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暗黒星雲

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2019年 06月 30日

「塔」六月号 栗木京子選歌欄 十首選

「塔」六月号 栗木京子選歌欄 十首選


ラヂオ体操第二はいつもかなしくて握るこぶしが空回りする  田中律子


春の雨が風にあおられ窓を打つ小さなたくらみ育てる真昼  乙部真実


高層のビルにルビ打つごとく降る春のぬか雨降りやまざりし  川田一路


「沢の鶴」の敷地を囲み嵩高く清酒の空き瓶置かれてをりぬ  佐近田榮懿子


制服が届きましたとメールありデパートに就職決めし教へ子  清水良郎


いらだちをかくせずいたる席上で声をあらげてさらにかなしき  徳重龍弥


離れ住む二人のセーター編みにつつ睦月如月ゆたけく過ぎぬ  中林祥江


桃の花つぼみほろほろこぼれたり子を待つ午後の青き花瓶に  中山惠子


窓ぎはの椅子には誰もゐなくなり柱の向かうに組む足残る  穂積みづほ


食料を買うだけのわれにスキップし従いてくる子のやわらかい掌(て)  矢澤麻子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-30 17:50 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 29日

「塔」六月号 小林幸子選歌欄 十首選

「塔」六月号 小林幸子選歌欄 十首選


二週間下がらぬ熱の傍にいて夫のかかとの皹に触れたり  澤端節子


夢にみる息子は常に不機嫌なり黄色い象のながぐつ履いて  永田聖子


「三月のひかりは違ふな」君の声 朝の大根おろしてをれば  北神照美


返信は無用のこととして起てば鉄瓶は白き湯気立ててゐし  髙野 岬


男雛女雛箱より出さずうらうらと過ごしたること娘らには告げず  加藤和子


詠草を封筒に入れ糊付けをする時うかぶみづほちやんの笑顔  工藤博子


塀に沿い直角に曲がりキジトラが猫溜りある空き地へ向かう  三浦こうこ


ストーブの上の薬缶が鳴り出せば居間華やぐとふ独りの伯父は  山下太吉


つぎはぎの着物の裾の白い足袋きゅっと音たて伯母は曲がりし  中本久美子


束縛のなきこともまた不安なり電飾解かれし駅の一樹は  嶋寺洋子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-29 20:26 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 28日

「塔」六月号 三井修選歌欄 十首選

「塔」六月号 三井修選歌欄 十首選


杉玉が茶に変わりゆく酒造所に「秩父錦」辛口を試飲す  村上春枝


園からの帰りにたつぷり道草を楽しむ子らに春の夕焼  森川厚子


夢に遊ぶことはあらざり 黒松の根っこにつまづき膝を擦りむく  石橋泰奈


娘から孫の写真が届きけり向こうの家の顔した孫の  小島順一


食べ頃の見極め鳥よりうまくなりし妻は朝餉のミニトマト捥ぐ  新城研雄


金曜の仕事帰りにコーヒーを飲みに行くため生きている日々  田宮智美


沢山の声は混ざりて意味のない風へと変わる独り飲むカフェ  徳田浩実


赤い実を食べた小鳥は赤くなる 越前蟹はやっぱり赤い  中山大三


淋しさを侮るなかれひたひたとひたひたと満ち来る潮のごとき  藤江ヴィンター公子


波止場まで夫の帰港に子を連れて会いにゆきしと母も話しぬ  宮内ちさと



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-28 17:07 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 27日

「塔」六月号 山下洋選歌欄 十首選

「塔」六月号 山下洋選歌欄 十首選


真っ白なタートルネック不真面目な亀にもきっとあるよゴールが  田村穂隆


肉まんを食べる作法はあるのかと自問しながら立ち食いをする  谷 活恵


コカ・コーラ色の深夜がやってきて薄いふとんに身を横たえる  大橋春人


手加減のないあかるさに満ち満ちた改札 しかし怯まずにゆけ  小松 岬


はしけやしははのつくりしおひなさまにそなふる小豆ことことと煮る  新井啓子


塩引き鮭数多吊らるるとびらの絵に変形性股関節症の会報届く  倉谷節子


0時まで冬陽差し込む部屋にして黒きピアノは伴侶のごとし  相馬好子


悲しいか悲しいだろうと責められて悲しいふりをしてみせている  竹田伊波礼


うぐひすの二月尽日鳴きそめて木漏れ日つよし篁まぶし  内藤幸雄


川二つ渡りトンネル一つ抜け降り立つ荒尾とふ君の住む街  向井ゆき子


(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-27 21:23 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 24日

