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暗黒星雲

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2018年 12月 21日

「塔」十二月号 月集 十首選

「塔」十二月号 月集 十首選


朝の茶を供へてわれもいただきぬ障子のそとに動く鳥影  小林幸子


若き日のままの友来てしばらくを居て去りゆけり雨の夜ふけに  山下 洋


世におくれ人におくれて夕庭に蜩を聞く挫けるなかれ  青井せつ子


安達太良山みゆる町にて病む妻とすむわびしさを従兄の言へり  大橋智恵子


頭頂に十六夜の月を感じつつわたれり深夜の交差点の海を  河野美砂子


雨にぬれ一際赤き仏桑華亜細亜の孤兒の我がフオルモサよ  陳 淑媛


この細き電話の線が繋ぎたる母娘(ははこ)と思う雨の夜道に  林 芳子


川に沿ふ道は駅へと曲がりゆき初恋のゆくへ聞きのがしたり  村上和子


ふらっとどこか旅に出たいと思いつつ職場の最寄りの駅で降りたり  森尻理恵


かたかたと夕べのひかり揺すりつつ木馬は来たり夢の方から  山下 泉



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-21 21:40 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 21日

「塔」十二月号 永田和宏選歌欄 十首選

「塔」十二月号 永田和宏選歌欄 十首選


部屋干しのシャツが幽かにゆれている遠くで首を振る扇風機  中山悦子


吾が胸に秘密の蜜ありときおりを小匙にすくいこっそりと舐む  濵﨑藍子


迎へ火のかはりに線香花火してこはがりのたましひを呼び出す  小林真代


貨物列車ぶ厚き音をひびかせて夕照りの町を突き抜けてゆく  石井夢津子


では、わたしはこっちだからと風船を飛ばしてしまったみたいな顔で  白水ま衣


鬼ごっこの苦手な子どもの増えておりショウリョウバッタのはねる夕暮れ  塚本理加


とりどりの色糸つねにおさまりし祖母の針箱ちいさかりけり  永田聖子


ルア・サンギ(血の月)とう禍禍しき名をもらい山の端にぼうと現るる影  沼 寛子


太郎冠者焼き栗食べ尽くす頃に時雨がわれの膝を濡らしぬ  穂積みづほ


倒木を越えて来る子ら一様に得意顔なり小雨の朝に  芦田美香



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-21 14:00 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 20日

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」十二月号 池本一郎選歌欄 十首選


眉を引く鏡に動く影がありニツカボツカが足場をのぼる  久次米俊子


坑道の壁の湿りを感じつつ手掘り鑿(のみ)跡ひたに触れたり  青木朋子


星になどなる筈もなき母なるも遠ざかりゆく火星が滲む  大城和子


昼食は何にするのと退屈を趣味にしてゐる男が言ひ来  國森久美子


バス停にゆっくりとまる佐鳴湖線セーラー服の我も乗り来る  佐原亜子


夏の日のぎらぎらと照る駐車場に落ちゐし一円そつと拾ひぬ  武田久雄


補聴器を外して電池を入れ替えるこの世の雑音聞き取るために  橋本英憲


ともかくも急いで部屋にと通さるるまさに落日宮津湾燃ゆ  林 雍子


大丈夫わたしがそばにいるからと呪文のようにいくたびか言う  永田 愛


初版にはなかった没年の記されて白紙(しらかみ)に淡い影は映りぬ  小川和恵




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-20 22:13 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 20日

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 花山多佳子選歌欄 十首選


夜勤の子出で行きし後つよくなる雨音をただ夫と聴きをり  清原はるか


気がつけば死が別つまで淡淡と共に在りたり夏の日逢いて  今井眞知子


ため息の軌跡のような雲ありて引きずるように流れてゆきぬ  黒木浩子


早くとも遅くともよし待つバスの帰らざる日々に月光まぶし  吉井敏郎


嫌だったことの数だけごま粒を貼りつけてやる別れの手紙  うにがわえりも


「よつこら」と腰を下せば妻と子がこゑを合はせて「しよ」と言ひくれし  林 龍三


議論せし会議の後の収まりのつかぬ心が夕暮れにたつ  星野綾香


細き腰わずかに反らす時に見ゆ編笠の下の白きおとがい  村上春枝


戸開くれば雲を見さらに風を読む七十路なれど農の子なれば  坪井睦彦


要するに四年生きぬと元が取れぬ保険の話らし四年が重い  高松恵美子




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-20 13:40 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 18日

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 栗木京子選歌欄 十首選


ストローの袋を破るゆびさきの力加減のようにさみしい  紫野 春


姉さんはフランスに居るさう思ふあんまり急に風呂でたふれて  河野純子


もう鳥になつたのですか新盆の過ぎて杖音聞こえてこない  今井早苗


母からの魔法はとけて王林を無性にかじりたくなる夕べ  増田美恵子


山姫になりたきものと渓流の露天の風呂で湯浴みする女子  西 真行


かろやかな雨はわたしにかさを閉じさせてさやさや九月の朝へ  落合優子


始まった時からなぜか見えていた静かにやってくる終末を  北山順子


子らをりしはるけき時にこころ逸れモロヘイヤスープ噴き零れたり  加藤和子


アカンサスもアガパンサスも知らざれば黙して人の批評のみ聞く  岩上夏樹


カーテンのレールに干したブラウスの向こうを見てた白になるまで  椛沢知世



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-18 21:51 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 17日

