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暗黒星雲

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2013年 07月 31日

2013年7月

習はずに書いた愛の字歪みけり誘惑された記憶のやうに
ピザ窯の中で焼かれるピザ生地に生まれ変はつたのだこの俺は
ピザとして焼かれる前にこの本を読み終はるのは無理かもしれぬ
ピザとして焼かれたならば噛みしめて食べてくれるか冷めないうちに
タバスコを振つて食べたらこの俺も多少ピリッとするかも知れぬ
サンダルに隠れるな、おい蜥蜴の子、踏んでしまふぞ早く逃げろよ
葱を切る俺の背中に白い蛾が止まつてないかちよつと見てくれ
爆音が長く小さく聞こえくる半身を湯に沈めゐる夜半に
三月に初めて聞きしより今や七月なるに裏のうぐひす
寝苦しき暑さにめざめ水をのむ みづ欲しつつ逝くかも知れぬ
少年はマンガン山の廃坑に友と迷ひぬ蒼ざめにけり
朝雨の止みにしあとに打ちよせる波濤のごとき熊蝉の声
母親と子供三人(みたり)と図書館にカートを押して本さがしゐる
脚ながき少女らの夏、図書館に本を探して我の前ゆく
窓開けて歌読みをれば隣家より「母さん、痛い、足ぶつけた」と
青空を仰ぎて剪ればオリーブの枝葉は顔に降りかかりたり
市議候補の選挙カー過ぎて真夏日の夕べの風は涼しかりけり
我が庭に住みゐる蜥蜴、係累を増やしたるらしこの暑き夏
大き鴉が椋の枝にて我を待ちバトン受け取れるごと飛び立つ
向かひからシャワーの音が聞こえくる真夜中まへの独居監房
相続と贈与の話を炎昼の福祉センター会議室で聴く
窓際の席に近鉄急行の線路にひびく音が聞こえる
生ぬるい風が湿りをおびて吹くどこへも行けないのだもう俺は
夕立のまへに吹きくる風のごとべつたりとした眼で我を見る
遠雷を聞きつつ茄子のぬか漬けをかじる私はまだ生きてゐる
炎昼に花を探せりくちなしの香りのしるき坂のぼりつつ
古新聞あつめに来たるトラックの前を少女が走つてゆけり
朝顔のいまだ咲かざる庭すみのうすくらがりにうかぶかほあり

by trentonrowley | 2013-07-31 22:05


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