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暗黒星雲

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2018年 08月 28日

「塔」八月号 月集 十首選

「塔」八月号 月集 十首選


ふかぶかとわれらのまとう喪服より豪雨警報いっせいに鳴る  吉川宏志


どことなくあたたかみありそのかみの避病院なる荏原(えばら)病院  花山多佳子


手の中に親指隠し真昼間を血液するする抜かれておりぬ  前田康子


タルトなら六時屋がいいその昔祖父いひたるを土産に買ひぬ  岩野伸子


木香薔薇あふれ咲きゐる庭のあり小さき玄関その奥に見ゆ  上杉和子


産休明けのファイナンシャルプランナー双子(ふたご)ですと答へすぐ商談に  亀谷たま江


着信のメロディー鳴り出す午前二時あなたもやはり眠れぬらしい  黒住 光


言いさしの先が知りたい暗闇で君と見ていたエンドロールを  貞包雅文


日照雨影とひかりを降らせをり思ひ出せずにわれはゐるなり  久岡貴子


降りたればバスのその後のゆく道をわれは知らざりしばし見送る  村田弘子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-28 14:00 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 25日

「塔」八月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」八月号 花山多佳子選歌欄 十首選


菜の花の油を買ひに空瓶を持ちて行きたり夕方のお使ひ  渡辺のぞみ


ぬかるみに足とられつつおとうとと古墳のわきの畦道駆ける  土肥朋子


うつせみのこの世なりけり一人来て二月堂より町を見おろす  青木朋子


責任は取ると言われてあさぞらに送り出された雲かもしれず  朝井さとる


帰宅後の足に砂粒さわりたりパンプスの中は一色海岸  佐原亜子


会いたいというのは感情であるから靴紐少しきつく結びぬ  白水ま衣


いまごろになってむかしのもろもろを思いだす母また泣いている  永田 愛


朝起きて横目に顔をうかがいたり今日一日の忖度のはじまり  村松建彦


途中下車して志満(しま)といふ店に寄る鰈の煮付食べたくなりて  柳田主於美


しゃりしゃりと小砂利を踏みて行く道に一枚たりと落ち葉のあらず  谷口公一




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-25 14:04 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 23日

「塔」八月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選

「塔」八月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選


なんとなくそのままにした夏帽子いまもそのまま三回忌きて  島田章平


居ればよし居らずともよし昼下がり姫女苑にほふ坂道くだる  山縣みさを


夜 君のつめを切る音聴きながら卵置き場に並べるたまご  近江 瞬


お下がりを食む時少し味落ちて仏が確かに食した証か  白石絵美


うた好きの野菜嫌ひの孫とゐて「ごめんねピーマン」のうた口ずさむ  中村みどり


菜の花はなだり一面埋めつくし周防の海に両手広げる  灰岡裕美


今朝庭にひらきし花の写真など見せあふ部屋へ海の香は満つ  大堀 茜


透明の絮毛となりぬ球形のかたち保ちて風に揺れをり  篠原とし


ポケットにムクロジふたつ入ってた風吹いていた朝の思い出  伊藤未来


冬の町に何を踏みきし靴底ぞ白き小石のひとつ挟まる  森川たみ子




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-23 21:26 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 23日

「塔」八月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」八月号 江戸雪選歌欄 十首選


失いたくないから何かができる訳でもなくてお手紙を書く  濱本 凜


海を見に行かうと君に伝へたらもう満たされてしまふ気がする  濱松哲朗


聞きかへされるときにをとこのにほひして前向いたままもう一度言ふ  岡本伸香


おとめたちの内緒話のはなやぎを思って春の半襟を縫う  紫野 春


熱々のタオルで拭きやるきみの背にしがみつきたし 西日差し込む  宮内ちさと


すっきりと背筋を立てて絵本をみる一歳の児に空青くあれ  鈴木晶子


我が家の窓の全ては新緑で蟻も百足もこおろぎも来る  田巻幸生


黒ずんだペコペコ息するスリッパの裏側みたいな青春もある  みずおち 豊


人群れにまぎれながら一つだけこちらを向きて笑まふ顔あり  岡部かずみ


もうさざ波の立つことなくてお互いに親の介護の話しなどする  冨田織江



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-23 10:40 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 21日

「塔」八月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」八月号 前田康子選歌欄 十首選


神様を信じぬ少年短編にひとり描きつつ雨を聴きをり  木村珊瑚


母は子で祖母が母 棺に向かい「おかあさん」と呼ぶ声のかぼそさ  小松 岬


鈴の鳴る扉を押せば青葉闇のやうなり昼のロージナ茶房  髙野 岬


若さではなく草臥れていないかだ新人社員を見分ける方法  逢坂みずき


健ちやんの奥さんと呼ばるいとこ会手拍子うちて伊那節踊る  金子光子


駐車場に私雨(わたくしあめ)の降りしあと峠の向かうのわが町思ふ  児嶋きよみ


母を待つ春雨の窓にいまも立つ幼きわれが雨だれを好く  丸本ふみ


死ぬまでをつづく呼吸のひとつずつふかめに吸えばあざやかな空  田村龍平


蝶の来て母かとおもひ燕きて父かとぞ思(も)ふひとりのくらしに  江見眞智子


入院の暇(いとま)に咲いて知らぬ間に垂れてま白くえごの花散る  芳仲成和



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-21 22:25 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 21日

