暗黒星雲

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2018年 05月 26日

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選


ひかえめな夕焼けのようにはにかんで笑うあなたの母になりたい  高松紗都子


おとなしい少年でありきわたくしはアリジゴクに蟻おとすことありき  宗形 光


和箪笥をのけると壁にカシニョール展のポスター貼られありたり  松浦わか子


恋猫がアオアオと鳴き今だけはアオちやんと呼ばれ遠ざかりゆく  浅野美紗子


スカアトをひろげ椿のくれなゐの花拾いゆく布たゆむまで  新井啓子


おのおののハンドクリームの香り満つ午後の仕事が始まる前の  和田かな子


我の名を呼ばれた気がして立ち止まる芙蓉の花咲く墓地は青空  小林千代


観るに見る視るに診る看るわたくしが母をみるのはいずれにあらむ  坂下俊郎


人と会うことの疲れがしたたりて重力に引かれるように眠りぬ  山川仁帆


まだ眠たい水曜の朝勝手に寝坊してよい日と決めてあと五分寝る  春澄ちえ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-26 15:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 24日

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選


ばんざいの形のままに受けとりてをのこの臍が丸見えとなる  竹内真実子


テヘランを去る日路上に痩せこけし子猫のおりぬ真白き子猫  秋野道子


機織(はたお)りの音しか聞こえぬ道を抜け間人(たいざ)の浜に文を燃やせり  岡部由紀子


後輩は丸いほっぺを光らせて産休という木立に消える  中井スピカ


びわのような人だと思い見つめおりうぶ毛のよろいは傷つきやすし  中山惠子


三日月の凍えて空に貼り付きぬ朝刊はすでに配達されおり  ひじり純子


助手席の人と話は弾まざり送ると言ひし口が乾きぬ  益田克行


賑わいを縫いて小路にさしかかりそっと触れたる手袋の指  森 雪子


結び方を知らないからねネクタイをほどく指に責任はない  山岸類子


すっぴんにメガネをかけてマスクして最近ほしいものは印泥  山名聡美



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-24 16:37 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 22日

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選


他動詞のぬらすといふことゆびさきは椿の雪をそうつとはらふ  千村久仁子


よく眠れる枕売らるるその横で紙コップのココア飲み干す  朝日みさ


ヒヤシンスの匂いのせいだ 言い訳を重ねてしまう夜半(よわ)のリビング  石橋泰奈


あの蟹を食べられなかったと今日もまた繰り言をいう楽しみがある  岡崎五郎


鹿のつのに触れてゐたのはそれぞれに隠しごとをもちよつたひとたち  小田桐 夕


偶数でも奇数でもないゼロのようにあなたは敵でも味方でもない  北山順子


「もしもし」といふだけで切れしがその声は生前の友ありありとして  河野純子


手品(マジック)が趣味だと云うてゐし旧友のとある日ねずみ講に誘ひ来(く)  篠野 京


モロゾフのショコラ一箱君に買う君が生きてる振りをして買う  ジャッシーいく子


むらさきのトレッキングシューズ置かれたる玄関に差す日暮れのひかり  松原あけみ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-22 20:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 20日

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選


鷗らが空に漂ふ次々と身を疾風に放つた者たち  髙野 岬


いまもなほ家族の数の椅子を置きその空席に時をり掛ける  西山千鶴子


他人にはどうでもいいことなれど明日われは散髪をしに行く予定  丸山順司


宅配の箱を開ければ山菜のわきに蝋梅ひと枝香る  佐藤涼子


出征を見送る汽車の窓に寄りおみやげ頼みし三才の吾  梅下芙美惠


突然のはしり雨受けビルの壁に張りつきてわれ静物画となる  古屋冴子


金沢の雪のにおいの付箋です手紙に貼りてあなたのもとへ  堀口 岬


水底に白いターバンの女ゐて忘れないでとあれは誰だらう  祐德美惠子


あけがたの夢に目覚めぬ逢ふことのもうない人のふらりあらはれし  竹尾由美子


「誰とでも話せるようになりたいです」その絵馬の前を去り難くおり  垣野俊一郎



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-20 22:18 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 18日

