暗黒星雲

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2018年 02月 23日

「塔」二月号 月集 十首選

「塔」二月号 月集 十首選


夕ぐれの光に翳を深くする雪の比叡を見つつ帰らな  永田和宏


逢ひかたを考へてくれるひとのため時間をつくり逢ひにゆかむとす  真中朋久


冬霧のように過ぎたり会ってから頰にふれくるまでの時間は  江戸 雪


熟したる柿の実ほたりと落ちて来ぬ友よりの便り絶えて久しき  青井せつ子


我もまた独りとおもひゐるときにバックしますとトラックの声  岩野伸子


黄の光戸の隙間より届き来て呼ばれゐるかと月を見に出る  亀谷たま江


聖岳まぢかき里の勾配を昇りてゆけり秋の黄蝶は  酒井久美子


ゆらゆらと川沿いの道をあゆみくる橋のあたりで手をふりながら  竹田千寿


山を背に二十戸ばかりなる里に住みたしと言ふ雪を知らねば  干田智子


胎内のやうなくらやみ潜りゆく虚見都(そらみつ)奈良へ近づきながら  万造寺ようこ



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-23 22:11 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 23日

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」二月号 永田和宏選歌欄 十首選


舟が水を分けるみたいに滑らかに前へ進んでアタック決まる  荒井直子


鋪道(しきみち)の冷ゆる夕べを自転車の籠かたぶきぬ塩の重さに  清水弘子


四角い校舎のドアを出ずれば学校は夜に漕ぎ出す船のようなり  芦田美香


常光寺と墨書ありたり傾きし陽を背に受けて路地を曲れば  上﨑智旦


多分少し正確でない言葉だと秋の空耳を繰り返して我は  小川和恵


一両の青い列車が走りゆく遠く枯野を切りさきながら  数又みはる


公園のベンチに黒く小さき背 しばし見つめて我が母と知る  佐原亜子


夜ふかく夢のさなかと思ふまでおほき純白の花ひらきゆく  友田勝美


墓石は手を灼く熱さ     暑さに弱き母のねむれる  仙田篤子


父の焚く送り火を背に母がゆく振り向くことの無き闇の道  仙田篤子




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-23 16:32 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 22日

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選


聞きながら乾いてゆけりくちびるは湿らせながら次をうながす  岡本幸緒


山靴にほど良く泥の付きし日にチーズケーキと珈琲を待つ  江種泰榮


仕舞湯の鎖を引けば悲しみはゴウと声たてうづ巻き流る  黒瀬圭子


ひたまりのなかに覚めたり鉛筆の落ちて転がる澄んだひびきに  佐藤陽介


子どもらは禿びたゑんぴつがなぜか好き筆箱の中てんでにありぬ  山地あい子


エスカレーターですれちがひたるをさな児の眼に間に合はざる我のほほゑみ  立川目陽子


夕ぐれのかばんにつぷつぷ揺れているペットボトルに残りし水が  永田聖子


渇水の歴史をもてる満濃町 火除けのお守り家家に見ゆ  橋本成子


本題を言い出すたびにうやむやとなり改札で娘と別れたり  三浦こうこ


箪笥あり帯揚げ伊達衿あらわれて蟹色を夢のわれは手に取る  朝井さとる



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-22 20:14 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 21日

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選


その先に海はあるはず右へゆく道のかなたを一瞬思う  吉原 真


くちなしは罪のかをりすたそがれて歩みおそしと父を待ちをり  栗栖優子


何かしら通知が来るたび光ってはまた暗くなるスマホを見てる  佐原八重


喪失感グレーに引きずる日々にしてイヤリング 一つ何処にか落とす  才田良子


一本にあかみどりきの入り混じり性徴期の恥じらいのごときポプラ  渋谷めぐみ


眼裏に小さな鼠住みおれば潰さぬようにそっと目を閉ず  泉乃 明


前をゆく夫婦の距離が開きゆくことの気になるウォーキング大会  森尾みづな


生き抜いたつもりになって空き缶をぐしゃりと潰すきれいな足で  とわさき芽ぐみ


ここからは雪原ねってぺたんこのお腹へ乗せてくるプラレール  はたえり


シェービングクリームに軍用はなく 髭剃りの刃を替える明け方  太代祐一



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-21 22:27 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 21日

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選


その文目あざやかなこと黒々と眼はかがやけり墜ちた啄木鳥  吉岡みれい


尖りある酸味の赤がくちびるを濡らす夜です月は見えない  高松紗都子


名を呼べど帰り来るはずなきものを日暮れになればやはり名を呼ぶ  木戸洋子


天井を見ている僕は天井を抱きしめたいと思いはじめた  中村寛之


廊下にて会ひたる君のへなへなのしやべり方にも励まされたり  永山凌平


敗けました素直に認め一刻も早くこの場を去りて行きたし  服部知子


あらくさを跳ねるショウリョウバッタをり「ほら」と指差す子もなく我は  向井和子


逆様に稲架の稲穂はうちそろいSKDの跳ね上げた脚  山下幸一


その着物好きかと友に問はれけりうれしさうだと笑はれにけり  潔 ゆみこ


簡単な字のまちがいを眺めつつありえねえとなむつぶやきにける  長尾 宏




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-21 16:48 | 十首選 | Comments(1)
2018年 02月 20日

