暗黒星雲
2022-04-29T21:34:34+09:00
trentonrowley
春日山見あげてきみがおほ空におぼれてしまふと言つた日のこと (新井蜜)
Excite Blog
「塔」四月号 山下泉選歌欄 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29171490/
2022-04-29T21:33:35+09:00
2022-04-29T21:34:34+09:00
2022-04-29T21:34:34+09:00
trentonrowley
十首選
「ラーメンでも食べて帰ろう」口にしてはじめて食べたいものに気づけり 仲原 佳
大根は冷めゆく時に染みるという頭を冷やせと言われたあの日 森川たみ子
わが欲しき浄き眠りは売らるるか雪のコンビニ聖夜を灯す 三上糸志
マスクの色ピンクに変えて出かけゆく束の間春の苺をもとめて 朝日みさ
境内の梔子の実を盗るといふ妄想ウフフきんとんを練る 岡田ゆり
語れない想いばかりがふくらんで私を加熱したら爆ぜるよ 小川さこ
デルタ株ゼロの続く日啓蟄の虫のごとくに街に這ひ出す 向井ゆき子
土竜また耕作者にして白菜の芯わけてやるほんの駄賃に 西郷英治
その本は家のどこかにある本で、どこかわからないから買ったのさ 平出 奔
さりげない振りがもつともむづかしくいつもの順序で夏みかん剥く 高橋ひろ子
(新井蜜)]]>
「塔」四月号 なみの亜子選歌欄 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29160643/
2022-04-19T22:44:25+09:00
2022-04-19T22:45:14+09:00
2022-04-19T22:45:14+09:00
trentonrowley
十首選
雪と風窓打ち続く朝まだき列車の音す 乗りたるは誰 佐々木美由喜
スリッパの残る温もりはっとすも履きかえぬまま診察券出す 鯵本ミツ子
遊ぼってポニーテールのまりこ来るくる日もくる日も塾などなくて 今井由美子
ああ、あれはサンダーバード夜をゆく湯舟をとおく抜きさってゆく 海野久美
千六本切りかけ止みつ 五十本くらゐでよいか一人の刺身 栗栖優子
湯たんぽが待ちくるるから氷点下二十度の夜も眠れり直ぐに 小林多津子
真裏には世田谷線が往き来するその音までも店の味なり 杉山太郎
われを訪ふ呼び鈴がもう喜びの音色なりけり子を産みし友 染川ゆり
こうのとり故郷の池に飛来すと同窓会の延期の知らせ 宮内笑子
寺庭のお百度石に苔生せりぐわんかけするひと今なほをるや 唐木よし子
(新井蜜)]]>
「塔」四月号 若葉集(栗木京子選) 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29157310/
2022-04-16T22:46:50+09:00
2022-04-16T22:48:38+09:00
2022-04-16T22:48:38+09:00
trentonrowley
十首選
スコップで混ぜた手作り飼料なりわが相棒の鶏に与える 前田典昭
セーターの毛玉切るときひっそりと私の中に降り立つ少女 丸山 萌
夢があれば、あればしあわせ真夜中の海月は海と月にわかれる 長井めも
コーヒーを一口飲みてマフラーをくるりと回す君の白き手 鴻野節子
スカートの下にジャージを履いてする逆立ちみたいにカレーを頼む 中型犬
二人して写真に納まる「このときは元気だった」という日のために 土井恵子
巻き爪の内向的なかなしみが疼きだすのだ正座するたび ひろうたあいこ
昼過ぎの車内はみんな微睡んで虹を伝える相手がいない 山桜桃えみ
迷いつつ爪先立ちで歩く夜の桃色の月我を離さず 𠮷田佐和子
つかみたしスピカの青さ手のひらに春の訪れ感じたいから 関 竜司
(新井蜜)]]>
「塔」三月号 月集 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29132222/
2022-03-24T22:37:31+09:00
2022-03-24T22:38:39+09:00
2022-03-24T22:38:39+09:00
trentonrowley
十首選
計り売りの味噌屋で賢(さか)しくブレンドをしてもらひたる少女のわれは 花山多佳子
一つずつリンゴ配り歩く人私には来ないなぜだか考える 藤井マサミ
かの秋の旅に着ていしセーターの左手首がほつれていたり 岡本幸緒