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選


弊社には様式あらずグーグルに「退職届 書き方」と聞く  逢坂みずき


いきなりに両の指にて輪をつくる何事をかを教へむがため  村上 明


勝利者にはなし聞くとき「放送席、放送席」となぜ二回呼ぶ  田村龍平


歩道へと足のさきより降りてきて鳥はみずからの影にいたれり  中田明子


オリオンもシリウスもいつもどおりなり月のみ赤く欠けいるこの夜  山下美和子


すべり落つる刹那にとまる技をみせ緑葉の先にしずくの光る  市居よね子


さびしいかいつて聞くから淋しくなる夕べ父と並びてあふぐ夕焼け  臼井 均


黒皮の手袋はいつも右ばかりなくして残るを箪笥にしまう  高橋あや子


約束はときにだれかを傷つける私はわたしの森へと歩く  増田美恵子


煮る沸かす洗つて回す他動詞を使ひすぎたかヒューズが飛びぬ  伊藤京子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-18 19:12 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 16日

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選


靴音がわたしのあとをついてくる観る人のなき素描展示室  岡部かずみ


しろがねのナイフのやうな愛なども知らず越の国にて果てむ  山下好美


芽吹きだろうか 手袋の中まどろんだ深爪がそのかたちに痛む  加瀬はる


薄雲が空を透かしている午後の誰かに伝えたいだいじょうぶ  紫野 春


夜半に目覚め己が来し方思うなりエッシャーの絵に迷い入るごと  鎌田一郎


穴を出てブツブツ呪詛の泡を吐く大潮の夜は蟹になりたし  王生令子


溺れたら悪いとわかるならもっと強い力でやめさせてほしい  丘村奈央子


ほおたるは昆虫ですかと妻が問う雪が降るから寝てしまいたり  中山大三


かなちゃんを預けていこうと言う五歳そうすりゃなんでもはやくできるよ  矢澤麻子


「はくちょうはくちばしの先から沈むよ」と凍て空の星を子らに指さす  上杉憲一



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-05-16 20:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 30日

「塔」四月号 月集 十首選

「塔」四月号 月集 十首選


意味もなくまた呼んでゐる呼ばれても迷惑だらうが雪のゆふぐれ  永田和宏


さまざまな会社のカレンダー路(みち)に売る老人のゐて一つ買ひたり  花山多佳子


たまきはるいのちなどともおもはねどひかりのなかにいりゆかむとす  真中朋久


丘の上の畑なかの道ゆふぐれてかなたにスカイツリー灯れる  小林幸子


一すじの重さいか程制服のおとめの肩にかかる黒髪  石本照子


留守中にゐねむりするなと着ぶくれて出かける妻が振り向きて言ふ  上大迫 實


君は子音わたしは母音オリオンを指させば互ひの肩が触れあふ  苅谷君代


一刷毛の雲の浮かぶを眺めつつ湖西線で行く友の墓参に  貞包雅文


その話は一先づ置いて 城跡の縁(へり)より見下ろす石垣の反り  久岡貴子


布巾には夢二椿のまろき花咲きをり母に赤飯を炊く  干田智子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-30 21:51 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 28日

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選


雨音に醒めゆくまぎわの夢のなか明日会わむ人の髪濡れており  土肥朋子


月集を読みをる車窓の陰りきて彦根は雪なりきみ住む町の  広瀬明子


もうどこを捜せど会へぬ人なれど夢の駅にてすれちがひたり  石原安藝子


十年(ととせ)経て母の肌着を捨てる日の朝しらじらとありあけの月  斎藤雅也


あかき鳥居をぬけてくあなたの背がみえる わたしはもつと強くなれるわ  田中律子


他人事と遠く見てゐし一文字がカルテ追ふ目にとびこんで来ぬ  林 雍子


「わざわざ」と受付のひとは言ひかけて「はるばる」と言ひ直したり  穂積みづほ


二穴パンチの一穴だけを使うときの空打ち側のようなむなしさ  吉田淳美


元日の本屋であなたを見失ういつか会えなくなるね、たやすく  上澄 眠


夢に来てダッフルコートを脱ぎゐしが息子にあらず歯並がちがふ  清水弘子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-28 20:57 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 26日

