暗黒星雲

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2018年 03月 28日

「塔」三月号 月集 十首選

「塔」三月号 月集 十首選


活(い)け了へて花切鋏拭ふとき遠き嘆きの声よみがへる  栗木京子


膜が張るごとく動かぬ池の面のところどころに嵌まる赤き葉  松村正直


小春日のあまねき中の各駅停車隣の少女は眠りはじめぬ  角田恒子


何をするといふこともなく冬晴れの外には鵙の高鳴き聞こゆ  木村輝子


姉であることの嬉しさ釣り好きの下の弟が魚下げて来る  酒井久美子


あこがれはもうあらざれどアメリカへつづく海原眺めていたり  新川克之


お弁当持ってみんなで行こう赤いもみじが陽に照るところ  進藤多紀


ながく目を閉じれば亡くせし黒犬のまっくらな瞳(め)の濡れ濡れとあり  なみの亜子


ビール飲んだわれは娘に真っ赤だよと言われるとても寒い冬の夜  花山周子


虹の脚立てる処に棲むひとのあるを思ひて堤過ぎたり  溝川清久



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-28 23:04 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 27日

「塔」三月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」三月号 花山多佳子選歌欄 十首選


鳶職の聞き覚えある若き声ひびきくるなり歩きておれば  山崎一幸


手紙とは違う紙片も入れた気がしてきてポストを振り返り見る  相原かろ


膝頭ふたつ浮かべて熱き湯に忘れそうなる死者を思えり  黒沢 梓


デスクマットに挟んだ写真つらい時書類をそっと持ち上げて見る  荒井直子


夜の壁に匍(は)う虫なぜか祖かとも「殺して」という妻に迷えり  歌川 功


「あつ、寺さん」喪中はがきを持ちしまま玄関に夫は突つ立つてゐる  山地あい子


ひとり子を育てる娘を見送りてかへり見すれば月は満ちをり  中林祥江


零余子ごはん夫に供えてしばらくを食べ終るころか下げて頂く  林 芳子


赤と青のリボンが数多太ももから生えてくる夢浅き眠りの  吉田淳美


こんなにも冷えた耳もつわたくしに息ふきかけて抱きよせるひと  田中律子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-27 16:52 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 23日

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 十首選


日本橋「砂場」にふたり蕎麦掻きをあねいもうとのやうに分けあふ  澄田広枝


夏柑の残りを煮てゐるとろとろと占ふやうにしやもじは動く  出 奈津子


何だらうぬるぬるぬると未確認ひかう物体躰をぬけゆく  國森久美子


朝あさに連嶺のごとき雲うかびもう聞こえこぬ死者の声あり  竹下文子


沖島は猫がいるから好きという子トンビのいるのがわれは好きなり  土肥朋子


アンタレス西へ西へと移りしに耳石のゆれはいまだ止まざり  中島扶美惠


窓の外かすかにずれる心地して梧桐(あおぎり)の葉のゆらり落ちくる  永田聖子


こんなにも大きいんだと見せてから湖東の空へ舞ひ上がる鳶  山口泰子


今日もまた挙動不審な我のをり防犯カメラにひとひ追はるる  黒瀬圭子


日捲りは夏のままなるふるさとの家に雪虫飛びいるころか  数又みはる



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-23 20:22 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 23日

「塔」三月号若葉集 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」三月号若葉集 小林幸子選歌欄 十首選


カンカンと鉄音響かせ六人の作業する人鉄塔に並ぶ  山内恵子


ポケットの内にポケットあることに気付く明るき枯野を行けば  森尾みづな


おめでとう顔の体操するように口にしてみるトイレの中で  椛沢知世


生け垣に山茶花背よりたかき道 子らを呼ぶ声けさは聞こえず  栗栖優子


テノールの車掌の声はここちよく神楽坂まで乗って行こうか  薦田 恵


まま、と呼ぶ人を探している君の右手をぎゅっと握り締めつつ とわさき芽ぐみ


たぶんすぐあなたは誰かと手を繋ぎその手を誰とも比べないひと  中森 舞


教室もペンもチークもサックスも跳び越えてゆく 魚座を盗め  平野 杏


分数を教へる時に分けるものチーズケーキにしてと言ふきみ  本田 葵


雨あがり車道にうかぶ青空を白き自転車わたりてゆけり  吉原 真



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-23 10:39 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 21日

「塔」三月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」三月号 永田淳選歌欄 十首選


寂しさを母は語りき寂しさははるかに遠く木蓮の咲く  ひじり純子


ふたたびは会ふことなからむ遠縁の人の手料理夫を酔はしむ  林 雍子


モンブランケーキにブスッとフォーク刺すあの頃姑の脳怪しき  鈴木美代子


竹鼻町狐穴(たけはなちやうきつねあな)とふ交差点差しかかるとき赤の灯ともる  伊藤京子


こんなにももう輝けぬテーブルの津軽りんごに陽のあたる午後  木原樹庵


つきたての餅を正座のいもうとの膝つこぞうの形に丸める  竹内真実子


「おばあちやん」と他人に言はれつんのめりぬ七十歳は微妙なのです  藤原はつみ


自家製のつるし柿ならほちゃほちゃの時を選びて食むのも嬉しい  堀口 岬


冬川を落ち葉の筏が流れゆく乾ききつたる夢の浮力に  一宮雅子


工事現場に置かれたままのショベルカーが今夜は掬つてみたい星たち  高橋ひろ子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-21 21:47 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 21日