一番星から三番星まで数へたらお家に入らう小さきものよ 小澤婦貴子
熱いお茶を飲んでわたしを灯しゆく遠き帆影が揺れ止まぬよう 金田光世
石段を登れずそれし脇道に石蕗の花の黄色明るし 黒住 光
休めの姿勢とりいるわれと真っすぐに立つ若者とレジに並べり 小島さちえ
どの屋根も大きく白き息を吐く夕暮れの里 峠より見き 酒井久美子
くさ原となりたるきみの家の跡隣人が井戸の在処を言へり 杉本潤子
文字追いて義務のごとくに本を読む文字を忘れぬ母の背さびし 西川啓子
(新井蜜)]]>
「塔」三月号 梶原さい子選歌欄 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29130378/
2022-03-23T11:17:45+09:00
2022-03-23T11:18:20+09:00
2022-03-23T11:18:20+09:00
trentonrowley
十首選
ハイキングは中止とメールに打つ指をとどめるやうに陽の射しきたり 広瀬明子
音のせぬ流れに浮かぶもみじ葉を杉の根っこにつまずきつつ追う 小林則子
てのひらにほどよく重る背の青き鯖の片身をゆず酢に浸す 岩﨑雅子
夕暮れの海は過去への入口か亡き人ら来て黙して語る 大城和子
秋は来ぬ東口への地下道にしんと売らるる栗入りのパン 清田順子
認知症は神のギフトか何もかも忘れて垣根に凍蝶となる 南條暁美
黙然と粘土こねをりざわめきの消えゆきて月昇り来るまで 丸山順司
めくらないままの暦の秋の野は師走の今日も金色のまま 矢澤麻子
晴れの日が三日つづけば三日行くトンネル抜けて日の沈む海 山尾春美
健やかな時も病む時も いつの日か認知症介護する日もありなむ 渡辺のぞみ
(新井蜜)]]>
「塔」三月号 栗木京子選歌欄 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29129177/
2022-03-22T11:10:18+09:00
2022-03-22T11:11:05+09:00
2022-03-22T11:11:05+09:00
trentonrowley
十首選
予定調和に進む議論にわきまへぬ女となりて発言をする 黒瀬圭子
なぜ学校に行きたくないか分からない子が窓を見て「鳥」とつぶやく 川上まなみ
母の顔にすつと力の入りゆく栗羊羹の栗を切るとき 清水良郎
最後には死ねばいいだけそう思い軽くなったりまた沈んだり 高橋武司
席を立つ理由は別にありしかど銀杏のひかりを浴び来るといふ 立川目陽子
一人用の食卓すべて庭に向くその背越しに鶏頭の花 東郷悦子
言葉から離れていたいひと日なり白きさざんか陽射しをかえす 永田聖子
いつかまた夕陽をみたいこの海に乗り捨てられて朽ちてゆく船 西村玲美
珈琲の香りの向こうにガーベラのそのまた向こうに空が漂う 古林保子
郊外のりんご畑の実が消えて色のない空を枝が突き刺す 三浦こうこ
(新井蜜)]]>
「塔」三月号 永田淳選歌欄 私の好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29127433/
2022-03-20T19:25:41+09:00
2022-03-20T19:26:43+09:00
2022-03-20T19:26:43+09:00
trentonrowley
十首選
どこからか靴が集めてゆふぐれのバスターミナルに落ち葉の欠片 一宮奈生
さざなみのような違和あり美しい湾の名前と戦の始まり 福西直美
サーカスの天幕たたまれ去りゆくをみてゐるだけの夕暮れありき 大地たかこ
気をつけてあなたによく似た馬がいてふっと鏡に映りこむから 乙部真実
いもうとの暮らしし街は川向かうこころ寂しきときに訪ふ土手 久川康子
七人で暮らし始めた家だった今は父母おとうとが住む 田宮智美
帰宅するバスを掴まえられずいる夢の歌会果てしその後 沼 寛子
休耕田の薄枯れたる前で笑むまだ色褪せぬ選挙の顔が 向山文昭
川のごと空をながるる鳥たちの夕暮れは樹の上があかるい 𠮷澤ゆう子
柊のほのかに匂う庭に出て月に地球の影を見ており 林田幸子
(新井蜜)]]>
「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29102820/
2022-02-26T22:21:33+09:00
2022-02-26T22:22:07+09:00
2022-02-26T22:22:07+09:00
trentonrowley
十首選
