暗黒星雲

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2018年 05月 30日

「塔」五月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」五月号 花山多佳子選歌欄 十首選


バスが来ない生活に慣れ下ばかりむいて歩くことにも慣れてしまひき  西村玲美


カーテンの縦の裂け目を隠さむと洗濯挟みで二か所留め置く  柳田主於美


桟橋より見る雨の乗馬クラブには帽子のごとくしずかなる馬  白水ま衣


夜のバスに座る人らの右頬を照らして赤色灯は過ぎゆく  伊東 文


どうぞという声が聞こえて渡りゆくひんやりとした土間の向こうへ  宇梶晶子


斜め前の女の妙に長き首なおも伸ばして高座に見入る  金田光世


わたしには残しておきたいものはない帽子も傘も青いコートも  國森久美子


このビルで誰が正規か非正規か女子会ランチで自ずと知れり  小山美保子


父母の手を恋ふる日あるを知らざりき走り書きさへ手元になくて  竹下文子


また同じ夢に迷えり朝の灯とも夕べの灯ともみえる家路に  数又みはる



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-30 20:32 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 28日

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選

「塔」五月号若葉集 山下洋選歌欄 十首選


珍しく足のゆびゆびの間から地球が見える ほんとはいつでも  小西白今日


光る石埋めたあたりか新緑の校庭すみに野あざみの咲く  宮脇 泉


まだ君を抱きしめている感覚に抱きしめられていて眠れない  拝田啓佑


幾何かほてり残してそろそろと幾何学模様のスカートを穿く  中森 舞


今日うまく眉を描けしことなどをあなたは小枝を拾ひつつ聞く  大堀 茜


雪降つてパンが消えたるパンの棚三月うさぎ走らせておけ  森尾みづな


骨だけの傘が河原に捨てられて春まだ寒き堰に白鷺  三木紀幸


限界を超えよ超えよと口角が上がり続けて口裂け女  とわさき芽ぐみ


ここからは徒歩でゆくべし左手の杖をかざして男は言ひつ  山縣みさを


島ひとつ違うのみにて一日を話す機会のつかめぬ火曜  吉原 真



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-28 21:03 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 26日

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」五月号 三井修選歌欄 十首選


ひかえめな夕焼けのようにはにかんで笑うあなたの母になりたい  高松紗都子


おとなしい少年でありきわたくしはアリジゴクに蟻おとすことありき  宗形 光


和箪笥をのけると壁にカシニョール展のポスター貼られありたり  松浦わか子


恋猫がアオアオと鳴き今だけはアオちやんと呼ばれ遠ざかりゆく  浅野美紗子


スカアトをひろげ椿のくれなゐの花拾いゆく布たゆむまで  新井啓子


おのおののハンドクリームの香り満つ午後の仕事が始まる前の  和田かな子


我の名を呼ばれた気がして立ち止まる芙蓉の花咲く墓地は青空  小林千代


観るに見る視るに診る看るわたくしが母をみるのはいずれにあらむ  坂下俊郎


人と会うことの疲れがしたたりて重力に引かれるように眠りぬ  山川仁帆


まだ眠たい水曜の朝勝手に寝坊してよい日と決めてあと五分寝る  春澄ちえ



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-26 15:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 24日

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」五月号 小林幸子選歌欄 十首選


ばんざいの形のままに受けとりてをのこの臍が丸見えとなる  竹内真実子


テヘランを去る日路上に痩せこけし子猫のおりぬ真白き子猫  秋野道子


機織(はたお)りの音しか聞こえぬ道を抜け間人(たいざ)の浜に文を燃やせり  岡部由紀子


後輩は丸いほっぺを光らせて産休という木立に消える  中井スピカ


びわのような人だと思い見つめおりうぶ毛のよろいは傷つきやすし  中山惠子


三日月の凍えて空に貼り付きぬ朝刊はすでに配達されおり  ひじり純子


助手席の人と話は弾まざり送ると言ひし口が乾きぬ  益田克行


賑わいを縫いて小路にさしかかりそっと触れたる手袋の指  森 雪子


結び方を知らないからねネクタイをほどく指に責任はない  山岸類子


すっぴんにメガネをかけてマスクして最近ほしいものは印泥  山名聡美



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-24 16:37 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 22日

