びぬ  伊藤京子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-18 19:12 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 16日

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選


靴音がわたしのあとをついてくる観る人のなき素描展示室  岡部かずみ


しろがねのナイフのやうな愛なども知らず越の国にて果てむ  山下好美


芽吹きだろうか 手袋の中まどろんだ深爪がそのかたちに痛む  加瀬はる


薄雲が空を透かしている午後の誰かに伝えたいだいじょうぶ  紫野 春


夜半に目覚め己が来し方思うなりエッシャーの絵に迷い入るごと  鎌田一郎


穴を出てブツブツ呪詛の泡を吐く大潮の夜は蟹になりたし  王生令子


溺れたら悪いとわかるならもっと強い力でやめさせてほしい  丘村奈央子


ほおたるは昆虫ですかと妻が問う雪が降るから寝てしまいたり  中山大三


かなちゃんを預けていこうと言う五歳そうすりゃなんでもはやくできるよ  矢澤麻子


「はくちょうはくちばしの先から沈むよ」と凍て空の星を子らに指さす  上杉憲一



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-16 20:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 30日

「塔」四月号 月集 十首選

「塔」四月号 月集 十首選


意味もなくまた呼んでゐる呼ばれても迷惑だらうが雪のゆふぐれ  永田和宏


さまざまな会社のカレンダー路(みち)に売る老人のゐて一つ買ひたり  花山多佳子


たまきはるいのちなどともおもはねどひかりのなかにいりゆかむとす  真中朋久


丘の上の畑なかの道ゆふぐれてかなたにスカイツリー灯れる  小林幸子


一すじの重さいか程制服のおとめの肩にかかる黒髪  石本照子


留守中にゐねむりするなと着ぶくれて出かける妻が振り向きて言ふ  上大迫 實


君は子音わたしは母音オリオンを指させば互ひの肩が触れあふ  苅谷君代


一刷毛の雲の浮かぶを眺めつつ湖西線で行く友の墓参に  貞包雅文


その話は一先づ置いて 城跡の縁(へり)より見下ろす石垣の反り  久岡貴子


布巾には夢二椿のまろき花咲きをり母に赤飯を炊く  干田智子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-30 21:51 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 28日

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選


雨音に醒めゆくまぎわの夢のなか明日会わむ人の髪濡れており  土肥朋子


月集を読みをる車窓の陰りきて彦根は雪なりきみ住む町の  広瀬明子


もうどこを捜せど会へぬ人なれど夢の駅にてすれちがひたり  石原安藝子


十年(ととせ)経て母の肌着を捨てる日の朝しらじらとありあけの月  斎藤雅也


あかき鳥居をぬけてくあなたの背がみえる わたしはもつと強くなれるわ  田中律子


他人事と遠く見てゐし一文字がカルテ追ふ目にとびこんで来ぬ  林 雍子


「わざわざ」と受付のひとは言ひかけて「はるばる」と言ひ直したり  穂積みづほ


二穴パンチの一穴だけを使うときの空打ち側のようなむなしさ  吉田淳美


元日の本屋であなたを見失ういつか会えなくなるね、たやすく  上澄 眠


夢に来てダッフルコートを脱ぎゐしが息子にあらず歯並がちがふ  清水弘子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-28 20:57 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 26日

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選


息を吸えばもう眠るらし母の夢にわたしの知らぬ一頭の馬  金田光世


雪の下の草食む馬を見やりつつ柵に錆びたる折れ釘を抜く  清水良郎


なつかしい人との夢をさめて聴く冬ちかき朝の鋭き風の音  野島光世


うつつには見たことがなく夢にだけいる人のいて時に死にたり  相原かろ


手触れれば父の額の冷たさよ死をはじめて見し十六の冬  大塚洋子


雨あがりのにおいが好きだ 深く深く目を瞑りいるあなたは森だ  数又みはる


でもやっぱり呆けていない振りをして陽のさす冬至に雪かきをする  近藤桂子


髪少し生えてきたとのメールありそれより明るき気配がうれし  西川照代


電波傍受もあるかもしれぬ仕事場へガラケーにてかける急ぎの伝言  福井まゆみ


シャワーヘッドの穴を抜けゆくとき水はこそばゆくなる ほんの一瞬  一宮奈生




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-26 20:29 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 25日

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選


ほんたうはわからないんです長いこと自分の影と思つてきたけど  岡部かずみ


真夜を来て冷えきった手をまっすぐに君に触れたりまだ温かき  今井眞知子


重さなき魚群のようなかたまりが乗継ぎホームを横切りてゆく  福西直美


のら猫に汲みおく水に薄氷のはりて鈴鹿の山並白し  倉成悦子


湯を浴びれば今日のうろこが剥れゆくひとりの密室さかなになりて  庄野美千代


窓の辺の多肉植物に陽はさせり女生徒とふたり保健室にゐる  竹尾由美子


冬ざれの畑に頰被りのをとこをりいくたびか立ち腰を叩ける  古屋冴子


母が言ううらのおじさん死んじゃったふるさとにまた空家の増える  真間梅子


あの山の裾野に残る友の家無人となりしその後を知らず  丸山隆子


おやゆびがこのごろおいしくないねんと小さな声に六歳が言う  ぱいんぐりん



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-25 23:01 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 24日

