暗黒星雲

trenton.exblog.jp
ブログトップ

<   2017年 12月 ( 14 )   > この月の画像一覧


2017年 12月 25日

「塔」十二月号 月集 十首選

「塔」十二月号 月集 十首選


釣れたよと鮎をもらいぬ家族ぶん家族(うち)は二匹と言いてもらいぬ  池本一郎


目陰(まかげ)して白橿の木を見あぐれば山鳩の雛のかほふたつ見ゆ  小林幸子


照明のもとにきらめくひざがしらばかり見ていた君の目は見ず  山下 洋


男ひとり重たい水になりながら坂のぼりくるひとを待ちいる  江戸 雪


みずからの死を知ることのないままに死にたる蟬か脚をちぢめて  松村正直


茜さす夕風に搖るるすすきの穂恋しき人のかくるる気配  青井せつ子


オレはお前の使用人ではないといふあなたの言葉はそのまま返す  岩野伸子


うかららの在りたるときを故もなく思はす夏の大夕焼に会ふ  尾形 貢


「願わくば桜の下で」とは書かず「最后はどこで」の項に記入す  酒井万奈


音たてて出てゆくやすぐドア開けて君の指図はうけないと言う  本間温子



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-25 22:56 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 24日

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選


友人と撃ち合うようにお互いの写真を撮りて旅を終えたり  北辻千展


入江口とうバス停前の診療所むかしは貨車も裏に停まりぬ  橋本恵美


トイレットに薄皮まんじゆう忘れ来て財布に残る柏屋のレシート  立川目陽子


サーズデイ軽い感じで言ってみる木曜きみが町を出てゆく  芦田美香


はつなつの光うせゆく野に立ちてゆふがたねとをさなは言へり  河﨑香南子


ほほゑみがほほゑみのままに拒絶なり夜勤明けの男微笑む  久保茂樹


死に方を調べたことがありますか。産業医が問ふ死にたしとふに  白石瑞紀


黄ばみたるお札の記憶 ちろちろと竃の火影うつせる壁に  竹下文子


もう誰も喜ばさない一品と思えどリンゴをうさぎ型に切る  永田聖子


先生、大好きと言つてくれたから私は姑の先生になる  広瀬明子



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-24 21:58 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 23日

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選


燃え落つる城を思ひて泣くこともあらず城下町けふは晴れをり  小林真代


亡き人の望みしといふ曲ながれ月の砂漠をラクダはすすむ  田口朝子


遅番の夜の暗さは好きでなく自転車に反射板をつけゆく  山内頌子


いかがですかドクター達が覗き込む博物標本みてゐるやうに  國森久美子


月のひかり白く扉に射してゐる魚のかたちの木目閉ぢ込め  清水弘子


桃のような頰した女医の初々し同性なれど手触れてみたし  新田由美子


砂浜で強がり言う子はしっかりと吾の手を握り波際に立つ  ほうり真子


おひめさまお姉さまと呼び合いて三歳と古希のままごと続く  新谷洋子


泣きながらハンドルを切る助手席に黙したままのカボチャをのせて  澄田広枝


おとひとへ脱脂粉乳持ち帰り飲ませし日からずうつと弟  上大迫チエ



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-23 20:39 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 21日

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選


数日の留守のあひだに積もりたる時間のやうな埃のやうな  岡部かずみ


もしノラが迷っていたら『人形の家』出ようよと歌会に誘う  真間梅子


透きとほる繭だつたのにジュニア用ブラジャーの線背中に見ゆる  山下好美


ついてくる月とおんなじ原理でしょうわたしが泣くと海鳴りがする  白水裕子


桜島見下ろす丘のマンションでシチュー煮るわれはあまみのおんな  伊地知樹里


つぶやきシローが出ているから1チャンネルを見よという母こっちは4だよ  加瀬はる


スリッパとスプレーのあひだ掻い潜り甲冑のごきぶり闇夜を走る  庄野美千代


人生はうどんの上のかまぼこのようだと君は唐突に言う  谷 活恵


くるくると日傘を回し行く友のブルーのスカート角より消ゆる  佐々木美由喜


胸中に封印された剣があるもも色をして脈打っている  石川泊子



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-21 17:03 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 20日

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選


「約束ね」看護師に向かい笑む母も二十年前は看護婦でした  北山順子


口の中いろんな形のめんどくさいをもごもごさせた結果の「りょうかい」  内海誠二


王様の耳はロバの耳みたいに歌を詠んだらどこに埋めよう  鞠古 綾


死にたるを知らず目瞑りいる君よ「二時二分です」声がして去る  みぎて左手


透ける傘ひらきて母に渡したし送り火の日の雨の夕暮れ  久川康子


ズボンともスラックスとも言えなくてパンツ売り場がどことも聞けず  田巻幸生


私にも月がきれいと言ふ人が居ります今宵は半月なれど  向井ゆき子


あまやかな水をたたえて胸しずかふたつの梨が食卓にあり  福西直美


わだかまる思いをながくひきずりぬ粗粗と切る茄子のむらさき  三上糸志


鞄屋の革のかおりをふとすぎていちょうの坂の先までくだる  横田竜巳



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-20 20:22 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 19日