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選


息を吸えばもう眠るらし母の夢にわたしの知らぬ一頭の馬  金田光世


雪の下の草食む馬を見やりつつ柵に錆びたる折れ釘を抜く  清水良郎


なつかしい人との夢をさめて聴く冬ちかき朝の鋭き風の音  野島光世


うつつには見たことがなく夢にだけいる人のいて時に死にたり  相原かろ


手触れれば父の額の冷たさよ死をはじめて見し十六の冬  大塚洋子


雨あがりのにおいが好きだ 深く深く目を瞑りいるあなたは森だ  数又みはる


でもやっぱり呆けていない振りをして陽のさす冬至に雪かきをする  近藤桂子


髪少し生えてきたとのメールありそれより明るき気配がうれし  西川照代


電波傍受もあるかもしれぬ仕事場へガラケーにてかける急ぎの伝言  福井まゆみ


シャワーヘッドの穴を抜けゆくとき水はこそばゆくなる ほんの一瞬  一宮奈生




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-26 20:29 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 25日

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選


ほんたうはわからないんです長いこと自分の影と思つてきたけど  岡部かずみ


真夜を来て冷えきった手をまっすぐに君に触れたりまだ温かき  今井眞知子


重さなき魚群のようなかたまりが乗継ぎホームを横切りてゆく  福西直美


のら猫に汲みおく水に薄氷のはりて鈴鹿の山並白し  倉成悦子


湯を浴びれば今日のうろこが剥れゆくひとりの密室さかなになりて  庄野美千代


窓の辺の多肉植物に陽はさせり女生徒とふたり保健室にゐる  竹尾由美子


冬ざれの畑に頰被りのをとこをりいくたびか立ち腰を叩ける  古屋冴子


母が言ううらのおじさん死んじゃったふるさとにまた空家の増える  真間梅子


あの山の裾野に残る友の家無人となりしその後を知らず  丸山隆子


おやゆびがこのごろおいしくないねんと小さな声に六歳が言う  ぱいんぐりん



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-25 23:01 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 24日

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選


あかんぼを便座にすわらせ待ちおれば赤子にわが顔見つめられおり  矢澤麻子


この朝つごもり蕎麦が届きたり泥つき葱を三本添えて  ジャッシーいく子


播州の空明るくて素麺を干しをる男(おのこ)ふとき腕もつ  藤原明朗


三十分待てど来ぬ人待つ我を誰かがどこかで見ているような  村﨑 京


ちちちちと機械の音して品物のラベルは落ちるそれを拾いたり  奥山ひろ美


屋根屋根に夜の雪落つる京の絵に入りて窓に灯りつけたし  上仲修史


伝えんとせし思いありしかれどもその内容を思い出せない  林 広樹


何とまあ大き靴裏、息白く野球少年われを抜きゆく  安永 明


このごろはうつむきて歩く癖のありけふの空色おもひ起こせず  三好くに子


冬山の深きしじまに耐えかねて四十雀わがそばに来て鳴く  川口秀晴



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-24 09:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 20日