「塔」三月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」三月号 江戸雪選歌欄 十首選


真夜中の仕事は終わる気配すらなくて五度目のコーヒーの湯気  内海誠二


忙しくしているらしいおとうとの擦りきれている革靴の先  小松 岬


お大事にと返すしかなく三日月のかどは鋭くとがりていたり  三谷弘子


首のない鶏を逆さにぶら下げてワンピースの人夕暮れに消ゆ  小圷光風


やうやくに日の差しはじめ見下せばいつも乗つてた黄色い電車  佐藤壽美枝


終電のプラットホームは光からつくられている微かな離島  森永理恵


わが窓に大きく影のすぎてゆき庭の式部がはらはらと散る  南條暁美


突きつめたあとの奈落を思いつつスノードームに雪を降らせる  黒木浩子


そのうちにと思うこと多すぎてもう二度と戻れない世界だ  井上雅史


あと十分門限までのまわり道に「デスペラード」を聴いた助手席  中山惠子




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-21 10:30 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 20日

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」三月号 前田康子選歌欄 十首選


ときに夕陽は鋭く射して街上の通り魔の手を閃かせたり  永山凌平


わが家へと誘いのメールの五分後に君は来たりぬ作業着のまま  赤田文女


両親が島よりもどりしばらくを島唄のなかに日々を過ごしぬ  浅野美紗子


雨の降りはじめを電車に見ておればいつかは魚だったわたしも  川上まなみ


うすくふくらんだ手編みのセーターにアネモネは咲き ひと挿しもらう  北虎叡人


煮炊き終え向かう机に西日射し今日のわたしが頬杖をつく  倉谷節子


ひとり降りまたひとり降りバスはゆく赤い金魚のように眠ろう  小林千代


傷口に塩をぬり込む行為だとわからぬ貴女のアドバイス聞く  前原美登里


青春の甘き息にも握らぬ手八十路を過ぎて握りしめをり  山田トシ子


おもいでは揮発されゆくはつふゆのあさへこの身をさらしておれば  田村龍平




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-20 11:40 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 19日

「塔」三月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」三月号 山下洋選歌欄 十首選


停電に静止するラボひんやりとチェリャビンスクから来たという石  安治香織


バカボンの生まるる前のバカボンのパパを思ひぬ子を抱きつつ  益田克行


八月を語りたること多けれど十二月八日静けく暮れたり  小畑志津子


これはねきたやましぐれとひとの声 秋陽に照りて銀の糸降る  津田雅子


日本を守るアメリカ軍だから落ちた窓枠、県がひきとる  久保まり子


先に寝てた妻がくるりと背を向けてなんだばかやろーと小さく言えり  垣野俊一郎


ふつと消えてしまひさうだつた彼の日々の錘であつたか 黒いリュックは  山尾春美


逝きしのち六時間なら交わりてよいらしエジプト流の別れは  高橋武司


半島の付け根に暮らす 大切なことほど親に言はないで来て  髙野 岬


あしたのジョーほどに疲れて帰り来る妻は両手を重くぶら下げ  小林貴文



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-19 17:23 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 18日

「塔」三月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」三月号 永田和宏選歌欄 十首選


半過去も単純未来もどこか遠く知らない町を濡らす雨粒  福西直美


きれぎれに仕事の愚痴を言いし人が揚げあんパンの話を始める  吉田 典


ふゆぞらに塔きわだてり白月とならび浮かべばほろびの匂いに  中田明子


やはらかき西洋ひひらぎ赤き実の片恋のままあなたと暮らす  長尾 宏


鹿ヶ谷通りを北に歩を早め右に折れると霙に変わる  田巻幸生


垣根縫う忍びのような鶯のぢ鳴き聞こえて足を止めたり  森山 功


くらやみがばきゅんと撃たれた傷跡のようにひらいた白いさざんか  海老茶ちよ子


駅前の歯医者の窓より見おろせば話してみたき女人がとほる  坪井睦彦


止まるなと言はれて蟹の横ばひに信貴山縁起絵巻を過ぎる  澤井潤子


どうしてもやりきれぬ日があるでせうピリ辛カレーを夜にはどうぞ  臼井 均




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-18 18:30 | 十首選 | Comments(0)
2018年 03月 17日

「塔」三月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」三月号 真中朋久選歌欄 十首選


可愛いとわたしに言ったことなどもなかったように結婚する人  田宮智美


玄関にジャンパー、ランドセル脱ぎ捨てておやつちょうだいと子は我に言う  矢澤麻子


冠はシロツメクサでつくったの世界はあたしのものだったのよ  真間梅子


力む癖が身に付いていて落花生を次々食べて歯痛を起す  河田潮子


彼岸花が呼んでも行くなと妻が言う出掛ける時にまた念を押す  中山大三


太陽は生れ変はりたり冬至すぎ日脚をのばし光強くす  山下好美


友人A友人Bとカラオケに 恋人Aから連絡は無し  川又郁人


菜箸の二本が丈の異なればとりあへず先を揃へて使ふ  丸山順司


昼どきのATMの残り香はうすきピンクの看護師のもの  柳田主於美


遺影にと撮りし写真の五年経てやや若すぎるかと鏡に比ぶ  加藤 宙



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-03-17 20:00 | 十首選 | Comments(0)