暗黒星雲

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2018年 04月 30日

「塔」四月号 月集 十首選

「塔」四月号 月集 十首選


意味もなくまた呼んでゐる呼ばれても迷惑だらうが雪のゆふぐれ  永田和宏


さまざまな会社のカレンダー路(みち)に売る老人のゐて一つ買ひたり  花山多佳子


たまきはるいのちなどともおもはねどひかりのなかにいりゆかむとす  真中朋久


丘の上の畑なかの道ゆふぐれてかなたにスカイツリー灯れる  小林幸子


一すじの重さいか程制服のおとめの肩にかかる黒髪  石本照子


留守中にゐねむりするなと着ぶくれて出かける妻が振り向きて言ふ  上大迫 實


君は子音わたしは母音オリオンを指させば互ひの肩が触れあふ  苅谷君代


一刷毛の雲の浮かぶを眺めつつ湖西線で行く友の墓参に  貞包雅文


その話は一先づ置いて 城跡の縁(へり)より見下ろす石垣の反り  久岡貴子


布巾には夢二椿のまろき花咲きをり母に赤飯を炊く  干田智子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-30 21:51 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 28日

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」四月号 真中朋久選歌欄 十首選


雨音に醒めゆくまぎわの夢のなか明日会わむ人の髪濡れており  土肥朋子


月集を読みをる車窓の陰りきて彦根は雪なりきみ住む町の  広瀬明子


もうどこを捜せど会へぬ人なれど夢の駅にてすれちがひたり  石原安藝子


十年(ととせ)経て母の肌着を捨てる日の朝しらじらとありあけの月  斎藤雅也


あかき鳥居をぬけてくあなたの背がみえる わたしはもつと強くなれるわ  田中律子


他人事と遠く見てゐし一文字がカルテ追ふ目にとびこんで来ぬ  林 雍子


「わざわざ」と受付のひとは言ひかけて「はるばる」と言ひ直したり  穂積みづほ


二穴パンチの一穴だけを使うときの空打ち側のようなむなしさ  吉田淳美


元日の本屋であなたを見失ういつか会えなくなるね、たやすく  上澄 眠


夢に来てダッフルコートを脱ぎゐしが息子にあらず歯並がちがふ  清水弘子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-28 20:57 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 26日

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田和宏選歌欄 十首選


息を吸えばもう眠るらし母の夢にわたしの知らぬ一頭の馬  金田光世


雪の下の草食む馬を見やりつつ柵に錆びたる折れ釘を抜く  清水良郎


なつかしい人との夢をさめて聴く冬ちかき朝の鋭き風の音  野島光世


うつつには見たことがなく夢にだけいる人のいて時に死にたり  相原かろ


手触れれば父の額の冷たさよ死をはじめて見し十六の冬  大塚洋子


雨あがりのにおいが好きだ 深く深く目を瞑りいるあなたは森だ  数又みはる


でもやっぱり呆けていない振りをして陽のさす冬至に雪かきをする  近藤桂子


髪少し生えてきたとのメールありそれより明るき気配がうれし  西川照代


電波傍受もあるかもしれぬ仕事場へガラケーにてかける急ぎの伝言  福井まゆみ


シャワーヘッドの穴を抜けゆくとき水はこそばゆくなる ほんの一瞬  一宮奈生




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-26 20:29 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 25日

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」四月号 池本一郎選歌欄 十首選


ほんたうはわからないんです長いこと自分の影と思つてきたけど  岡部かずみ


真夜を来て冷えきった手をまっすぐに君に触れたりまだ温かき  今井眞知子


重さなき魚群のようなかたまりが乗継ぎホームを横切りてゆく  福西直美


のら猫に汲みおく水に薄氷のはりて鈴鹿の山並白し  倉成悦子


湯を浴びれば今日のうろこが剥れゆくひとりの密室さかなになりて  庄野美千代


窓の辺の多肉植物に陽はさせり女生徒とふたり保健室にゐる  竹尾由美子


冬ざれの畑に頰被りのをとこをりいくたびか立ち腰を叩ける  古屋冴子


母が言ううらのおじさん死んじゃったふるさとにまた空家の増える  真間梅子


あの山の裾野に残る友の家無人となりしその後を知らず  丸山隆子


おやゆびがこのごろおいしくないねんと小さな声に六歳が言う  ぱいんぐりん



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-25 23:01 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 24日

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」四月号 花山多佳子選歌欄 十首選


あかんぼを便座にすわらせ待ちおれば赤子にわが顔見つめられおり  矢澤麻子


この朝つごもり蕎麦が届きたり泥つき葱を三本添えて  ジャッシーいく子


播州の空明るくて素麺を干しをる男(おのこ)ふとき腕もつ  藤原明朗


三十分待てど来ぬ人待つ我を誰かがどこかで見ているような  村﨑 京


ちちちちと機械の音して品物のラベルは落ちるそれを拾いたり  奥山ひろ美


屋根屋根に夜の雪落つる京の絵に入りて窓に灯りつけたし  上仲修史


伝えんとせし思いありしかれどもその内容を思い出せない  林 広樹


何とまあ大き靴裏、息白く野球少年われを抜きゆく  安永 明


このごろはうつむきて歩く癖のありけふの空色おもひ起こせず  三好くに子


冬山の深きしじまに耐えかねて四十雀わがそばに来て鳴く  川口秀晴



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-24 09:20 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 20日