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選


風のよるへあなたをかえして一輪の百合てらすべく灯を細めたり  宗形 瞳


キミになくワタシにはある見てごらんこれが雪だったころのわたくし  只石めぐみ


ありありと街のかたちを尖らせてやわらかき刃 冬の逆光  中田明子


托鉢の僧の気分にいただきぬ今採れたての甘藍ふたつ  山田恵子


軒を打つ風を聞きつつ過ごしいるふたりに戻りて年越す夜を  白井陽子


なまぬるい紺をまとえば古臭いアメリカ映画の主役みたいだ  大橋春人


パンを焼きスープを煮込み灯をともす田舎娘に私はなりたい  さつきいつか


杖をつきしばらく頭を下げている見知らぬ人居り父の墓前に  寺田裕子


茶畑は花つけしまま刈りこまれ小夜(さよ)の中山西行の歌碑  水岩 瞳


二番目にお待ちの方というものにどういうわけか私はならず  八鍬友広




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-20 20:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 18日

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選


西国のをみなは柑橘煮るだらうわがストーブに林檎が煮ゆる  加藤和子


海鳴りの聞こえる夜は母子して囲炉裏囲みて歌うたいたり  梅下芙美惠


「寒空のこの一服がうまいのよ」男は言えり肩尖らせて  垣野俊一郎


<頭髪(かみ)抜き>は反則技ぞ 医務官もわれも知らざりき頭髪(かみ)もどす術(すべ)を  河村壽仁


三角洲の沖よりとどろく波の音枕辺に聞くひとりの夜更け  木戸洋子


軒下に干し柿は渋の抜けぬままあなたは去りぬ霜月の朝  古栗絹江


ことごとく吾は渋い派一月は干し芋なんぞ作りて暮らす  西村清子


水量の増えし木曽川月影に映し出されて漆黒に見ゆ  松尾桂子


ゆっくりと絶望をする 珈琲とデッドストックコートの匂い  山岸類子


ひとりですか。いえ違ひます。ふたりです。夜の雨戸はカタカタと鳴る  和田 澄



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-18 22:52 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 17日

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選


昨年の諸々のこと忘れたるように四日の仕事始まる  作田善宏


コーヒーしかできないけれどいいですか鉛筆握る店のおばちゃん  高原さやか


きみの触れた髪を映してその白さを三面鏡の中に束ねる  吉田 典


わが床にうたたねしゐるこの娘(こ)はもツバスを脱けてハマチの形  飛鳥井和子


名古屋駅に着いてしばらく安らぎぬ余命告げられし人と別れて  岡崎五郎


四年前夫はなくなりましたとの賀状の返しありて声上ぐ  小川節三


ひと夜さの疲れを高速バスにおき子は軽やかにステップ降りくる  千葉なおみ


ごろつきのやうな里芋ゆでながら背のびして取るおでん用なべ  森永絹子


田に水を張れば湧き出すカブトエビホネエビわしゃわしゃ足だらけなり  王生令子


あなたに差すひかりが多い中庭に世界のバグのような静けさ  長月 優



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-17 22:35 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 16日

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選


亡くなりし後に賀状の届きたり元日の月冴え冴えと渡る  井上孝治


高台から小(ち)さく海見ゆ浪高く脹らみてをりけふのその海  髙野 岬


わが空き家列車に見たり山茶花のはなさく垣に囲まれゐるを  越智ひとみ


剪定を終へたる君は梯子降り糸月出でぬと我を手招く  森川厚子


百円のハンバーガーとコーヒーで昼食済ます女正月  あ か り


おさかなのメヂカは目と目近くしてメバチはパッチリ大きな目なり  佐竹永衣


信仰のゆえに友との交わりを断つこともあり寒夜のメール  富田小夜子


もう少しやさしくしたいテーブルのミントの挿し芽の根がのびるまで  はなきりんかげろう


戦場の兵士のように放心し暮れの仕事を終えし息子は  村井玲子


重ねれば重ねるほどに豊かなり今治生まれの白きバスタオル  魚谷真梨子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-16 22:49 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 12日