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」十二月号 永田淳選歌欄 十首選


祖母生れし明治のころのあかときのやうに歩めり灯のなき街を  栗山洋子


エマニエル夫人のごとく脚をくみ鏡の前でストレッチする  大森千里


あらあなた久しぶりねと振りかえり先輩魔女のように笑った  山名聡美


夫の背を見失ひたり山みちの生ひしげる草にとりこまるるとき  赤井稚加


手紙だけはたくさん書いたこの夏に終わり近づくさびしい夏の  石丸よしえ


婆ひとりとりのこされて山里にどうにかなるさと梟の声  江見眞智子


二週間のひとり旅なりテーブルの真中に置きたるブルーのノート  唐木よし子


今はもうシャルウィーダンスと声掛くる人も居らずて仏飯供う  相馬好子


なんとなく夏が終った気がしてるバイクの風がやわらかいから  中村寛之


蜂蜜を熱き紅茶に垂らしつつあなたのメールの返事を待ちぬ  中野敦子





(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-17 22:46 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 16日

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」十二月号 小林幸子選歌欄 十首選


枯れていくカーネーションを抱きしめるだれもわたしをゆるさなかった  帷子つらね


水のジャグ置かれた朝のテーブルにこの夏灼けし腕を載せたり  髙野 岬


指先でそっとわたしをへこましてあなたがこの世に生み出す窪み  魚谷真梨子


ケトルの中で温められて冷えてゆく時間ありけむ忘られたまま  永山凌平


祈りのように見えしがボタン留めており忠良の少女うつむく  朝日みさ


鮮やかな揃いの衣装で伸び上り頰赤き子らよさこいを舞う  金原千栄子


金色の模様はかすれ裏側の二人の名前は読める指輪だ  久保まり子


かみさまのようにあなたが境内でふりむいたから動けずにいる  小松 岬


「ごはんよ」と呼ばれて帰りし幼なき日思い出させる暮れて鳴く蝉  清水千登世


雷雨止み鋭き西日入る納屋にビニールプール畳まれずあり  佐々木美由喜




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-16 18:21 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 16日

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」十二月号 三井修選歌欄 十首選


南部鉄のふうりんの風に霊(たま)来ませ 秋立つ虚空に音の澄みたる  長谷仁子


子を捨てて妹を捨て母捨てて果物篭を捨てる夢を見き  福西直美


ゴング待つボクサーのごとき姿して若者は居る診察室前  横山敦子


意地悪をあなたにしたいお祭りのべっこうあめを舐めて噛んでいる  安倍光恵


お取りおきしておきますねとデザートの予約のように肺炎ワクチン  倉谷節子


あの蝶は待っていたのかあの日から待たれることのなきわたくしを  潮見克子


絹よりは木綿が好きですしつかりと弾力のある豆腐のはなし  浅野美紗子


言ひそびれ言ひおくれては言ひまける口下手なひとをわれは愛せり  木原樹庵


全国の天気予報で見てしまうかつて息子の住まいいし地名  小林千代


誰の子も可愛くなくて丘をゆく私は欠けた器だろうか  中井スピカ



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-16 14:58 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 14日

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」十二月号 山下洋選歌欄 十首選


頑張つてゐるし感謝もしてゐると言はれとろとろほどける指先  大江美典


相続権放棄したれば遠くより見るのみとなりしいもうとの家  久川康子


老い母のひと足ごとのあやうさを右手に受けつつ露天の風呂へ  赤田文女


九基は十字、一基は月の彫られゐて野田山墓地に俘虜の露人は  内藤幸雄


フライパンのふた盾にして烏賊に芋つぎつぎ揚げる夏は天ぷら  西村清子


柿若葉下照る路に独り佇つ過ぎたる月日まぶしかりけり  山本龍二


人想ふとき目つむれば新涼のゆふべの星はきらきらとあり  福田恭子


サトイモの花を見しことかつてありイモの葉かげに母を待ちつつ  白井陽子


過去帳を繰りゆく指を湿さむと小皿の上に海綿のあり  川田果弧


台風に荒らされし野をさびしめば草萩の花咲きこぼれをり  大田眞澄




(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-14 19:45 | 十首選 | Comments(0)
2018年 12月 14日

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選

「塔」十二月号若葉集 前田康子選歌欄 十首選


光るものは〈印刷開始〉のボタンのみ夜の寝室にひとりの呼吸  髙田獄舎


卓上に君の荷物の置きてあり「戻って来るよ」と言うがごとくに  高田 圭


ブラウスを脱ぎかけて窓閉めなおす、教科書とちがう金星光る  梅津かなで


オランダ坂の上、雲の下、四つ穴の小さきボタンひとつ拾いし  いわこし


いまここへ空の落つれば抽斗へとりのこさるるこの恋文も  大堀 茜


譲られて喜ぶ身体ととまどえる心よともかく今は座ろう  小谷淳子


パプリカの色鮮やかなテーブルに私の代理としてのししとう  佐原八重


太腿の静脈のような青をしてこれから雨季に移りゆく空  長谷川 麟


川と緑しかないよと書きくれし子と並び見る緑の夕暮れ  松山恵子


弁当のいらぬ前夜は二階にて綿入れを縫う雨を聴きつつ  宮野奈津子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2018-12-14 10:42 | 十首選 | Comments(0)