「塔」二月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」二月号 前田康子選歌欄 十首選


思ひ出を降りこぼすやうに落ちてゐる老健施設の庭に椎の実  澤井潤子


柿包む山形新聞、柿よりも嬉しと眺むひねもす義母は  今井由美子


また違うひとになりゆく 傍らでマタニティーヨガに瞑目する吾娘  岡村圭子


三ヵ月ぶりに髪を切りわれと子と互みにかはいいねつてほほゑむ  岡本伸香


田仕舞ひのけむりは丘をなだめゐて野のひとかげの土にとけゆく  熊澤哲哉


スズムシの声はあちらにないだらうと言ひてわが子は荷を作りをり  古関すま子


君の手に一度も触れたことがない他の男に触れて気づきぬ  田中典子


眩しすぎる同級生の中にいて饒舌すぎた自分が悲しい  田巻幸生


貼り紙の捜されているインコの名すっかり覚えてしまってせつない  萩原璋子


帰り来てアウェイのようだと宣えりいつもの椅子にゆったり掛けて  廣瀬美穂




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-20 11:26 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 19日

「塔」二月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」二月号 山下洋選歌欄 十首選


我が歩みにひったり従(つ)きて来る影の背なの丸みに見覚えのあり  相馬好子


血流に乗って思考も巡り出すジムの帰りは少し賢い  丘村奈央子


検査から検査の夫を待つときの地にはねかえる雨を見ている  藤田幸子


雨の日の傘を差さずに改札の前に立つペコちゃんの憂鬱  杉田菜穂


我が庭の藤袴の花訪れし蝶が韃靼海峡を行く  戸田明美


地軸傾ぐ音して冬に入る日に林檎剥く妻 地球はまはる  加藤 宙


道端にニッカーボッカーの二人坐しタバコのひとりスマホのひとり  安永 明


たばこ屋の角を曲がればその先の角にもやぱりたばこ屋がある  かがみゆみ


一本違ふ道をたどつたはずなのになぜかまたこの角に出てくる  加茂直樹


あの時は泣けばよかつたかもしれぬ金木犀は花零すのみ  祐德美惠子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-19 22:12 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 19日

「塔」二月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」二月号 三井修選歌欄 十首選


記念日と呼ぶほどじゃないけど大事 はじめて君のあくびを見た日  小松 岬


<ハロウィン>はアイルランドが起源とかそこここに見る南瓜赤顔  水谷英子


一日の終わりに拾った砂時計上下に激しくゆさぶってみる  北野中子


いくつかの名前を持って呼ばれればその名のわたしとして振り返る  柴野 春


あやまりに出かけるためのクッキーのあかきつつみは雨にふやける  高橋武司


被虐はなほ快きかな 歯をたててをさなごの噛むわれのきりぎし  東 勝臣


お気に入りのイヤリングはいつも壊れデジタル時計は暴力的だ  穂積みづほ


じれて待つゴム手袋がうずたかきモンブラン一個箱に収むを  宮城公子


音もなく海峡かくし降る雨をツアーのバスのうしろに眺む  菊井直子


男の子とう兆しは見つけられぬままエコー写真に育ちゆく孫  山下美和子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-19 14:43 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 18日

「塔」二月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」二月号 栗木京子選歌欄 十首選


原宿のあたりにひとりはゐるやうな髪結ひてゐる制吒迦童子  久川康子


鳩のいる水道で子のひざの血を洗い流せば陽があたたかい  吉田 典


黒山羊を眠りの中に引き連れてわたしの服は月にぬれてる  希屋の浦


絵葉書の美しきを抜きとって憲兵大尉は胸を病んでいる  岡崎五郎


アララトの山すそ占むる麦畑にクルドの人とこうのとり住む  倉成悦子


ブーケ買う夢を今朝方見しことを花屋の前で思い起こせり  深井克彦


野良猫の喉をなでいる叔父の手は三年前まで麻を抜いてた  ジャッシーいく子


魚のごと冷たく生きる誰一人好きではないと言ひ張りながら  逢坂みずき


けふのことはけふのことだよ 柑橘のひとかけみづのなかに華やぐ  小田桐 夕


五歳児のほんとの話はくるくると神話のごとき転調があり  竹田伊波礼



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-18 15:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 02月 17日

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 十首選


どこからかくしゃみする音聞こえくる火曜の昼のジュンク堂書店  和田かな子


しろたえのブラウスならば晴れやかな顔となるらしレフ板のごと  秋野道子


街角のイチョウはくまなく色づいてまたひとり会社を去って行くらし  魚谷真梨子


夜勤あけの看護師さんが帰つてゆく皇帝ダリヤをちらと見上げて  北島邦夫


寂しさは切羽詰まって革命となることなけむ鵯啼けり  篠原廣己


ガードライン白くくっきり引きなおす私は弱くなんてないから  前原美登里


紅さへもささず素顔のままの友 新月のやうにふふふと笑ふ  三浦智江子


茶話会で「概念」などと口にして白けた感じ 茶を足してみる  与儀典子


告げざりし医師はかなしも医師にして告げられざりし父はかなしも  高橋道子


二組の長靴の跡ときに寄りときに離れて秋を耕す  竹内真実子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-02-17 22:29 | 十首選 | Comments(0)