「塔」四月号若葉集 三井修選歌欄 十首選

「塔」四月号若葉集 三井修選歌欄 十首選


雪になるその瞬間に気がつかず見てた車窓に映るわたしを  椛沢知世


カゼひきを病人らしく演出す鍋焼きうどんはそんな食べ物  谷 活恵


柿の実は艶色を増しその奥の遠くに浮かぶ白雲が見ゆ  赤井稚加


初期化してあなたを育て直したし家族写真に少し微笑む  伊地知典子


「ちは」だけじゃなくて他のも覚えてね 小学生に教えるかるた  うにがわえりも


「あの夜」と呼ばれる夜になりそうでポニーテールをまた結い直す  頬  骨


南天の色づくまでの薄いろの何十日か人を憎みき  仲町六絵


シナモンの香を閉じ込めて林檎煮の陶器の蓋する誰も居ない夜  里乃ゆめ


うたまろの頃より女の折るといふ鶴折りながらまよへる夜更  山縣みさを


残月を背にあててゐる充電をわざと忘れしスマホを持ちて  大堀 茜



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-04-12 22:16 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 28日

「塔」三月号 月集 十首選

「塔」三月号 月集 十首選


活(い)け了へて花切鋏拭ふとき遠き嘆きの声よみがへる  栗木京子


膜が張るごとく動かぬ池の面のところどころに嵌まる赤き葉  松村正直


小春日のあまねき中の各駅停車隣の少女は眠りはじめぬ  角田恒子


何をするといふこともなく冬晴れの外には鵙の高鳴き聞こゆ  木村輝子


姉であることの嬉しさ釣り好きの下の弟が魚下げて来る  酒井久美子


あこがれはもうあらざれどアメリカへつづく海原眺めていたり  新川克之


お弁当持ってみんなで行こう赤いもみじが陽に照るところ  進藤多紀


ながく目を閉じれば亡くせし黒犬のまっくらな瞳(め)の濡れ濡れとあり  なみの亜子


ビール飲んだわれは娘に真っ赤だよと言われるとても寒い冬の夜  花山周子


虹の脚立てる処に棲むひとのあるを思ひて堤過ぎたり  溝川清久



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-28 23:04 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 27日

「塔」三月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」三月号 花山多佳子選歌欄 十首選


鳶職の聞き覚えある若き声ひびきくるなり歩きておれば  山崎一幸


手紙とは違う紙片も入れた気がしてきてポストを振り返り見る  相原かろ


膝頭ふたつ浮かべて熱き湯に忘れそうなる死者を思えり  黒沢 梓


デスクマットに挟んだ写真つらい時書類をそっと持ち上げて見る  荒井直子


夜の壁に匍(は)う虫なぜか祖かとも「殺して」という妻に迷えり  歌川 功


「あつ、寺さん」喪中はがきを持ちしまま玄関に夫は突つ立つてゐる  山地あい子


ひとり子を育てる娘を見送りてかへり見すれば月は満ちをり  中林祥江


零余子ごはん夫に供えてしばらくを食べ終るころか下げて頂く  林 芳子


赤と青のリボンが数多太ももから生えてくる夢浅き眠りの  吉田淳美


こんなにも冷えた耳もつわたくしに息ふきかけて抱きよせるひと  田中律子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-27 16:52 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 23日

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 十首選


日本橋「砂場」にふたり蕎麦掻きをあねいもうとのやうに分けあふ  澄田広枝


夏柑の残りを煮てゐるとろとろと占ふやうにしやもじは動く  出 奈津子


何だらうぬるぬるぬると未確認ひかう物体躰をぬけゆく  國森久美子


朝あさに連嶺のごとき雲うかびもう聞こえこぬ死者の声あり  竹下文子


沖島は猫がいるから好きという子トンビのいるのがわれは好きなり  土肥朋子


アンタレス西へ西へと移りしに耳石のゆれはいまだ止まざり  中島扶美惠


窓の外かすかにずれる心地して梧桐(あおぎり)の葉のゆらり落ちくる  永田聖子


こんなにも大きいんだと見せてから湖東の空へ舞ひ上がる鳶  山口泰子


今日もまた挙動不審な我のをり防犯カメラにひとひ追はるる  黒瀬圭子


日捲りは夏のままなるふるさとの家に雪虫飛びいるころか  数又みはる



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-23 20:22 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 23日

