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暗黒星雲

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カテゴリ:十首選( 228 )


2019年 05月 19日

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選


雪の原につつ立つてああ何だらう髪の先からこほりてゆける  國森久美子


せせらぎにしんと向かへる幼子を促さむとしてしばらくを待つ  竹下文子


先生も患者も並ぶ院内のたった一つのファミリーマート  石井久美子


節分に鬼は外へとはじかれる少しはじかれたくもある夜  三谷弘子


五十歩にて渡れば京都 この橋の下からきふに川は曲れり  山口泰子


思ひ出すことあるやうな瞬きす睫毛のびたるみどりご抱けば  大河原陽子


タンポポにハルノノゲシ・オニタビラコ蜂起のごとく二月の野辺に  古堅喜代子


雪しげき日にもお参りできるよう道に沿いつつ墓石ならぶ  澤端節子


いくたびも遺影に向かふ雪の日は雪の声聴くむかしむかしの  祐德美惠子


冴え渡る冬の星座のはろばろと母たりし人還りゆきたる  祐德美惠子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-19 22:10 | 十首選 | Comments(0)
2019年 05月 19日

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選


窓ふたつぬけて午睡のほとりへとユーロビートのささなみ寄せて  中田明子


たそがれの改札口を来る来る来るどのスカートもあなたではない  拝田啓佑


雲のない冬の夜空の月近くここからまっすぐに行けそうだ  逢坂みずき


ミニシアターへ初めて向かう時横に無口なままずっと居てくれし人  姉崎雅子


つつがなく一人で過す節分の豆を數えて邪気払いする  川上とよ


老母(はは)逝きて独りとなりし弟に見送られ待つ海辺のバス停  中村美優


銀色の電車とろとろ曲がりつつ樹立ちの中に吸はれてゆきぬ  丸山順司


音符さえ今や五線符飛び出して窓をこじ開け駆けゆく春は  みずおち 豊


結婚を告げるメールの旧姓の君の名前の花に触れたり  大橋春人


ふくろうの磁石でポンと留めておく春の集いの案内状を  浅野次子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-19 15:49 | 十首選 | Comments(0)
2019年 05月 18日

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選


救済を待つ人のごと寒き夜に乗るべきじゃないバスを見送る  笹嶋侑斗


ふるさとはだんだん縮んでいくようだ駅前通りを三歩で渡る  田島千代


暖かく晴れたる今日が立春と薬袋を桃色に替え  宮野奈津子


ほう今は夜かと驚く老父がいてそうだよと答える私がいて  成瀬真澄


ねえきみをあきらめたいよ壊れずに、檸檬で濡らした花が枯れゆく  梅津かなで


三十年ぶりの便りを長い長いメールで送る半日かけて  縣 敦子


朝練としてあかときのひとときを花山多佳子の歌集読みをり  足立信之


ここ掘れと鳴く犬をらずぽつねんと老農ひとり立ち盡くすのみ  石川休塵


夕暮れに迎えに行けば別人のにおいまといて積み木積みたり  大和田ももこ


春立つ日雪舞う店にさくらもち薄紅色に光りて置かる  桂 直子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-18 11:29 | 十首選 | Comments(0)
2019年 05月 17日

「塔」五月号 小林信也選歌欄 十首選

「塔」五月号 小林信也選歌欄 十首選


ゆらゆらとほどいたままのリボン持ちこれはいるかと夫が言いたり  山内頌子


月あかりしんとして歌に知るのみの死者たちに花が樹が雨がにほふ  小林真代


生まれたての闇に真向かひ降りる駅もう少しだけいつしよにゐよう  田中律子


水色とピンクの帽子が沈み込み歓声のみが聞こえる芋畑  林 泉


いつまでもふくれてないで珈琲の甘き香りのするうちに来よ  大島りえ子


「まだお飲みになるんですか」フネさんの敬語を気にも留めざりし頃  佐原亜子


伊達めがね集めてるんです掛け替へていやなけしきを忘れるために  穂積みづほ


やはり誰も呼ばないでおく明け方の銀箔の月ひっそり笑まう  吉田淳美


高校生だった僕が見たマハは人ごみの向こうで小さくなってた  松塚みぎわ


路地裏の日だまりに猫は寝そべりてそば行く我に眼だけ動かす  丸山隆子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-17 17:21 | 十首選 | Comments(0)
2019年 05月 16日

「塔」五月号 山下泉選歌欄 十首選

「塔」五月号 山下泉選歌欄 十首選


バス停へつながる裏道初めての道歩きつつわくわくとせり  上大迫チエ


種をもつ果実の甘さしたたらせ少女ら後部座席にひしめく  黒瀬圭子


一つ二つとあなたの干柿食べながら今この人にとても会ひたい  佐近田榮懿子


身構えるくせがつきいて男の子が四五人われをよけて行きたり  須藤冨美子


やぶ椿くらく咲きゐる宮の杜このつきあたり何か住むらし  田口朝子


潮騒を島の鼓動と聞きながらきみの波打つ胸を見ている  谷口公一


選ばれし子とも思ひて待ちをれば予定の閏日さらつと過ぎき  広瀬明子


わたしらの居たふるさとは広かつた小皿に光る片口鰯  本嶋美代子


釘のようにきみに刺さったわたしなり錆びたらもっと気持ちいいのに  大森静佳


地下書庫に擦れ違ひたり要するに男とはただ一枚の背中  髙野 岬



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-16 22:15 | 十首選 | Comments(0)
2019年 05月 15日

