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暗黒星雲

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2010年 12月 27日

『葦舟』を読む その9

酢の色に昏れゆく谷間ひたひたと心は足を急かせてやまず (河野裕子)

どうして「心は足を急かせて」いるのだろうか?

子供の頃のことを思い出した。日の短くなった季節に家から少し離れたところ
で遊んでいて、夢中で遊んでいるうちにいつの間にかあたりが暗くなってしまっ
た。もう夕食の時間になっているかもしれない。帰りが遅くなるとしかられる
などと思いながら走って家に帰った。そのときの気持ちがこのような感じだっ
た。

この歌の場合はそんなことではないのだろう。「酢」とか「ひたひたと」から
なにか不吉な予感のようなものが感じられる。

「酢の色」は少量であれば無色透明のように思えるが、非常に薄い黄色、ある
いは若干黄緑色がかっているかもしれない。「酢の色に昏れゆく谷間」という
と、夕方の辺りの色の描写であるとともに、「酢」という酸っぱい感じ、更に
言えば、物が腐敗したときの酸っぱい臭いの感じが裏に張り付いているように
感じる。

下句「ひたひたと心は足を急かせてやまず」について、作中主体が実際に歩い
ていて心が足を急かせる状態と読んだが、「心は足を急かせてやまず」を暗喩
と取ることもできると思う。実際に歩いているわけではないが、(何かの連絡
を待っているときのような)気が急く状態をこのように表現したとも考えられ
る。たぶん、「心は」とあるためにそのように思わせるのだと思う。

by trentonrowley | 2010-12-27 10:38 | 葦舟 | Comments(0)
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