地理院の地図にはあらぬ柘榴町、飴細工の鳥が屋台にならぶ 澤端節子
辞めどきは今じゃないのかデフォルトのA定食に豚汁を足す 佐藤涼子
ずり落ちた鞄を肩にかけ直す 出生地から徒歩四十年 上澄 眠
月を待つわずかな時に現われる藍色の空に梯子がほしい 加藤 紀
こんもりと大根の葉がそよぎいて呼ばるるごとく間引きをなせり 新谷洋子
文庫本六冊抱え友人に手渡すまでの重み楽しむ ダンバー悦子
この春に里子に出した子のやうにあげしカトレアそつと見に行く 中林祥江
あと幾年この家に住むのと何気なく言はれし言葉があとに残りぬ 林 雍子
このものも地球の一部であるけれど漁港の内に寄せ来る軽石 古堅喜代子
谷ひとつ隔てし校舎に子ら唄ふ「もみじ」聞きたり畑に鍬立て 山下太吉
(新井蜜)]]>
「塔」二月号 小林幸子選歌欄 好きな歌十首
http://trenton.exblog.jp/29099735/
2022-02-23T22:47:28+09:00
2022-02-23T22:48:08+09:00
2022-02-23T22:48:08+09:00
trentonrowley
十首選
治療せぬ選択もあると夕方のあかるい時間のこゑで告げ来つ 小林真代
すわりこむ妻のもとよりばたばたと駆けくるものををのこといへり 西之原一貴
耕運機動くところに餌がある鷺はとつくに学びたるらし 入部英明
みつみつと蕊をたたせて山茶花の口唇(くち)ひらきたり自粛ゆるびて 大河原陽子
ガラス器をうかべて秋の水冷ゆる不意に毀したくなるなにかを 澄田広枝
あわてるな無理するなとこの日頃われへの言葉命令形にて 相馬好子
テーブルのおもてのひかりへ肱をつく迷うてゐるを抜けえぬままに 千村久仁子
椅子を寄せ冷蔵庫を開け手を伸ばす敢太に出来ることひとつ増ゆ 福政ますみ
さざ波のごとき寝息を立てはじむ妻はわたしを岸に残して 加茂直樹
この地にて元気にくらしてゆけるようあびこ観音に娘と詣ず 西本照代
(新井蜜)]]>
「塔」二月号 なみの亜子選歌欄 私の好きな歌十首選
http://trenton.exblog.jp/29097443/
2022-02-21T22:38:48+09:00
2022-02-21T22:39:23+09:00
2022-02-21T22:39:23+09:00
trentonrowley
十首選
悲しみを遠ざけるとき夕暮れていく空がある私の中に 川上まなみ
綾瀬スマートインターは今日も渋滞 われはラジオで聴くのみなれど 相原かろ
オンラインミーティング終はりと告げたるにわれの切るまで手を振る子どもら 大木恵理子
音のなき真昼の野辺に蝶が飛ぶここは誰かの夢の入り口 乙部真実
難しい漢字を読むとき「ぬらりひょん」と心で唱え次の歌読む 北山順子
紫のダリアの鉢の見えをりて今日は雨戸の開かるる家 首藤よしえ
一杯の自分のための茶を淹れる青い椿の花咲く急須に 髙畑かづ子
前髪のわずかなカーヴがこの朝の大事のようなり女子高生は 福西直美
母の里の苗字をもてる神社にて無理をしてでも登る石段 穂積みづほ
霜月に入りて今年も柿吊るす蜂屋五十個風わたる軒 千葉なおみ
(新井蜜)]]>
「塔」一月号 山下泉選歌欄 十首選
http://trenton.exblog.jp/29070455/
2022-01-26T22:18:52+09:00
2022-01-26T22:19:20+09:00
2022-01-26T22:19:20+09:00
trentonrowley
十首選
アーケード抜ければロングカーディガンに木の葉降りたりそのまま歩く 田宮智美
日の落ちて音無き街を歩きたり金木犀の香りに従きて 江原幹子
知らぬ間に降りて止みたり陽を浴びて水が乾いていく匂いする 乙部真実
飯を炊く時には歌へと母言ひき笑はぬわれを危惧してゐしか 上大迫チエ
手足伸べ朝の水に浮く亀の弛緩羨しみ岸辺にをりぬ 首藤よしえ
葉桜の並木道には木漏れ日が水の微笑のやうに漏れ来る 千名民時
五合目の小笹を刈りて道つくる人の残せるりんどうの花 三谷弘子
すすみゆく秋に心を添はすれば肩を張らずにすむかも知れぬ 本嶋美代子
限りなくひくき声にてわたくしは呼ばれてをりぬどこか遠くで 毛利さち子
抗体ができなささうなかほの人に不親切にされてゐる真昼間 西村玲美
(新井蜜)]]>
「塔」一月号 小林信也選歌欄 十首選
http://trenton.exblog.jp/29069329/
2022-01-25T22:15:35+09:00
2022-01-25T22:16:37+09:00