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選


心臓に穴見つかりし友達が「どうりでいつもさびしい」と言う  逢坂みずき


ひとしづく真白き乳の零れたり朝餉の皿に無花果割れば  西山千鶴子


バカンスに旅立ったきり帰らない肉屋のおじいさんとおばあさん  鈴木晴香


むつごとに満たぬなにかを交わす夜 ねむりも恋も落ちるものだわ  海老茶ちよ子


たいおんが私にはある 脱ぎをへてシャツを木製の肩にかへしぬ  小田桐 夕


ハイヒールのモデルの様(さま)に戛(かつ)々とカラスが早朝屋根歩きをり  金田和子


還りたい みずが流れてかぜが湧くりんごつばきの実の落ちる岸  山尾春美


わだかまり抱えたるまま何足も靴を洗えり夏の終わりに  杉原諒美


電卓はなんだか怪しとそろばんをそそと弾いて釣銭くれる  竹内真実子


夏の陽に焼き忘れたる足裏を晒して寝ころぶ常夏の浜に  白波瀬弘子




(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-19 19:37 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 19日

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選


君のゐぬ家にも夏は過ぎてゆきツクツクボウシ裏庭に鳴く  竹尾由美子


思ふより風はとほくへ吹き抜けて川には川の性別がある  石松 佳


夏だけの目印のように木槿咲き路地をまがれば海へと続く  黒木浩子


夏蜜柑ふたつを下げてやってきたあなたの髪の明るさが好き  多田なの


子どもらの「ミサイルハッシャ」遊ぶ声もうすぐ夏の終わりの頃に  川並二三子


秋の夜のふうりんのおと鳴りやまず白き帆影を追うゆめをみる  田村龍平


ストレスがたまると口にいれる飴の砕かれる音がオフィスに響く  双板 葉


故郷尾張へ帰りたがりし父なれど大東市と記す除籍謄本  内藤幸雄


りんごより梨が好きだなざらざらとほおばるときに気持ちがよくて  安田 茜


横抱きに運びこまれしマネキンが女になりぬファーを巻かれて  森永絹子



(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-19 10:35 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 17日

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選


生きて帰ると言いし叔母 鼻に管をつけ小さな小さな歩幅で戻り来  鈴木 緑


さみしいか すこうし淋みしい海の町いつも鷗は逆さまに飛ぶ  中山大三


ダ・ビンチとミケランジェロの素描展数ある裸体は若者ばかり  廣瀬美穂


脚立の上に子が向日葵を覗きいし今年の夏の終わりゆくなり  矢澤麻子


ああこんなに遠くまで来たふりむかず生きて行かんと決めたのだけど  大田眞澄


荒れし庭みるたび寂しつき合ひの淡き隣家でありしといへど  櫻井ふさ


嫁入りの荷の一つなりし洗濯板割れたるを燃す炎小さし  清水千登世


不意に来る葛の匂いが引寄せる清算できぬ過去の不始末を  田中美樹


「塔」といふは曹洞宗かと問はれをり大会終へて巡るツアーに  丸山順司


父は児の児は父の浮子見つめをり向かう岸より稲の香の来る  加藤 宙




(新井蜜)


[PR]

by trentonrowley | 2017-12-17 16:21 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 16日

「塔」十二月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」十二月号 真中朋久選歌欄 十首選

少しだけ後ろを振り返りたくなる笑ってる人とすれちがうとき  川上まなみ

タロイモのタルト、ヤムイモの飲茶 三時過ぎても来ない小包  有櫛由之

二十三時間五十五分の出来事を語れば五分お茶をひとくち  三谷弘子

曜日にも人格のあれば水曜か木曜あたりと気が合うだろう  魚谷真梨子

<恥>を知らぬ<あの人>の前で麦わら帽のわれはトマトを投げつけてゐたり  河村壽仁

コーヒーは正しく置かれ夏の朝背筋を伸ばし黒き面を見る  深井克彦

ひざの上に深々とリュック抱きしめて少女は朝の電車に眠る  垣野俊一郎

佳き月といく度も見上げおりたるに雨が降り出す音立て夜半を  高木節子

紐引きてひとりの部屋を灯したりカップの麺に湯をそそぐ音  永久保英敏

たぶん意味わかってないけどうなづいている頬を何度か撫でる髪  北虎叡人


(新井蜜)
[PR]

by trentonrowley | 2017-12-16 20:30 | 十首選 | Comments(0)
2017年 12月 15日

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選

受話器とれど回す番号あてもなく東京の月は白々と冴ゆ  加茂直樹

海賊がでてくるような集落に嫁いできたと思いし日あり  小谷栄子

むつかしき話あるらし道の辺に向き合う日傘離れては寄る  相本絢子

昔から雨の降る日が好きだった赦されているようでとあなたは  大出孝子

あのひとの失くした部分にちょうどいいオシロイバナのたねをください  小川ちとせ

そのほかはあとにまわして大根の種をまく日を赤丸でかこむ  高原さやか

この港を出でて帰らぬ父なりきずっと待ちおり七十二年を  西田美智子

白くおほき彫像がそらにうかんでてその下らへんが私のゆくさき  穂積みづほ

変はらぬはさびしきものか変れるはなほなほさびし母在りし町  丸山真理子

子に添ひて畳に伏せばその額はなだらかに丘なしてをりたり  益田克行


(新井蜜)
[PR]

by trentonrowley | 2017-12-15 20:36 | 十首選 | Comments(0)