「塔」八月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」八月号 山下洋選歌欄 十首選


割りながら分けあいながら野いちごを娘とアリと私が食べる  八木佐織


ご迷惑おかけしますと幾たびも詫びつつ搬送さるる明け方  坂下俊郎


「守るべき人は妻と子」とふ息子母は守られる人にはあらず  伊藤陽子


シュウマイにのっかっているグリンピースなんでやろうな豆から食べる  北野中子


声帯を震わせ大気に刻み込む月に聴かせるだけの言葉を  徳田浩実


マクベスの妻が洗いし血の裔か躑躅はなだりをくまなく染める  西村美智子


揺れている訳のわからぬ感覚は酒のせいだと忘れることだ  中村寛之


初夏の銀座で買ったさみどりのツバメノートに数式を解く  佐藤涼子


若いころはなに聴いてたの 顔を上げることなくふいに息子が問いぬ  垣野俊一郎


赤がいい、夫が選びしクレマチス今年も咲きて今年も散りぬ  今井眞知子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-21 13:39 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 19日

「塔」八月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」八月号 三井修選歌欄 十首選


くびすじをひしとくわえてはこびたし眠りのふかきいきものなれば  山名聡美


四日目ゆリハビリ先づは足し算と引き算パズルの絵の組み合せ  吉村久子


川縁(べり)のカーブミラーに入り日見ゆ一条伸びる道のはたての  佐々木美由喜


躓きて思はずつかむ野薊の花咲く茎は棘ばかりなり  朝井一恵


「開けゴマ」叫んでみたい時のあり何を望むと我にも分かず  小川 玲


わが撞きし飛鳥の寺の鐘の音 耳を澄ませば未だひびきをり  唐木よし子


泣きたいし泣きたくないし放たれるゆばりの熱も夢ならばいい  白水裕子


コカ・コーラ開けたらあわあわあわあわと溢れ出て手を濡らすように恋  太代祐一


泉よりもどつて来たるまなざしでかなしき事をいふいもうとは  福田恭子


削除して削除してなお届き来る迷惑メールのような後悔  村﨑 京



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-19 22:36 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 17日

「塔」八月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」八月号 永田和宏選歌欄 十首選


休日の研究棟の守衛さん鼻メガネして文庫読みゐる  近藤真啓


カンヴァスに色を重ねた密林に湿ったおんなの裸が匂う  福西直美


楽園を捨てた身なれば同じ性もつ恋人の髪へと触れる  はなきりんかげろう


さびしさのようにへこみぬリビングのベージュのソファに深く座れば  川上まなみ


この道はバイエルもちて手をつなぎ姉と通いしでこぼこの道  小谷栄子


母に添ひ母の家にて過したり枝垂れ桜の咲きて散るまで  葵 しづか


鳥の鳴き声と思えば良いのだがニコチン臭の激しい声だ  大橋春人


あなたを知りてうれしき夜のかつてあり垂るる蕾を雨包みいき  宗形 瞳


外がわの赤き花びら残しつつ崩れ落ちたり英国のばら  谷口美生


去りゆきしままの幼きわれがあの角にたたずむ黄昏どきは  山川仁帆



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-17 21:24 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 13日

「塔」八月号 真中朋久選歌欄 十首選

「塔」八月号 真中朋久選歌欄 十首選


いもうとが生まれた日だからじゃあまたね線香花火あしたしようね  多田なの


四本の足もつ犬は転ばない八十二歳の我は三本  熊野 温


社会からすこしづつ浮く僕たちがいつか月までゆくものがたり  宮本背水


ひたすらに妻が子を褒む足音のにぎやかなるを今日は褒めをり  益田克行


雪の降る地獄の河のほとりではあなたもきっとはだかでしょうね  田村穂隆


どきりとする困った時しか掛けてこぬ息子からの電話お母さんあのな  白波瀬弘子


病む部屋は三ッ葉ツツジに覆われて日永いちにち花と暮らしぬ  棚橋道子


入社時にハンマー振る訓練ありき「鉄は熱いうち打て」と煽られ  坪井睦彦


もう少し話していたいポロシャツの襟元ばかりみつめた日暮れ  増田美恵子


幾重にも皮に包まれ筍の先端にある伸びてゆくもの  入部英明



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-13 15:14 | 十首選 | Comments(0)
2018年 08月 11日

「塔」八月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」八月号 栗木京子選歌欄 十首選


問い詰めて医師に二年と言わせしと友は悲しきことを話しぬ  加藤武朗


ふわふわと力なき身は気圧のせいと定めて何ひとつ手につかず過ぐ  小畑百合子


過ぎゆきのことと思いぬ思えども屋根裏にありしゴジラのポスター  数又みはる


ゆふぐれの陽ざしが廊下に長く伸びひかる埃よちかづく夏よ  山地あい子


枯れし花捨てられてゐる坂のうへ大きく白き月でてゐたり  杉本潤子


可動域ひろき葉桜闇を掻く死んだらなんであかんのと言ふ  穂積みづほ


あをむしの気分にさくさくキャベツ喰むサクサクと刻の移ろふ真昼  毛利さち子


銀の鈴ちりちり鳴りぬ鍵束を母の震へる手から受くれば  𠮷澤ゆう子


居眠りをしているひとに半分を残して酢ゆき夏みかん食ぶ  石井夢津子


手つかずの季節をそこにも光らせて鴨川は胸の奥をながれる  大森静佳



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-08-11 16:54 | 十首選 | Comments(0)