2022-01-25T22:16:37+09:00
trentonrowley
十首選
ラジオから中入り告ぐる柝(き)の音す山の我が家も夕暮れてゆく 髙野 岬
想ひ出はゆつくりと巻くふるさとの海辺を姉と歩いた日傘 立川目陽子
中古車の査定のような面接を脚を組みたるひとに受けおり 矢澤麻子
出かけ際の母が逆さに靴を持ち確かめており蟹はおらぬと 浅野美紗子
色褪せし歌集を繰れば吾亦紅野にあるような淋しさのあり 数又みはる
鍋一面浮かぶ団子にわれ知らず微笑んでいるひとときのある 永田聖子
コンバインに替わってきても稲刈りの匂いは同じその傍を行く 向山文昭
言ひたきことありさうな顔のこすまま娘はひと夜泊つて帰る 柳田主於美
翼にはなれないスカート汚れてて少女は羽ばたくことができない 山梨寿子
昼月はさみしいのだと言う人の昼月に似る病める横顔 黒沢 梓
(新井蜜)]]>
「塔」一月号 真中朋久選歌欄 十首選
http://trenton.exblog.jp/29068280/
2022-01-24T22:24:34+09:00
2022-01-24T22:25:43+09:00
2022-01-24T22:25:43+09:00
trentonrowley
十首選
カーテンの隙間にもれる朝の陽がポインターのごとカレンダー指しぬ 黒木浩子
すりガラスの向かうの外のほの白く月の兎の遊びゐるころ 石原安藝子
ゆっくりと薬が溶けてゆくように母は最初に私を忘れた 石井久美子
キッチンの小窓に飾りしガラス瓶蜂蜜いろの夕陽溜めおり 岩﨑雅子
午後からは雨の予報に九月尽の残れる稲を刈るコンバイン 加藤和子
肩怒(いか)るピーマン割れば鳴るごとく緑(あお)き香の立ち手の止まりたり し ん 子
夕顔のまろきを割りて炊く夕べかがやきおらむみちのくの野は 谷口公一
風おちて温き陽射しの日にあればすこし気張りて遠まはりする 千葉なおみ
まなかいに山見え小さき川流れ海近くありきわれのふるさと 濵﨑藍子
もうすでに私はどこかのおばちゃんで時々一緒にご飯を食べる 龍田裕子
(新井蜜)]]>
「塔」十一月号 月集 十首選
http://trenton.exblog.jp/28966270/
2021-11-17T22:01:55+09:00
2021-11-17T22:02:48+09:00
2021-11-17T22:02:48+09:00
trentonrowley
十首選
嵌め殺しの窓のあかるし階段の下に仰げば月がでてをり 杉本潤子
夕ぐれの渡り廊下に少年は声を投げたり少女のわれに 谷口純子
華やかな花をあなたに見てほしい抱きてゆくに香に立ちくらむ 土肥朋子
区切られし唾液採取のブースの中、梅干し・レモンの写真貼らるる 西川啓子
ここにゐるよここにゐるよといふふうに雑草(あらくさ)の中に咲くナツズイセン 久岡貴子
うすべにの浜昼顔よはるけくも海に逝きにし人ら思いぬ 本間温子
午(ひる)すぎてしまし陽の射す井戸の辺に実生のびはの濃きみどり伸ぶ 溝川清久
飛び立てり友は夏の夜飛び立てりさよなら言はず次の空へと 村田弘子
あなただって経験しないで終るでしょ密の塊りみたいな密会 村松建彦
誰もみな視線を落として無言なり濁った川をわたるときにも 山西直子
(新井蜜)]]>
「塔」十一月号 若葉集(小林信也選) 十首選
http://trenton.exblog.jp/28963583/
2021-11-15T22:13:10+09:00
2021-11-15T22:13:42+09:00
2021-11-15T22:13:42+09:00
trentonrowley
十首選
ふるさとの夜風の匂ひなつかしく遠き花火をひとり見てゐる 小平厚子
私から羽ばたくものはまだあるとしずかに振るう透明の傘 中込有美
会うこともできないのだしと母は云う踏切でじっと夏を見ている 佐竹 栞
停電で誰もが窓を開けていてしきりに天の川を見ている 板倉光助
鴨川を眺めるカモの横にいて うん、そうだよな。そうなんだよな。 後藤英治
ぐははんと前転決めし鉄棒に父失踪のかの夏は来る 小林純子
長髪のリボンの似合う子がくれた泣き虫子犬夜明けに逃げた 田山光起
伸びきったメジャーの余白 届かないところにばかり本心がある 長井めも
蝉の声が消えゆき去れば耳鳴りの音やかましくよみがへり来ぬ 松本ひろし
図書館に行くとだいたいあの席にいるおじいさんお元気ですか 西村鴻一
(新井蜜)]]>
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