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」四月号 前田康子選歌欄 十首選


風のよるへあなたをかえして一輪の百合てらすべく灯を細めたり  宗形 瞳


キミになくワタシにはある見てごらんこれが雪だったころのわたくし  只石めぐみ


ありありと街のかたちを尖らせてやわらかき刃 冬の逆光  中田明子


托鉢の僧の気分にいただきぬ今採れたての甘藍ふたつ  山田恵子


軒を打つ風を聞きつつ過ごしいるふたりに戻りて年越す夜を  白井陽子


なまぬるい紺をまとえば古臭いアメリカ映画の主役みたいだ  大橋春人


パンを焼きスープを煮込み灯をともす田舎娘に私はなりたい  さつきいつか


杖をつきしばらく頭を下げている見知らぬ人居り父の墓前に  寺田裕子


茶畑は花つけしまま刈りこまれ小夜(さよ)の中山西行の歌碑  水岩 瞳


二番目にお待ちの方というものにどういうわけか私はならず  八鍬友広




(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-20 20:07 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 18日

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」四月号 江戸雪選歌欄 十首選


西国のをみなは柑橘煮るだらうわがストーブに林檎が煮ゆる  加藤和子


海鳴りの聞こえる夜は母子して囲炉裏囲みて歌うたいたり  梅下芙美惠


「寒空のこの一服がうまいのよ」男は言えり肩尖らせて  垣野俊一郎


<頭髪(かみ)抜き>は反則技ぞ 医務官もわれも知らざりき頭髪(かみ)もどす術(すべ)を  河村壽仁


三角洲の沖よりとどろく波の音枕辺に聞くひとりの夜更け  木戸洋子


軒下に干し柿は渋の抜けぬままあなたは去りぬ霜月の朝  古栗絹江


ことごとく吾は渋い派一月は干し芋なんぞ作りて暮らす  西村清子


水量の増えし木曽川月影に映し出されて漆黒に見ゆ  松尾桂子


ゆっくりと絶望をする 珈琲とデッドストックコートの匂い  山岸類子


ひとりですか。いえ違ひます。ふたりです。夜の雨戸はカタカタと鳴る  和田 澄



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-18 22:52 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 17日

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」四月号 永田淳選歌欄 十首選


昨年の諸々のこと忘れたるように四日の仕事始まる  作田善宏


コーヒーしかできないけれどいいですか鉛筆握る店のおばちゃん  高原さやか


きみの触れた髪を映してその白さを三面鏡の中に束ねる  吉田 典


わが床にうたたねしゐるこの娘(こ)はもツバスを脱けてハマチの形  飛鳥井和子


名古屋駅に着いてしばらく安らぎぬ余命告げられし人と別れて  岡崎五郎


四年前夫はなくなりましたとの賀状の返しありて声上ぐ  小川節三


ひと夜さの疲れを高速バスにおき子は軽やかにステップ降りくる  千葉なおみ


ごろつきのやうな里芋ゆでながら背のびして取るおでん用なべ  森永絹子


田に水を張れば湧き出すカブトエビホネエビわしゃわしゃ足だらけなり  王生令子


あなたに差すひかりが多い中庭に世界のバグのような静けさ  長月 優



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-17 22:35 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 16日

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」四月号 小林幸子選歌欄 十首選


亡くなりし後に賀状の届きたり元日の月冴え冴えと渡る  井上孝治


高台から小(ち)さく海見ゆ浪高く脹らみてをりけふのその海  髙野 岬


わが空き家列車に見たり山茶花のはなさく垣に囲まれゐるを  越智ひとみ


剪定を終へたる君は梯子降り糸月出でぬと我を手招く  森川厚子


百円のハンバーガーとコーヒーで昼食済ます女正月  あ か り


おさかなのメヂカは目と目近くしてメバチはパッチリ大きな目なり  佐竹永衣


信仰のゆえに友との交わりを断つこともあり寒夜のメール  富田小夜子


もう少しやさしくしたいテーブルのミントの挿し芽の根がのびるまで  はなきりんかげろう


戦場の兵士のように放心し暮れの仕事を終えし息子は  村井玲子


重ねれば重ねるほどに豊かなり今治生まれの白きバスタオル  魚谷真梨子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-16 22:49 | 十首選 | Comments(0)
2018年 04月 12日

「塔」四月号若葉集 三井修選歌欄 十首選

「塔」四月号若葉集 三井修選歌欄 十首選


雪になるその瞬間に気がつかず見てた車窓に映るわたしを  椛沢知世


カゼひきを病人らしく演出す鍋焼きうどんはそんな食べ物  谷 活恵


柿の実は艶色を増しその奥の遠くに浮かぶ白雲が見ゆ  赤井稚加


初期化してあなたを育て直したし家族写真に少し微笑む  伊地知典子


「ちは」だけじゃなくて他のも覚えてね 小学生に教えるかるた  うにがわえりも


「あの夜」と呼ばれる夜になりそうでポニーテールをまた結い直す  頬  骨


南天の色づくまでの薄いろの何十日か人を憎みき  仲町六絵


シナモンの香を閉じ込めて林檎煮の陶器の蓋する誰も居ない夜  里乃ゆめ


うたまろの頃より女の折るといふ鶴折りながらまよへる夜更  山縣みさを


残月を背にあててゐる充電をわざと忘れしスマホを持ちて  大堀 茜



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-04-12 22:16 | 十首選 | Comments(0)