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暗黒星雲

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2009年 05月 31日

2009年5月

連休の谷間の朝を痩身の水兵さんと腕組み歩く
瀬戸内に生まれたきみは田螺など食ったことない専ら浅蜊
満員の電車に乗れば春の朝マスクで隠す昨夜(よべ)の爪痕
干してある白いジーンズ肩組んで歩いたときの君が穿いてた
住所録めくってみたがアの欄もミの欄もまた空白である
剪定の屑に埋まりし我が家かなゴミ回収の網目潜れず
白壁に我が影うつす午後二時のあの日とおなじ太陽の位置
金魚鉢に金魚のいない理髪店おまけにくれた十円硬貨
早とちりしてばっかりのきみだから雨傘をさすつばめを見たら
音源を探して歩く浮沼を田んぼのなかを田螺のように
憂鬱になりたいのではないけれど憂鬱になるひとりの朝は
ボルガ河のような大河に身を投げて流されてゆく浮身しながら
腕力もお金もなくてクリスマスイヴに負けないための方法
この次の土曜は歌会で出掛けると気分の晴れ間に急いで告げる
編み上げの茶色の靴を探してるあなたに会った風吹く五月
癇癪を起こすだろうか閾値を探るテストをそっとしてみる
町長の長谷川さんは古物商長谷川商事の社長でもある
ひよどりがあつまり鳴きて我に告ぐ邪悪なものの来たらむことを
レジ袋下げて上っていく俺を寿ぐように降ってくる雨
逢ったのはダンスが済んだ朝だから後れ毛が首筋に張りつく
麻切りの朝はさらしのたすき掛け白いご飯を三膳食べる
愛と死を並んで歌う女たちカカチコカーと麻引きながら
かなしみは走る母親なぐさめは殺された子の涙の甘さ
太き鯉五月の川を泳ぐなりどこにその身を隠しおりしか
広大な笊の底からもれおちるつぶやきさけび魂たちの
大空に浮かぶ真白き背中からしたたりおちるつぶつぶの汗
おみやげにもらった柏餅をたべ指先がべたべたとべとつく
水張田飲み干せばほら泥のなか田螺が夢を見ているだろう
赤黒の数字の羅列ちらちらとためらいがちの声が流れる
草むしる男は首を太陽に差し出し焼かる五月の庭で
麻畑にとなりの娘に連れ込まれお嫁に行けぬと泣いて責めらる
麻の葉の模様の寝間着きせられて早く育てと水注がれる
駅員もサラリーマンもOLも兄ちゃんたちもマスクしている
喧嘩して飛び出してきた昼のあと公園坂に虎が雨降る
B型はきらいと言われお昼には餡かけスパの大盛りを食う

by trentonrowley | 2009-05-31 21:05


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