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暗黒星雲

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2021年 09月 16日

「塔」九月号 前田康子選歌欄 十首選

「塔」九月号 前田康子選歌欄 十首選


大学の内ゲバとふに死にたりし子を持つ親のをりにき故郷に  首藤よしえ


舟を漕ぐからだのやわらかい動き好きな人みな六月生まれ  川上まなみ


街灯と半月の白を見くらべるまだ暗くない三月の帰途  吉岡昌俊


われもまたゴドーを待てり桐の花色の褪せたる薄暮に立ちて  加藤和子


君とふたり一緒に受けし接種なり六月七日はワクチン記念日  加藤武朗


川面から生まれる風が心地よく衣替えした少女に出会う  加藤 紀


わが背に添ひきたるもの寝返りのをさな子の身のやはきぬくもり  久次米俊子


父よりも母よりも先に刻まれし「明節童女」風が友だち  澤井潤子


扇風機の強中弱を踏み分けるネイルアートの足の爪先  清水良郎


心地良き低めの声で「おかえり」と言われたようで森に佇む  ほうり真子



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2021-09-16 16:40 | 十首選
2021年 09月 15日

「塔」九月号 月集 十首選

「塔」九月号 月集 十首選


海は今かすかなる灯のうごく闇 湯につかりつつ脚伸ばしたり  吉川宏志


どこかで何かの音がしてゐるこの家のひとりゐはいつか死に近きかも  永田和宏


どくだみの根を抜いてゆく快感は根を抜かれゆく快感に似て  花山多佳子


手づくりの木のテーブルの微かなる揺れも愉しき五月の森に  小林幸子


アラビアの砂漠を旅する隊商に憧れやまぬ少年なりき  三井 修


人間の僕(しもべ)のようにしずしずと便器の蓋の白きはひらく  前田康子


子供のやうに浮き立ちてをり病院に電車で行くといふことだけで  小林信也


酒所望すれば甘口持って来る息子よわれは辛口である  藤井マサミ


歌会また中止となりてすべもなく椅子にもたれて過ごす日多し  黒住嘉輝


鉛直にぶらんこ垂るる夕暮れをわが子に子なきわれの安けさ  朝井さとる



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2021-09-15 21:09 | 十首選
2021年 06月 18日

田植え後の水田

田植え後の水田_d0021306_19513458.jpeg


# by TrentonRowley | 2021-06-18 19:50
2021年 02月 18日

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選

「塔」二月号 江戸雪選歌欄 十首選


見上げれば雲の鱗の広がりぬビルの間もびっしり秋空  佐原亜子


それぞれの一日を終へて帰り来し人の数だけマスクおかれつ  西之原一貴


まざまざと断崖見えて立ち尽くす黄落ののちの全きしずけさ  大引幾子


霧雨の日にひそやかに買ひたるは懐剣ならず懐中しるこ  篠野 京


駅に着く手前をゆるく流れ去る「なの花薬局」菜の花のいろ  相原かろ


怪訝なる顔にて妻がわれを見つ飯の旨きを褒めたるところ  益田克行


夏のあいだ毎日水遣り続けたる秋明菊の花開きたり  石飛誠一


川上屋の「柿の実きんとん」包みたる柿の葉乾びて葉脈太し  岩﨑雅子


「あちらの世はこちらと同じようだった」昼寝覚めたる母は一言  江原幹子


木蓮の苞かすかに開くようにパルティータ一番鳴り出(いだ)したり  杜野 泉



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2021-02-18 22:19 | 十首選
2021年 01月 18日

「塔」一月号 若葉集(永田和宏選) 十首選

「塔」一月号 若葉集(永田和宏選) 十首選


文面も忘れ去りたる恋文の便箋の柄を思い出したり  竹垣なほ志


おのずから答えはでているこの背中おされたいだけ相談するは  布施木鮎子


コロナ禍の一夏を動くことなくて芝生にカフェの椅子は並べり  山尾 閑


恋人の下着みたいな雲だつた なんだかとても嬉しくなつた  近藤あなた


道端にひとつ転がる螺子のありときおり街をひからせている  青海ふゆ


三越の赤きロゴ付すマスクせるライオンけふの目に力なし  飯島由利子


独り身と思ひゐたりし友の家の電話に出でし女性(ひと)に戸惑ふ  野村久雄


(革命はおきない)ぼくはおきれない少し不思議な夢の途中で  山田泰雅


階段を青いスカートひらひらとゆっくりゆっくり昇っていきます  山根秀一


威勢よく賽銭箱を飛び越えた五円みたいになれますように  朝野陽々



(新井蜜)



# by trentonrowley | 2021-01-18 20:11 | 十首選