「塔」三月号若葉集 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」三月号若葉集 小林幸子選歌欄 十首選


カンカンと鉄音響かせ六人の作業する人鉄塔に並ぶ  山内恵子


ポケットの内にポケットあることに気付く明るき枯野を行けば  森尾みづな


おめでとう顔の体操するように口にしてみるトイレの中で  椛沢知世


生け垣に山茶花背よりたかき道 子らを呼ぶ声けさは聞こえず  栗栖優子


テノールの車掌の声はここちよく神楽坂まで乗って行こうか  薦田 恵


まま、と呼ぶ人を探している君の右手をぎゅっと握り締めつつ とわさき芽ぐみ


たぶんすぐあなたは誰かと手を繋ぎその手を誰とも比べないひと  中森 舞


教室もペンもチークもサックスも跳び越えてゆく 魚座を盗め  平野 杏


分数を教へる時に分けるものチーズケーキにしてと言ふきみ  本田 葵


雨あがり車道にうかぶ青空を白き自転車わたりてゆけり  吉原 真



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-23 10:39 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 21日

「塔」三月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」三月号 永田淳選歌欄 十首選


寂しさを母は語りき寂しさははるかに遠く木蓮の咲く  ひじり純子


ふたたびは会ふことなからむ遠縁の人の手料理夫を酔はしむ  林 雍子


モンブランケーキにブスッとフォーク刺すあの頃姑の脳怪しき  鈴木美代子


竹鼻町狐穴(たけはなちやうきつねあな)とふ交差点差しかかるとき赤の灯ともる  伊藤京子


こんなにももう輝けぬテーブルの津軽りんごに陽のあたる午後  木原樹庵


つきたての餅を正座のいもうとの膝つこぞうの形に丸める  竹内真実子


「おばあちやん」と他人に言はれつんのめりぬ七十歳は微妙なのです  藤原はつみ


自家製のつるし柿ならほちゃほちゃの時を選びて食むのも嬉しい  堀口 岬


冬川を落ち葉の筏が流れゆく乾ききつたる夢の浮力に  一宮雅子


工事現場に置かれたままのショベルカーが今夜は掬つてみたい星たち  高橋ひろ子



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-21 21:47 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 21日

「塔」三月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」三月号 江戸雪選歌欄 十首選


真夜中の仕事は終わる気配すらなくて五度目のコーヒーの湯気  内海誠二


忙しくしているらしいおとうとの擦りきれている革靴の先  小松 岬


お大事にと返すしかなく三日月のかどは鋭くとがりていたり  三谷弘子


首のない鶏を逆さにぶら下げてワンピースの人夕暮れに消ゆ  小圷光風


やうやくに日の差しはじめ見下せばいつも乗つてた黄色い電車  佐藤壽美枝


終電のプラットホームは光からつくられている微かな離島  森永理恵


わが窓に大きく影のすぎてゆき庭の式部がはらはらと散る  南條暁美


突きつめたあとの奈落を思いつつスノードームに雪を降らせる  黒木浩子


そのうちにと思うこと多すぎてもう二度と戻れない世界だ  井上雅史


あと十分門限までのまわり道に「デスペラード」を聴いた助手席  中山惠子




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-21 10:30 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 20日

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選


ときに夕陽は鋭く射して街上の通り魔の手を閃かせたり  永山凌平


わが家へと誘いのメールの五分後に君は来たりぬ作業着のまま  赤田文女


両親が島よりもどりしばらくを島唄のなかに日々を過ごしぬ  浅野美紗子


雨の降りはじめを電車に見ておればいつかは魚だったわたしも  川上まなみ


うすくふくらんだ手編みのセーターにアネモネは咲き ひと挿しもらう  北虎叡人


煮炊き終え向かう机に西日射し今日のわたしが頬杖をつく  倉谷節子


ひとり降りまたひとり降りバスはゆく赤い金魚のように眠ろう  小林千代


傷口に塩をぬり込む行為だとわからぬ貴女のアドバイス聞く  前原美登里


青春の甘き息にも握らぬ手八十路を過ぎて握りしめをり  山田トシ子


おもいでは揮発されゆくはつふゆのあさへこの身をさらしておれば  田村龍平




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-20 11:40 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 19日

