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暗黒星雲

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2010年 12月 31日

2010年12月

利用するあてのないもの貯めこんで何年生きるつもりだ俺は
一歳の幼児が天秤棒かつぎふりまはしたり小春日和に
もうしきを膝にあて折り新聞に火をつけ竈へ放り込み燃す
際物のノキアの電話鳴る前に腕を伸ばせば震えてくれる
あれ、あれととぼけて両の手を伸ばしほんとのことに蓋をしておく
最後尾に並んだはずの伸びる列霞の彼方を振り返り見る
午前二時するどいオフロ!といふ声にめざめればきみは静かに眠る
夜が明けてどすんと屋根の雪が落ち父の不在は四日目となる
「日本人であるお前は毎日を何が大事とおもひ生きてる?」
「俺達は普通はフットブレーキをかけないんだよ駐車するとき」
三階の扉が開く三階は禁煙フロアと聞いたはずだが
ひよどりに今年の柿は食べられず概念として位置を占めてる
ひよどりは去年柿の実たべた木をさがすわたしが今年切つた木
柿の実をたべたくなつたひよどりがかきの木のうへで出会つたカラス
秋の日は雑木林と柿の実と俺の背中を温め落ちる

天井から生えてきた脚刈り取つて千本に切る包丁の音
伸びてきたトマトの苗に手が生つて赤いてのひらひらひらゆれる
青空が落ちてくる日もきみの手は翳りを見せず菜を摘むだらう
やつてくる群れを待ち受け息をとめ躍る体に照準あてる
噛みしめる牝鹿の肉微笑んで殺意をかくし捕へた鹿の
膝がしらぷつくりふくれ人知れず潜り込みたる小鬼隠るる
振り向けどまだ落ちてこぬカシオペア 不眠の夜の記憶失ふ
父と掘る穴は背丈を越えてゐて青空に鳴る暗い鈴の音
冬の陽の放射をあびて受精した私の卵(らん)が歌ひだすまで
年末に宇宙人専用車輌ができるといふネットの噂

by trentonrowley | 2010-12-31 21:38


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