2017年 05月 24日
拝啓時下煉獄の候 わかくさの苦艾【チェルノブイリ】も炎えあがるべく 塚本邦雄 文春新書の『新約聖書 II』を読んだところ、佐藤優氏の「ヨハネの黙示録」の解説に興味深いことが書かれていた。 先に「ヨハネの黙示録」の8-10, 11を引用する。 「第三の天使がラッパを吹いた。すると、松明【たいまつ】のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、川という川の三分の一と、その水源の上に落ちた。この星の名は「苦よもぎ」といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。」 興味深いのは佐藤氏の解説のつぎの部分だ。なお、ロシア語で「にがよもぎ」のことをチェルノブイリと言うのだそうだ。 「ロシア語の聖書では、「にがよもぎ」には「ポルィヌィ」という単語があてられているが、ロシア人(ロシア語を解するウクライナ人、ベラルーシ人、ラトビア人なども含む)は、チェルノブイリという地名を聞けば、「ヨハネの黙示録」のこの箇所を思い浮かべる。天から落ちてくる燃えるような星が、臨界事故と重なる。その星の名前はチェルノブイリで、付近の川が汚染され、多くの人が死ぬ。ソ連帝国が破滅に向かって進んでいくという終末論的雰囲気が社会に広がっていった。」 つまり、チェルノブイリの原発事故を黙示録が現実化したものと捉えた人がいたということだ。 冒頭の塚本の歌は、「煉獄」や「炎えあがるべく」という用語のほかに「苦艾」に「チェルノブイリ」とルビが振ってあることから判断して、明らかに苦艾・チェルノブイリ・原発事故という連関を意識した上で詠まれた歌だと思う。ちなみにチェルノブイリの原発事故は1986年、塚本邦雄のこの歌が含まれている『魔王』という歌集は1993年に出版されている。 塚本邦雄は聖書に造詣が深かったそうなので、この歌を詠んだときに、「ヨハネの黙示録」の上の引用部分を意識していたと想像される。「煉獄」という言葉は黙示録的でもある。 (新井蜜)
by trentonrowley
| 2017-05-24 15:00
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