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暗黒星雲

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2019年 02月 28日

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選

「塔」二月号 池本一郎選歌欄 十首選


ここがそのさびしい場所ですというように更地に赤いコーンが立てり  垣野俊一郎


隠し釘あまたしづもる木造の教会森に建ちて百年  竹内真実子


寄る辺なささえも暮らしだ新聞を敷いてやさしく靴を磨いて  小松 岬


かぢといふ寺猫ありておそなへのめざしくはへて月よこぎりぬ  足立訓子


街角の花舖の店員つぎつぎと買はない薔薇を嗅がせてくるる  越智ひとみ


木の間よりゆるゆる上りし望の月無疵の空にくきやかに光(て)る  久保田和子


「男なら良かったのに」と手相見にいつも言われる ええ、本当に  はなきりんかげろう


偉そうな人が頭を下げている(理由は知らない)あたまさげてる  真栄城玄太


老人に老犬が添ふ川縁の遊歩道には小春日の椅子  三木紀幸


貨車遠く重きリズムの響く眞夜母子(ははこ)に貧しき時代(とき)のありたる  才田良子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-28 15:21 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 26日

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 十首選

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 十首選


夢をみて目覚めぬままにゆくこともあるやも知れずあるを願えり  西村清子


奥行きをたしかめたくて手をのばすあなたの中の森の深さの  魚谷真梨子


二羽の蝶あるいは雲のやうなりて乳腺写真をまじまじと見る  大堀 茜


夕光をたつぷり背負ふひとが言ふ かくごがきまつたらまたいらつしやい  小田桐 夕


万灯会のあかりわずかに揺らぎたれば仏の相好かわりたまいぬ  杉本文夫


三回忌法要の帰途つはぶきにとまれる黄蝶たちてつきくる  長谷仁子


なり止まぬ拍手のやうに葉は落ちて秋はかうして深まるらしい  福島美智子


絵本より取り出だしたる菓子を食む時には親の口にも運び  益田克行


一合の白きご飯を分けて食むこの閑けさを老いと言ふらし  和田 澄


白猫のふっくらしていた頰そげて年とったねと言えばすり寄る  森川たみ子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-26 22:22 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 22日

「塔」二月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」二月号 三井修選歌欄 十首選


退会を告げる電話の声ほがら倒れし妻に添ひて生きると  加藤 宙


新北風(ミーニシ)の吹けばサシバの幾群れの渦巻きながら渡りける村  与儀典子


むすめ来て風呂の黒黴こすりをり仁王尊のごとき力に  伊藤京子


ふりむけば白き橋見ゆゆつくりとバギー押しつつ渡りゆく家族  久川康子


生垣の茶の花密かに咲き継げりやがてくる季を静かに待ちて  中島芳子


まっすぐの道を探して迷う娘(こ)がきれいに磨きあげたるヤカン  ひじり純子


桜もみじ雨にあやしく濡れており今朝方の夢わすれてしまいぬ  相馬好子


寝覚めの悪い夢を終日持ち歩く中身のわからぬ荷物のように  藤江ヴィンター公子


じいちゃんは小脇に雨傘抱え込み小学校まで農道をいく  ジャッシーいく子


夕焼けの色尽くるまで唇の渇きに気づかず岡に立ちたり  赤井稚加



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-22 20:10 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 20日

「塔」二月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」二月号 山下洋選歌欄 十首選


猫が水を飲む音 深い就寝の底には青い花野があって  田村穂隆


書類には「妻未届け」と書くならん入籍のなき婚姻として  山下幸一


苅田焼く煙にかすむ遠き村寺の鐘鳴る一つまた一つ  石川 啓


柿穫るは夕日を篭に詰めるごと農夫の軽トラ轍にしづむ  加藤 桂


森の木を丸ごとかじるようにしてブロッコリーの緑を食す  谷 活恵


瞑想に入りしヨーガの教室にふいに今夜のメニューが浮かぶ  村上春枝


見て見てと言ふ人あらずのぼりくる金の満月ひとり占めする  今村美智子


わが脳を現実逃避させるべく時代小説二冊買ひたり  西山千鶴子


頷いてくれるあなたを視界から外さぬように立ち位置決める  竹田伊波礼


見はるかすひまはり畑のその向かう山の上には電波塔あり  寺田慧子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-20 21:52 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 20日

「塔」二月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」二月号 前田康子選歌欄 十首選


砂糖を入れかき混ぜた後のひとくちを味わってからミルクを入れる  双板 葉


そこだけに秋の日射しがあるように欅の梢赤く色づく  村﨑 京


いくらでも眠ってしまう二度寝してまたもや死へと近づくような  真間梅子


夕焼けて京セラビルは輝きぬ次の橋まで土手を歩めば  黒木浩子


カキ入りの広島焼のふはふはを父子の小皿に切りて分けたり  葵 しづか


小春日のやわき光を含みいる肌着取り込む壊さぬように  村尾淑蘭


サンダルがなかなか脱げず足を振る女(ひと)が向かひのベランダに居る  松井洋子


わたくしがまう載らなくても気づかれぬ安堵と怖さ 「塔」にも秋だ  赤嶺こころ


白抜きの母の浴衣の萩の花夕べの雨にこぼれていたり  菊井直子


飴色の夕陽に濡れている廊下 そんな風に泣くなんて知らなかった  宗形 瞳



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-20 16:34 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 19日

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選


ふくらはぎに口つけ毒を吸ふとあり我にはとれぬ体位と思ふ  丸山順司


三面鏡に映る数多の吾(あ)の中の一人を見んとして見失ふ  髙野 岬


アパルトマンの壁が月ほどしろく照りいつもの角とはおもわずに越ゆ  中田明子


合歓の花はめざめたままに眠りをり やさしき嘘をいもうとにつく  福田恭子


晴れよりもきっとやさしい色をして洗濯物は曇天に立つ  椛沢知世


虎杖の花は衰へ沢沿ひに野菊が楚々と咲き始めたり  金光稔男


自転車で朝の部活に急ぐ子を蕪の間引きを止めて見ており  竹内多美子


てのひらをひらきてここに滑らせたそんな瑠璃色ちいさき蜥蜴  千村久仁子


硬き椅子に座ればおのずと背筋立つそんなはじまりだったきみとは  山川仁帆


オリーブの葉はひるがへり裏がへり丘のうへからゆふぐれは来る  山下好美




(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-19 15:51 | 十首選 | Comments(0)
2019年 02月 18日

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選

「塔」二月号若葉集 永田淳選歌欄 十首選


陣痛はあれど刻々と死を待つ崖の上からゆらゆらと下を見る  坂村茉里子


わたしたち魚だったし鳥だった記憶の紐を水沫(みなわ)で濡らす  梅津かなで


落とさねば冬は越せぬとふりいそぐ吾の内なる木の葉は何ぞ  俵山友里


黒々と髪結いあげて八重さんはアッパッパ着てお燗つけいし  海野久美


ノルウェイを旅せむと告ぐれどいらへなし起きてつくらな濃き味噌汁を  足立信之


空色の付箋つけゆく歌集にはさびしきウサギが干し草をかむ  田島千代


向い風に漂うとんぼ大丈夫これは時間の流れではない  拝田啓佑


ひざを抱くこどものようにあてのない夜に出逢ってしまう二人だ  長谷川 麟


はじまりは思ひ出せない後の月みづがね色に照るをみてゐる  山縣みさを


宛もなく手紙を出してみたくなる文具屋で花の便せん見つけ  松岡明香



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-02-18 19:43 | 十首選 | Comments(0)