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選


あかんぼを便座にすわらせ待ちおれば赤子にわが顔見つめられおり  矢澤麻子


この朝つごもり蕎麦が届きたり泥つき葱を三本添えて  ジャッシーいく子


播州の空明るくて素麺を干しをる男(おのこ)ふとき腕もつ  藤原明朗


三十分待てど来ぬ人待つ我を誰かがどこかで見ているような  村﨑 京


ちちちちと機械の音して品物のラベルは落ちるそれを拾いたり  奥山ひろ美


屋根屋根に夜の雪落つる京の絵に入りて窓に灯りつけたし  上仲修史


伝えんとせし思いありしかれどもその内容を思い出せない  林 広樹


何とまあ大き靴裏、息白く野球少年われを抜きゆく  安永 明


このごろはうつむきて歩く癖のありけふの空色おもひ起こせず  三好くに子


冬山の深きしじまに耐えかねて四十雀わがそばに来て鳴く  川口秀晴



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-24 09:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 20日

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選


風のよるへあなたをかえして一輪の百合てらすべく灯を細めたり  宗形 瞳


キミになくワタシにはある見てごらんこれが雪だったころのわたくし  只石めぐみ


ありありと街のかたちを尖らせてやわらかき刃 冬の逆光  中田明子


托鉢の僧の気分にいただきぬ今採れたての甘藍ふたつ  山田恵子


軒を打つ風を聞きつつ過ごしいるふたりに戻りて年越す夜を  白井陽子


なまぬるい紺をまとえば古臭いアメリカ映画の主役みたいだ  大橋春人


パンを焼きスープを煮込み灯をともす田舎娘に私はなりたい  さつきいつか


杖をつきしばらく頭を下げている見知らぬ人居り父の墓前に  寺田裕子


茶畑は花つけしまま刈りこまれ小夜(さよ)の中山西行の歌碑  水岩 瞳


二番目にお待ちの方というものにどういうわけか私はならず  八鍬友広




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-20 20:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 18日

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選


西国のをみなは柑橘煮るだらうわがストーブに林檎が煮ゆる  加藤和子


海鳴りの聞こえる夜は母子して囲炉裏囲みて歌うたいたり  梅下芙美惠


「寒空のこの一服がうまいのよ」男は言えり肩尖らせて  垣野俊一郎


<頭髪(かみ)抜き>は反則技ぞ 医務官もわれも知らざりき頭髪(かみ)もどす術(すべ)を  河村壽仁


三角洲の沖よりとどろく波の音枕辺に聞くひとりの夜更け  木戸洋子


軒下に干し柿は渋の抜けぬままあなたは去りぬ霜月の朝  古栗絹江


ことごとく吾は渋い派一月は干し芋なんぞ作りて暮らす  西村清子


水量の増えし木曽川月影に映し出されて漆黒に見ゆ  松尾桂子


ゆっくりと絶望をする 珈琲とデッドストックコートの匂い  山岸類子


ひとりですか。いえ違ひます。ふたりです。夜の雨戸はカタカタと鳴る  和田 澄



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-18 22:52 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 17日

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選


昨年の諸々のこと忘れたるように四日の仕事始まる  作田善宏


コーヒーしかできないけれどいいですか鉛筆握る店のおばちゃん  高原さやか


きみの触れた髪を映してその白さを三面鏡の中に束ねる  吉田 典


わが床にうたたねしゐるこの娘(こ)はもツバスを脱けてハマチの形  飛鳥井和子


名古屋駅に着いてしばらく安らぎぬ余命告げられし人と別れて  岡崎五郎


四年前夫はなくなりましたとの賀状の返しありて声上ぐ  小川節三


ひと夜さの疲れを高速バスにおき子は軽やかにステップ降りくる  千葉なおみ


ごろつきのやうな里芋ゆでながら背のびして取るおでん用なべ  森永絹子


田に水を張れば湧き出すカブトエビホネエビわしゃわしゃ足だらけなり  王生令子


あなたに差すひかりが多い中庭に世界のバグのような静けさ  長月 優



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-17 22:35 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 16日

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選


亡くなりし後に賀状の届きたり元日の月冴え冴えと渡る  井上孝治


高台から小(ち)さく海見ゆ浪高く脹らみてをりけふのその海  髙野 岬


わが空き家列車に見たり山茶花のはなさく垣に囲まれゐるを  越智ひとみ


剪定を終へたる君は梯子降り糸月出でぬと我を手招く  森川厚子


百円のハンバーガーとコーヒーで昼食済ます女正月  あ か り


おさかなのメヂカは目と目近くしてメバチはパッチリ大きな目なり  佐竹永衣


信仰のゆえに友との交わりを断つこともあり寒夜のメール  富田小夜子


もう少しやさしくしたいテーブルのミントの挿し芽の根がのびるまで  はなきりんかげろう


戦場の兵士のように放心し暮れの仕事を終えし息子は  村井玲子


重ねれば重ねるほどに豊かなり今治生まれの白きバスタオル  魚谷真梨子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-16 22:49 | 十首選 | Comments(0)