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」五月号 永田淳選歌欄 十首選


他動詞のぬらすといふことゆびさきは椿の雪をそうつとはらふ  千村久仁子


よく眠れる枕売らるるその横で紙コップのココア飲み干す  朝日みさ


ヒヤシンスの匂いのせいだ 言い訳を重ねてしまう夜半(よわ)のリビング  石橋泰奈


あの蟹を食べられなかったと今日もまた繰り言をいう楽しみがある  岡崎五郎


鹿のつのに触れてゐたのはそれぞれに隠しごとをもちよつたひとたち  小田桐 夕


偶数でも奇数でもないゼロのようにあなたは敵でも味方でもない  北山順子


「もしもし」といふだけで切れしがその声は生前の友ありありとして  河野純子


手品(マジック)が趣味だと云うてゐし旧友のとある日ねずみ講に誘ひ来(く)  篠野 京


モロゾフのショコラ一箱君に買う君が生きてる振りをして買う  ジャッシーいく子


むらさきのトレッキングシューズ置かれたる玄関に差す日暮れのひかり  松原あけみ



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-22 20:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 20日

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」五月号 江戸雪選歌欄 十首選


鷗らが空に漂ふ次々と身を疾風に放つた者たち  髙野 岬


いまもなほ家族の数の椅子を置きその空席に時をり掛ける  西山千鶴子


他人にはどうでもいいことなれど明日われは散髪をしに行く予定  丸山順司


宅配の箱を開ければ山菜のわきに蝋梅ひと枝香る  佐藤涼子


出征を見送る汽車の窓に寄りおみやげ頼みし三才の吾  梅下芙美惠


突然のはしり雨受けビルの壁に張りつきてわれ静物画となる  古屋冴子


金沢の雪のにおいの付箋です手紙に貼りてあなたのもとへ  堀口 岬


水底に白いターバンの女ゐて忘れないでとあれは誰だらう  祐德美惠子


あけがたの夢に目覚めぬ逢ふことのもうない人のふらりあらはれし  竹尾由美子


「誰とでも話せるようになりたいです」その絵馬の前を去り難くおり  垣野俊一郎



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-20 22:18 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 18日

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」五月号 真中朋久選歌欄 十首選


弊社には様式あらずグーグルに「退職届 書き方」と聞く  逢坂みずき


いきなりに両の指にて輪をつくる何事をかを教へむがため  村上 明


勝利者にはなし聞くとき「放送席、放送席」となぜ二回呼ぶ  田村龍平


歩道へと足のさきより降りてきて鳥はみずからの影にいたれり  中田明子


オリオンもシリウスもいつもどおりなり月のみ赤く欠けいるこの夜  山下美和子


すべり落つる刹那にとまる技をみせ緑葉の先にしずくの光る  市居よね子


さびしいかいつて聞くから淋しくなる夕べ父と並びてあふぐ夕焼け  臼井 均


黒皮の手袋はいつも右ばかりなくして残るを箪笥にしまう  高橋あや子


約束はときにだれかを傷つける私はわたしの森へと歩く  増田美恵子


煮る沸かす洗つて回す他動詞を使ひすぎたかヒューズが飛びぬ  伊藤京子



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-18 19:12 | 十首選 | Comments(0)
2018年 05月 16日

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」五月号 栗木京子選歌欄 十首選


靴音がわたしのあとをついてくる観る人のなき素描展示室  岡部かずみ


しろがねのナイフのやうな愛なども知らず越の国にて果てむ  山下好美


芽吹きだろうか 手袋の中まどろんだ深爪がそのかたちに痛む  加瀬はる


薄雲が空を透かしている午後の誰かに伝えたいだいじょうぶ  紫野 春


夜半に目覚め己が来し方思うなりエッシャーの絵に迷い入るごと  鎌田一郎


穴を出てブツブツ呪詛の泡を吐く大潮の夜は蟹になりたし  王生令子


溺れたら悪いとわかるならもっと強い力でやめさせてほしい  丘村奈央子


ほおたるは昆虫ですかと妻が問う雪が降るから寝てしまいたり  中山大三


かなちゃんを預けていこうと言う五歳そうすりゃなんでもはやくできるよ  矢澤麻子


「はくちょうはくちばしの先から沈むよ」と凍て空の星を子らに指さす  上杉憲一



(新井蜜)


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by trentonrowley | 2018-05-16 20:07 | 十首選 | Comments(0)