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選



駅出れば冬の雨降るなるようになるしかないとフードを被る  黒木浩子


雪女だから朝には水になるそんな感じで忘れられたい  佐藤涼子


陽をあびて日々に痩せゆく切り干しを食めばほんのり甘味ましゐつ  千葉なおみ


帰らむと一人渡れる思川(おもひがは)妻の挽歌は歌ひたくなし  小川節三


近付かずさりとて離れずごろごろと猫喉鳴らす如き遠雷  菊池秋光


キャプションに「一人おいて」ととばされし男は写真に正面を向く  西郷英治


冬の夜は何かが哭くと妻が言う(水無し河原の鳴き石ですよ)  中山大三


最終のバスならとうに見送った水色の椅子つめたく眠る  吉岡昌俊


渡り止め棲みついてゐるといふ鶴を探して歩く出雲の土手を  越智ひとみ


スマートフォンが冷蔵庫より出て来たりスマートフォンは冷やすのがよし  永山凌平




(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-05-15 15:27 | 十首選 | Comments(0)
2019年 04月 11日

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選


うりぼうの縞のうすれるころだろう十二歳となる亥年の息子  沼尻つた子


亡くなりし人と散歩の道で会うような青空冬の青空  向山文昭


処方箋わたす事務員金銀に爪よそほへりわが為ならじ  篠野 京


抱かれしこともありたるその胸を抱きて朝のベッドに起こす  数又みはる


今年こそことしこそはと反復し左の足から階段降りる  岡山あずみ


三井寺に友のつきたる鐘の音まだ鳴りてゐるわれのどこかに  坂 楓


海べりを子の住むまちへ向かひをり母といふ字は舟に似てゐる  藤木直子


波うすくよせるに烏かはるがはる降り立ちて触れまた飛び立てり  穂積みづほ


奉納の土付き大根ふともものごときを転がしごしごし洗う  西本照代


花れんこん作り待ちたき夜がありあなたの部屋に揺り椅子を置く  田中律子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-04-11 20:37 | 十首選 | Comments(0)
2019年 04月 06日

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選


山と海のある町なれば道はどこも傾斜してゆく海へ向って  森川たみ子


下戸ひとり置きざりにしてたちまちにめぐりの人等狂いはじめつ  坂下俊郎


ひと群が休耕田の冬枯れを急にとびたつ霧深き朝  岩尾美加子


何もせず過ごす日もよしきんいろの砂がしずかに作る円錐  魚谷真梨子


おそ秋の絵葉書五枚えらびたり歌会に会へぬ人思ひつつ  石丸よしえ


アレッポの戦禍くぐりし石鹸の泡立つちからわが顔つつむ  伊藤京子


さきにいったひとをきれいな魚にして東の空に茜いろの雲  岡村圭子


父の傘黒く重たく 会いたくない時でも父と会わなければならず  川上まなみ


雨の降る電車の中に外ばかり見つめて居たり父逝きしのち  児嶋きよみ


日が経てば徐じょに痛さは消えるはず 夜更けに熱きココアを飲みぬ  中野敦子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-04-06 22:40 | 十首選 | Comments(0)
2019年 03月 05日

「塔」二月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」二月号 真中朋久選歌欄 十首選


帳じりを合わせるために僕たちは落ちてる斧を拾ったりする  片山楓子


海へ行くしかない水のこの流れ。流れが集まる川を見ている  荻原 伸


歩き出せば時間も動く日当たりの良さげな斜面にみかん鈴なり  穂積みづほ


「頑張ってくるわ」とさっと手をあげて行きたる娘勝って戻りぬ  荒井直子


退会者の短かき手紙読み終えて輪切りのレモンほどのさみしさ  黒沢 梓


鍵穴を思ひ出せない鍵ばかり増えてつめたい冬が来ますね  澄田広枝


満月の前後は身体を休めよと月が笑いぬ階段走れば  ダンバー悦子


水底(みなそこ)を流るるように鳥の影ひとつ舗道をよぎりゆきたり  永田聖子


なにひとついのちは見えず乳いろにゆるく流れる霜月の川  野島光世


木犀のかおり従きくるトンネルを傘さしたまま通り抜けたり  山下裕美



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-03-05 17:08 | 十首選 | Comments(0)
2019年 03月 01日

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選


土蜘蛛と呼ばれし民の裔にして薄い醤油に馴染めずにいる  関野裕之


脱皮したような気がするさし入れた封筒が手を離れるたびに  上澄 眠


みづからの暗さに昏れる湖に石を拾へば陽の温みあり  清水弘子


二拍子を揺れるブランコ話し合いなんて家族はふつうしないよ  朝井さとる


若さとは浮力であつたかもしれず重たき我はスキップしたり  北神照美


花舖のまた閉ぢてしまへり公園のかりん一顆を拾ひてかへる  杉本潤子


煙草吸いつつその幼子に話しいる女あり夕べの梅田の街かど  橋本英憲


左耳の耳垢ことんと剥がれたり突然の知らせあるがごとくに  柳田主於美


砂糖菓子のような家族かもしれぬくずれぬように言葉を選ぶ  ほうり真子


向きあつてニシン蕎麦食ぶだし汁を残らず啜るうたびとのきみ  藤木直子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-03-01 17:27 | 十首選 | Comments(0)