「塔」三月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」三月号 山下洋選歌欄 十首選


停電に静止するラボひんやりとチェリャビンスクから来たという石  安治香織


バカボンの生まるる前のバカボンのパパを思ひぬ子を抱きつつ  益田克行


八月を語りたること多けれど十二月八日静けく暮れたり  小畑志津子


これはねきたやましぐれとひとの声 秋陽に照りて銀の糸降る  津田雅子


日本を守るアメリカ軍だから落ちた窓枠、県がひきとる  久保まり子


先に寝てた妻がくるりと背を向けてなんだばかやろーと小さく言えり  垣野俊一郎


ふつと消えてしまひさうだつた彼の日々の錘であつたか 黒いリュックは  山尾春美


逝きしのち六時間なら交わりてよいらしエジプト流の別れは  高橋武司


半島の付け根に暮らす 大切なことほど親に言はないで来て  髙野 岬


あしたのジョーほどに疲れて帰り来る妻は両手を重くぶら下げ  小林貴文



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-19 17:23 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 18日

「塔」三月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」三月号 永田和宏選歌欄 十首選


半過去も単純未来もどこか遠く知らない町を濡らす雨粒  福西直美


きれぎれに仕事の愚痴を言いし人が揚げあんパンの話を始める  吉田 典


ふゆぞらに塔きわだてり白月とならび浮かべばほろびの匂いに  中田明子


やはらかき西洋ひひらぎ赤き実の片恋のままあなたと暮らす  長尾 宏


鹿ヶ谷通りを北に歩を早め右に折れると霙に変わる  田巻幸生


垣根縫う忍びのような鶯のぢ鳴き聞こえて足を止めたり  森山 功


くらやみがばきゅんと撃たれた傷跡のようにひらいた白いさざんか  海老茶ちよ子


駅前の歯医者の窓より見おろせば話してみたき女人がとほる  坪井睦彦


止まるなと言はれて蟹の横ばひに信貴山縁起絵巻を過ぎる  澤井潤子


どうしてもやりきれぬ日があるでせうピリ辛カレーを夜にはどうぞ  臼井 均




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-18 18:30 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 17日

「塔」三月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」三月号 真中朋久選歌欄 十首選


可愛いとわたしに言ったことなどもなかったように結婚する人  田宮智美


玄関にジャンパー、ランドセル脱ぎ捨てておやつちょうだいと子は我に言う  矢澤麻子


冠はシロツメクサでつくったの世界はあたしのものだったのよ  真間梅子


力む癖が身に付いていて落花生を次々食べて歯痛を起す  河田潮子


彼岸花が呼んでも行くなと妻が言う出掛ける時にまた念を押す  中山大三


太陽は生れ変はりたり冬至すぎ日脚をのばし光強くす  山下好美


友人A友人Bとカラオケに 恋人Aから連絡は無し  川又郁人


菜箸の二本が丈の異なればとりあへず先を揃へて使ふ  丸山順司


昼どきのATMの残り香はうすきピンクの看護師のもの  柳田主於美


遺影にと撮りし写真の五年経てやや若すぎるかと鏡に比ぶ  加藤 宙



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-03-17 20:00 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 23日

