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暗黒星雲

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2022年 03月 22日

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 私の好きな歌十首

「塔」三月号 栗木京子選歌欄 私の好きな歌十首


予定調和に進む議論にわきまへぬ女となりて発言をする  黒瀬圭子


なぜ学校に行きたくないか分からない子が窓を見て「鳥」とつぶやく  川上まなみ


母の顔にすつと力の入りゆく栗羊羹の栗を切るとき  清水良郎


最後には死ねばいいだけそう思い軽くなったりまた沈んだり  高橋武司


席を立つ理由は別にありしかど銀杏のひかりを浴び来るといふ  立川目陽子


一人用の食卓すべて庭に向くその背越しに鶏頭の花  東郷悦子


言葉から離れていたいひと日なり白きさざんか陽射しをかえす  永田聖子


いつかまた夕陽をみたいこの海に乗り捨てられて朽ちてゆく船  西村玲美


珈琲の香りの向こうにガーベラのそのまた向こうに空が漂う  古林保子


郊外のりんご畑の実が消えて色のない空を枝が突き刺す  三浦こうこ



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2022-03-22 11:10 | 十首選
2022年 03月 20日

「塔」三月号 永田淳選歌欄 私の好きな歌十首

「塔」三月号 永田淳選歌欄 私の好きな歌十首


どこからか靴が集めてゆふぐれのバスターミナルに落ち葉の欠片  一宮奈生


さざなみのような違和あり美しい湾の名前と戦の始まり  福西直美


サーカスの天幕たたまれ去りゆくをみてゐるだけの夕暮れありき  大地たかこ


気をつけてあなたによく似た馬がいてふっと鏡に映りこむから  乙部真実


いもうとの暮らしし街は川

向かうこころ寂しきときに訪ふ土手  久川康子


七人で暮らし始めた家だった今は父母おとうとが住む  田宮智美


帰宅するバスを掴まえられずいる夢の歌会果てしその後  沼 寛子


休耕田の薄枯れたる前で笑むまだ色褪せぬ選挙の顔が  向山文昭


川のごと空をながるる鳥たちの夕暮れは樹の上があかるい  𠮷澤ゆう子


柊のほのかに匂う庭に出て月に地球の影を見ており  林田幸子



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2022-03-20 19:25 | 十首選
2022年 02月 26日

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 好きな歌十首

「塔」二月号 花山多佳子選歌欄 好きな歌十首


地理院の地図にはあらぬ柘榴町、飴細工の鳥が屋台にならぶ  澤端節子


辞めどきは今じゃないのかデフォルトのA定食に豚汁を足す  佐藤涼子


ずり落ちた鞄を肩にかけ直す 出生地から徒歩四十年  上澄 眠


月を待つわずかな時に現われる藍色の空に梯子がほしい  加藤 紀


こんもりと大根の葉がそよぎいて呼ばるるごとく間引きをなせり  新谷洋子


文庫本六冊抱え友人に手渡すまでの重み楽しむ  ダンバー悦子


この春に里子に出した子のやうにあげしカトレアそつと見に行く  中林祥江


あと幾年この家に住むのと何気なく言はれし言葉があとに残りぬ  林 雍子


このものも地球の一部であるけれど漁港の内に寄せ来る軽石  古堅喜代子


谷ひとつ隔てし校舎に子ら唄ふ「もみじ」聞きたり畑に鍬立て  山下太吉



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2022-02-26 22:21 | 十首選
2022年 02月 23日

「塔」二月号 小林幸子選歌欄 好きな歌十首

「塔」二月号 小林幸子選歌欄 好きな歌十首


治療せぬ選択もあると夕方のあかるい時間のこゑで告げ来つ  小林真代


すわりこむ妻のもとよりばたばたと駆けくるものををのこといへり  西之原一貴


耕運機動くところに餌がある鷺はとつくに学びたるらし  入部英明


みつみつと蕊をたたせて山茶花の口唇(くち)ひらきたり自粛ゆるびて  大河原陽子


ガラス器をうかべて秋の水冷ゆる不意に毀したくなるなにかを  澄田広枝


あわてるな無理するなとこの日頃われへの言葉命令形にて  相馬好子


テーブルのおもてのひかりへ肱をつく迷うてゐるを抜けえぬままに  千村久仁子


椅子を寄せ冷蔵庫を開け手を伸ばす敢太に出来ることひとつ増ゆ  福政ますみ


さざ波のごとき寝息を立てはじむ妻はわたしを岸に残して  加茂直樹


この地にて元気にくらしてゆけるようあびこ観音に娘と詣ず  西本照代



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2022-02-23 22:47 | 十首選
2022年 02月 21日

「塔」二月号 なみの亜子選歌欄 私の好きな歌十首選

「塔」二月号 なみの亜子選歌欄 私の好きな歌十首選


悲しみを遠ざけるとき夕暮れていく空がある私の中に  川上まなみ


綾瀬スマートインターは今日も渋滞 われはラジオで聴くのみなれど  相原かろ


オンラインミーティング終はりと告げたるにわれの切るまで手を振る子どもら  大木恵理子


音のなき真昼の野辺に蝶が飛ぶここは誰かの夢の入り口  乙部真実


難しい漢字を読むとき「ぬらりひょん」と心で唱え次の歌読む  北山順子


紫のダリアの鉢の見えをりて今日は雨戸の開かるる家  首藤よしえ


一杯の自分のための茶を淹れる青い椿の花咲く急須に  髙畑かづ子


前髪のわずかなカーヴがこの朝の大事のようなり女子高生は  福西直美


母の里の苗字をもてる神社にて無理をしてでも登る石段  穂積みづほ


霜月に入りて今年も柿吊るす蜂屋五十個風わたる軒  千葉なおみ



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2022-02-21 22:38 | 十首選