「塔」六月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」六月号 江戸雪選歌欄 十首選



衛星軌道めがけて投げる春の夜のポップコーンよ永遠になれ  拝田啓佑


もういないあなたとおもう春のみち風が匂えば匂うままゆく  中田明子


雪国を出できてようやく頷けり一輪ごとの春ということ  廣瀬美穂


日本海に初めて出会った月の道 月をけなした歌会の帰り  株本佳代子


ストラヴィンスキーのピアノへはつかぽとりと零れぬ〈春色のたましひ〉とふその香水は  河村壽仁


臍の緒でつながっていた それだけのことに期待も失望もせず  はなきりんかげろう


己が名も子の名も忘れ母逝きぬ神に重荷を解かれたるごと  三木紀幸


一時二時三時と更けて明けてゆく地球の自転が作りだす夜は  ひじり純子


「あなたいつ海老茶ちよ子をやめたのよ」勝手に塔を読むおばあちゃん  帷子つらね


代わりなら幾らでもいて赤々と脚入れかえてゆくフラミンゴ  中井スピカ




(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-24 21:26 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 21日

「塔」六月号 永田淳選歌欄 十首選

「塔」六月号 永田淳選歌欄 十首選


傷口をえぐるようなり歌詠めばされどあなたを詠むほかになく  黒木浩子


花を手に「この子は」と言ふ人とゐて園芸店に半日過ごす  寺田慧子


それぞれに行く先を持つ確かさの足早に人はわれを追ひ越し  岡部かずみ


人の死にあうため幾度渡ったろう瀬戸内の小島の落日滲む  上森静子


次々に芽ぐむ春菜の苦味食む冬よりわが身目覚めさすとて  西郷英治


漁終えし船が入江に泊まりおり昼の漁港に人影はなし  竹内多美子


かたぶける壺の口よりひとすぢのミルク垂るるを見守りゐたり  丸山順司


家族三人何かが欠けてはいるけれどとにかく三人ご飯を食べる  山梨寿子


約束を破つたぼくの誰よりもむなしき空をゆけよかりがね  千葉優作


ハッカ糖のブリキの看板雪かぶりここは塩沢母のふる里  大熊佳世子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-21 21:10 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 20日

「塔」六月号 小林信也選歌欄 十首選

「塔」六月号 小林信也選歌欄 十首選


窓ごとに灯りのついたアパートのカレーのにおいお風呂のにおい  佐々木美由喜


ひとびとは日々の気持ちを如何(いか)歌ふザタイムズに短歌欄なし  大久保茂男


ネオン濃き袋小路の呑み屋街赤き雪降る青き雪降る  石川 啓


トラックが辻を何度も切返し魚のごとく逃れ行きたり  小川節三


厨の隅に貝の潮吹く音のして夕餉は夫と雛膳囲む  白鳥美津子


割り切れぬ思いを集めた指先で缶コーヒーのボタンを押しぬ  杉原諒美


入学のあさは真白き丸衿の母の仕立てしワンピース着る  竹内真実子


笠原先生の語るイエスが好きだつた大工の父を好きなイエスが  長尾 宏


定時後の仄暗い改札前で叫ぶかわりに深く吸いこむ  森永理恵


不揃ひを揃へたかりと泣く汝れに深呼吸してごらんとまづ言ふ  宗形 瞳



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-20 22:03 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 18日

「塔」六月号 なみの亜子選歌欄 十首選

「塔」六月号 なみの亜子選歌欄 十首選


僕たちは世界を盗み合うように互いの眼鏡をかけて笑った  近江 瞬


節分の天満宮に福引の当り太鼓がまた響きおり  相本絢子


とめどなく冬の雨ふるぬるき朝母の葬儀に東へと発つ  阿蘇礼子


アカシアの咲きにし頃か機嫌良き母がパンケーキ焼いてくれしは  石丸よしえ


思い出の存在としてあることを選んだわけではないのだけれど  かがみゆみ


ゆるやかな記憶喪失たそがれにあなたの影が浮かぶまでの間  中森 舞


トレモロのような春風吹くときに子の下睫毛まだ濡れていた  吉田 典


昔話も自慢話も無き人とまろき酒飲むお斎の席に  森尾みづな


お互ひの病気自慢がはじまりぬ告別式に声をひそませ  安永 明


どこへ行くこともなくって春めいた二月を犬と散歩している  岩尾美加子



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-18 21:57 | 十首選 | Comments(0)
2019年 06月 17日

「塔」六月号 山下泉選歌欄 十首選

「塔」六月号 山下泉選歌欄 十首選


癒えかけるたびに手首を切りつけるように今年も震災を詠む  佐藤涼子


ご近所のとうふ屋さんといふ門名(かどな) 豆腐を売りしことなどなきと  今井早苗


亡き母と歩むがごとし春の野に遺品の眼鏡を付けて来たれば  大出孝子


「俺は君にさびしさだけを遺したか」言わせてはならぬ写真の君に  潮見克子


私には何かが足りない仕方なく湿ったからだを春陽にあてる  中野敦子


道を訊くやうに近づききたる人けふ何曜日ですかと問へり  西山千鶴子


輪になりてナースの顔は花のように丸太となりし私を覗く  村井玲子


半分に切ってあなたと食べてみたい膨らみかけた橙(だいだい)の月  森 雪子


母国より父を呼びしと聞いており隣家の二階にためらえる影  岡崎五郎


珈琲を一杯飲まう手のなかで五頁のちに星が滅びる  小田桐 夕



(新井蜜)



by trentonrowley | 2019-06-17 22:56 | 十首選 | Comments(0)