「塔」二月号 月集 十首選

「塔」二月号 月集 十首選


夕ぐれの光に翳を深くする雪の比叡を見つつ帰らな  永田和宏


逢ひかたを考へてくれるひとのため時間をつくり逢ひにゆかむとす  真中朋久


冬霧のように過ぎたり会ってから頰にふれくるまでの時間は  江戸 雪


熟したる柿の実ほたりと落ちて来ぬ友よりの便り絶えて久しき  青井せつ子


我もまた独りとおもひゐるときにバックしますとトラックの声  岩野伸子


黄の光戸の隙間より届き来て呼ばれゐるかと月を見に出る  亀谷たま江


聖岳まぢかき里の勾配を昇りてゆけり秋の黄蝶は  酒井久美子


ゆらゆらと川沿いの道をあゆみくる橋のあたりで手をふりながら  竹田千寿


山を背に二十戸ばかりなる里に住みたしと言ふ雪を知らねば  干田智子


胎内のやうなくらやみ潜りゆく虚見都(そらみつ)奈良へ近づきながら  万造寺ようこ



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-02-23 22:11 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 23日

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選


舟が水を分けるみたいに滑らかに前へ進んでアタック決まる  荒井直子


鋪道(しきみち)の冷ゆる夕べを自転車の籠かたぶきぬ塩の重さに  清水弘子


四角い校舎のドアを出ずれば学校は夜に漕ぎ出す船のようなり  芦田美香


常光寺と墨書ありたり傾きし陽を背に受けて路地を曲れば  上﨑智旦


多分少し正確でない言葉だと秋の空耳を繰り返して我は  小川和恵


一両の青い列車が走りゆく遠く枯野を切りさきながら  数又みはる


公園のベンチに黒く小さき背 しばし見つめて我が母と知る  佐原亜子


夜ふかく夢のさなかと思ふまでおほき純白の花ひらきゆく  友田勝美


墓石は手を灼く熱さ     暑さに弱き母のねむれる  仙田篤子


父の焚く送り火を背に母がゆく振り向くことの無き闇の道  仙田篤子




(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-02-23 16:32 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 22日

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選


聞きながら乾いてゆけりくちびるは湿らせながら次をうながす  岡本幸緒


山靴にほど良く泥の付きし日にチーズケーキと珈琲を待つ  江種泰榮


仕舞湯の鎖を引けば悲しみはゴウと声たてうづ巻き流る  黒瀬圭子


ひたまりのなかに覚めたり鉛筆の落ちて転がる澄んだひびきに  佐藤陽介


子どもらは禿びたゑんぴつがなぜか好き筆箱の中てんでにありぬ  山地あい子


エスカレーターですれちがひたるをさな児の眼に間に合はざる我のほほゑみ  立川目陽子


夕ぐれのかばんにつぷつぷ揺れているペットボトルに残りし水が  永田聖子


渇水の歴史をもてる満濃町 火除けのお守り家家に見ゆ  橋本成子


本題を言い出すたびにうやむやとなり改札で娘と別れたり  三浦こうこ


箪笥あり帯揚げ伊達衿あらわれて蟹色を夢のわれは手に取る  朝井さとる



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-02-22 20:14 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 21日

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選


その先に海はあるはず右へゆく道のかなたを一瞬思う  吉原 真


くちなしは罪のかをりすたそがれて歩みおそしと父を待ちをり  栗栖優子


何かしら通知が来るたび光ってはまた暗くなるスマホを見てる  佐原八重


喪失感グレーに引きずる日々にしてイヤリング 一つ何処にか落とす  才田良子


一本にあかみどりきの入り混じり性徴期の恥じらいのごときポプラ  渋谷めぐみ


眼裏に小さな鼠住みおれば潰さぬようにそっと目を閉ず  泉乃 明


前をゆく夫婦の距離が開きゆくことの気になるウォーキング大会  森尾みづな


生き抜いたつもりになって空き缶をぐしゃりと潰すきれいな足で  とわさき芽ぐみ


ここからは雪原ねってぺたんこのお腹へ乗せてくるプラレール  はたえり


シェービングクリームに軍用はなく 髭剃りの刃を替える明け方  太代祐一



(新井蜜)


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# by trentonrowley | 2018-02-21 22:27 | 十首選 | Comments(0)